2011/07/18

引き続きなかなかハードな7月後半です。

2011.7.1は京都でカンジダ症の講演をしました。
深在性カンジダ症患者の予後を改善させたい、そのために「しっているをしているへ」を目指し、してほしい項目をプロジェクトメンバーでバンドルにまとめました。これを一人でも多くの感染症に関わる医療者が院内で活用してみようという気持ちになってもらうように考えを重ねてプレゼンをつくりました。
その意味ではうまく話せたかとほっとしながら講演を終えたのはよかったのですが、バンドルの内容の詳細や具体的な活用の仕方に踏み込んでいなかったことでプロジェクトリーダーの先生に不満を持たせてしまいました。
今回はいわば全国ツアーの皮切りでしたので、次回以降は(早速7.29に大阪で第2回目をやります)是非よりよい講演にしたいと思っています。

7.14-15は国立大学病院感染対策協議会の近畿・東海地区ブロック研修で福井に行ってきました。
これは地区の十数大学病院の感染対策担当者の集う、仲間の集まり的な研修会です。数年前から参加しています。この中でICNの活動実践報告の場があるのですが、ガイドライン的な内容を如何に院内で苦労・工夫しながら推進している様がよくわかって、参考にもなるし力づけられるので大変おもしろく聞いていました。これを是非ともICN以外の職種からも聞きたい、できれば若手でICTに足を突っ込むようになって間もない若手に話をしてもらうことでICTにより深くのめり込むきっかけにならないか、といった贅沢な期待をもってホストの大学の先生に企画を進言していたところ、二つ返事で賛同してくれて企画として実現し、私は司会にあててもらいました。で、終わっての感想としては、これはもっと早くからやればよかったな、これまで講演会、講習会的だったのが惜しかったなと。医師のみで集まる時間もあったのですが、皆同じように感じていたようで、手前味噌ながらなかなかいい企画でした。

7.16は 第3回細菌タイピング研究会(東京)に行ってきました。
昨年はじめて参加し少し話もしましたが、「タイピングの価値・意義はつまるところどこにあるのか?」と何人かに議論をふっかけてきたような感じでした。今回は質問しつつ会場の皆に問いかけることができ、交流会でも意見を交わすことができて、「どうタイピングを使えばその価値・意義があらわれそうなのか?」という昨年より一歩進んだところまで考えが到達してきたような気がしました。

7.17-18は第9回感染症の診断と治療セミナー(メルパルク京都)。お陰様でなかなかの盛況。イントロのレクチャーで感染症の診療の基本はやはり診断に尽きるということを強調して話しました。いくつか反省点もありましたが、1日目、2日目ともに設けたケーススタディは好印象で、来年度以降も充実させていきたいです。また、ひっそり8.20の第13回レジ感の告知をしておきました。

この間、日経メディカル社から耐性菌についての取材を受けました。2月に環境感染学会のシンポジウムで耐性菌感染症の現状、対処の難しさを発表したのを聞いて興味をもってくださったようで、わざわざ取材に来てくれましたので学会で話した内容と問題の本質がどこにあるか小一時間みっちり話をしました。記事としてはほんのわずかではありますが、記者の方に言いたかったことが理解してもらえたのがなんとなくわかる文章になっていて素直に嬉しかったです。

7月、これから先の予定はというと、、、
7.21(木)は第2回院内感染対策講習会。これから急ぎスライド準備するところです。
7.23(土)岐阜救急感染症セミナーにて6.28とほぼ同じ内容でカンジダ症について、7.26(火)は神奈川県東部若手医師感染症勉強会でサンフォードガイドの活用について、7.29は上述のカンジダ症の講演(ICD Expert Forum in OSAKA)、7.30は第8回Blood Master(京都)で造血器悪性腫瘍の診療における深在性真菌症、とくにアスペルギルス・接合菌症の診療と対策について、話してきます。
7.27は救急医療領域での感染症診療の向上を目指した企画の初回作戦会議、7.28は化学療法学会のセミナー企画会議で東京に行きます。

ということでなかなかハード。暑い日が続くので移動の車内で首もと冷やしつつしっかり身体を休めるよう気をつけていきたいと思います。

2011.6月にやったこと

今月はちょっと多めでした。

もう終わりましたが、6月1日は結核病学会の前日、私の属している委員会の会議がありました。結核病学会は会員数がジリ貧だったのですが、これは認定医制度を導入=認定のための単位になるセミナーを開始してとくに若手の医師の会員が増えたようです。この制度や教育的なセミナーに関する委員会で、学会の将来、と言うと大げさですが、今後の方向性のひとつの軸となるものだと思いますので、一肌脱ぐつもりで自分にできることを追求してみたいとあれこれ考えています。

6月6日は大学で今年度第1回の院内感染対策講習会。教授に登壇してもらいました。
翌7日は感染対策担当者会議。私と他メンバーとで当院の感染制御の体制、力を入れている点、急ぎ改善していかなければならない点などを各部署・診療科の担当者に伝達しました。

6月14日は山口大学、6月17日は山口赤十字病院へ、いずれも「感染症の適正診療と院内感染対策の結びつき」というタイトルで話してきます。同じ週に山口に2回行くことになったのは全くの偶然でした。どちらの病院でも真剣に取り組んでいる先生方と出会えて嬉しかったです。

6月23日から25日までは札幌へ。第59回日本化学療法学会総会です。23日は第18回抗菌薬適正使用生涯教育セミナー。テーマは薬剤の相互作用で、私は「抗菌薬と抗菌薬以外」の相互作用の話をし、その後ケーススタディで症例呈示(研修医の先生に依頼しています)・コメンテータの役があたっていました。25日はシンポジウム「抗 MRSA 薬における TDM 標準化のその後: コンセンサスが得られていること、解決しなければならないこと」にて「透析患者における抗MRSA薬の使用法とTDM」について話しました。

6月28日は西宮へ。第8回阪神ICT活動実践セミナーで、カンジダ症の話をしてようやく6月が終わりました。

いやはや感想も何も挙げるだけでいっぱいいっぱいですな。


2011/06/27

2011.6.28 阪神ICT活動実践セミナー(西宮)でカンジダ症の話をしてきます.

今週の金曜日と同じようなテーマで話をしに行きます。

カンジダ症をテーマに仕事をし始めたときはMRSAや緑膿菌と違って院内感染・感染制御とは関係が薄いかと思っていましたが、今はカンジダ症は院内感染の典型だと思うようになりました。というと「カンジダって伝染するの?」と突っ込まれそうですが、そのような突っ込みがくること自体が院内感染というものに対する偏った見方の反映だと思いますし、そのことが感染制御への切迫感の鈍さにリンクしていると思います。というようなところがまさに院内感染の典型の中の典型だとさえ言えるかもしれません。

とまでいうと禅問答みたいでしょうかね。



2011/06/25

2011.7.1京都でカンジダ症の講演をします!

今は日本化学療法学会で札幌に来ています。
今回のお役は適正使用生涯教育セミナーとTDMのシンポジウムです。

それはさておき、7月1日(金)に京都で開かれる "ICD Expert Forum" でカンジダ血症に関する講演をします。京都で話すのは久しぶりですし、今回お話しするACTIONs BUNDLEというのは昨年から企画メンバーで議論を重ねて進めてきたもので、つまるところ「ICDの力でカンジダ血症の予後をよくしよう」というプロジェクトで、私も大いに盛り上がっています。

京都を皮切りに各地でお話しする機会をいただける予定なので、各地で奮闘されている、あるいはこれから踏み出して行きたいという気持ちをもっている方々の弾みとなるような講演ができればと思っています。


2011/05/30

2011.5月の終わり。

5.21は関東医真菌懇話会(東京)にて、播種性トリコスポロン症の臨床疫学の話。
トリコ研のこれまでの成果について紹介しました。私のカンジダ症での経験から発案し、実現に至った研究会です。内容もさることながら、こんな形の研究もある、とくに数の少ないものでは不可欠だということを伝えることができていたら、と思います。

本日5.29には京都薬科大学へ「臨床で問題となっている耐性菌感染症の診療と対策」を話してきました。
意外にもこんな抗菌薬が効くとか、とりあえずこうすべきとか、最近こんな論文があるとか、そういう話はまったくせず、ひたすら現場で感じている問題意識について、それを共有できるようにと考えながら多角的に説明しました。
感染症(に限らず)治療の基本はとにかく診断である、菌と抗菌薬の組み合わせだけ考えていても治療は決して立ち行かないし、そのような考え方が今の耐性菌の状況をもたらしてしまった、という、またまた少し重めの話でした。
終わった後、世話役の先生が「たしかにこれまで感染症の治療といえば菌と薬の組み合わせしか考えていませんでした」とおっしゃっていました。この認識を改めて行かないと今後新薬がなかなか現れない中で耐性菌に立ち向かうのは難しく、その意味で発想の転換が必要なのだろうと思います。とりあえず、薬で、、、で何とかなった(あるいはそのように見えた)時代は過ぎたのだと思います。

有名な先生を聞いてても菌と抗菌薬と論文を見ているだけなのではないかと思うことがありますな。うんちくを語ることができてもそれで期待感をもたせることはできても残念ながら現場の問題の解決にはつながらない。抗菌薬は使えば使うほど効果の得られる患者が増えていく薬ではありませんから。
同じことばかり角度を変えて話している私ですが、目にとまりやすい耳当たりのいいことよりも、伝達したいことを繰り返ししっかりと伝達し続けたいと思っています。とにかくそのような機会がもらえただけでなく聴いてくれた方からの声が聞こえてくると、うれしくなってまた頑張る気も出てくるものです。

2011/05/04

2011.5月の予定。

学会シーズン一段落で5月はあまり予定がないはず、、、と思いながらスケジュール表を確認してみました。

5.14は第12回レジ感(メルパルク京都)。今回はコメンテータのみです。今回は以下の2例で、私もまだ診断名は知りません。
症例23:発熱と全身の痛みを訴えインフルエンザ治療を受けた80歳代女性
症例24: GISTでグリベック+プレドニン内服治療中に意識障害で救急搬送された60代女性
タイトルだけでも鑑別診断がいくつも挙がります。挙げられなかった、どんな鑑別診断が残っているのか、診療の経過でどのように期待を裏切ってくれるのか、毎回ながらたのしみです。
前回、私ともう一人のナビゲータが自ら症例プレゼンをやることになったため本来症例プレゼンターに進呈するはずの粗品の行き先がなくなってしまい、フロアの参加者から世話人が任意に選んだベストディスカッサントに進呈しました。しばらくこの方式でやってみて少しでも盛り上がればと思っています。

翌5.15は大学病院主催の研修医向け入局説明会です。数年前まで参加していましたが、まったくレスポンスがないので中断していました。アクセスは公開しているのでやる気のある人は連絡してくるだろうという甘い考えからです。今年も期待薄ですが、何もやらずに来ないよりやって来ない方があきらめもつくか、ということでまた数年頑張ってみようかと思います。

5.21第32回関東医真菌懇話会のシンポジウム「新興・再興真菌症の現状と対策」にて、播種性トリコスポロン症の臨床疫学を話します。研究会をつくって(私は外野ですが)検討を進めているところで、ようやく臨床像が見えてきたところです。だから対策もなにもわからないことだらけなのですが、そんな中でどこまで考察できるか、というテーマを自分に課してプレゼン準備をしようと思います。

5.23は人間健康学科にて「感染症の診断と治療」5.25は京都医療科学大学(園部)で「職業感染対策の理論と実践」講義をします。カリキュラムの講義は教科書的な内容をあますところなくわかりやすく説明する、というつもりで臨むと絶対無理ですね。どこを理解させればあとはテキストを読むだけで頭に入っていくか、あるいはどこから先は丸暗記するしかないのかがわかるか、ということを目標にして話すつもりです。テーマ全体を木とすると、講義によってこの木の幹と太い枝はこんなんです、と呈示できればと思っています。

5.29には京都薬科大学の卒後教育講座にて「臨床で問題となっている耐性菌感染症の診療と対策」を。2月の集中医療学会で話した内容を修正して構成するつもりです。
培養検査で陰性という結果を得たくて治療をしているわけではないですね。でも培養陰性という結果はその患者の真実がどうであれ担当医にとっては安心できる結果であるのでしょう。それはわかるのですが、誰のためなんのための医療かと考えれば話は変わってきます。医療に関連した感染症を起こしやすい(すなわち環境適合性が高く、抗菌薬抵抗性な菌、緑膿菌が典型)菌であるほど、採取しやすい検体において培養陰性とはなりがたく、それを陰性化したくてたまらずにいると、抗菌薬をとっかえひっかえして挙げ句の果てには局所投与したりして、そのようなことを続けているうちにまた耐性株に交替し、さらにややこしい菌に交替し、それがまた耐性菌感染を起こしやすくしている。このことを頭で理解できない人はいないはずなのに、起こさなければ培養陰性化するしないに関わらずやっててよかったと思い込んでやれやれ、それが真の感染症を起こしてしまうと(ここまで努力してきたんだから)もうやむなし手立てなし、で終わってしまうのが人間の性です。この悪循環をどう断ち切るか、発想を切り替える必要があるという話をしたいのですが、どう組み立てたらいいだろうかと正直まだ頭を悩ませています。

連休で1週少ないこと考えると意外になかなかハードな感じ。また寝不足の日々が増えそうです。とほほ。


2011/04/30

2011.4月を振り返って。

4月が終わるので振り返ってみました。

4.1はお約束の新採用研修医・医員へのオリエンテーションで感染対策の話をしました。わずか15分ですけど。昨年はこの担当になって間もなかったので前任者のつくったスライドをそのまま時間内にしゃべるだけで精一杯でしたが、今年は短時間なら短時間でその中で何を伝えたいかを一所懸命考えました。

病院は病気を治す場所なので感染症という病気が起こることをなんとしても最小限に抑える努力を怠るわけにはいきません。そして、病院内で診療に関係して発生しうる病気の中で他を圧倒して最多のものが感染症であるわけです。
そして医療者は一個人として自分の身の安全を守る意識を持つことも必要ですが、それはそれだけが目的ではありません。医療者の脱落は医療資源の減少を意味するからです。こういう言い方は医療者をモノ扱いしているように誤解されるかもしれませんが、そうでなければ職員が病院の費用でインフルエンザワクチンを打つことが正当化できません。その費用は直接患者のために使ってもよいはずのお金なのですから。
まあ、そこまで露骨な言い方はしませんでしたが、患者を守ることが第一の責務であることをまず強調し、自分の身を守ることが医療を守り患者を守ることだということを最も身近な血液曝露への対策と院内の接触による感染予防対策を2つの大きな項目として説明しました。自分なりにポイントを押さえた講義ができたかなと思います。

4.22 第85回日本感染症学会総会(東京)のシンポジウムで話をしてきました。
シンポジウムのテーマは「多施設感染症臨床研究の基盤作り」で私はトップでイントロダクションとして「大学病院・感染制御部としての院内感染症の多施設研究」とのタイトルで話をしました。自らの関わった成功例、失敗例を紹介し、その反省を踏まえて、我々がまずどのようなところから踏み出していくべきなのかについてプレゼンしてきました。

感染症は臨床研究が少ない分野だと思います。新薬の治験以外で、感染症の臨床研究、少なくとも多施設研究を行ったことのある医師は少ないんですね。それでも第一歩として出来るものはどんな研究なのかを考えて経験を積んでいくしかないと思います。
少々懸念していたのですが、シンポジウムは臨床研究はかくあるべし的な話に進んでしまいました。CRC、データセンター、研究の管理部門、EDT(?)…整備されるに越したことはないのは言うまでもありません。しかし、それらが整うのを待つ間、我々は何をすべきなのでしょう。基盤が整備できたときにいきなりうまくいくのでしょうか。現在の限られたリソースの中でできることを追求していく過程と平行してこれらが整備されていった暁に大きな研究も可能になるのだと思います。我々にないものを挙げるだけでなく、あるものをmaxまで活用する姿勢が必要だと思うのです。
菌株のサーベイランス的研究、診療録をレビューして集計する研究は直ぐにでもできるはずです。
「今後も症例を集積して…」は学会報告のお決まりの逃げ口上です。多施設で症例を集めればそれだけでずっと貴重な情報が得られるのに、と感じる学会発表はたくさんあります。Research Questionは臨床現場で考えているといっぱい出てきては忙しい業務の中で流れて行きます。それらをぶつけ合う機会をもっと作れば、それを解決するための1つの手段に多施設研究があるという着想にたどりつくはずです。学会や研究会はたくさんありますが、それらのセッション、シンポジウム、ワークショップがそのような機会としての役割を担うことは十分可能なのにこれまではそのようなナビゲートはほとんどしてこなかったのではないか、と最後のディスカッションで訴えました。少なくとも座長の先生を含めその場にいた何名かの方々には賛同を得られたように感じました。前日(4.21)に行われた、私も企画ワーキンググループの一員として関わった「症例から学ぶ感染症症例検討セミナー~臨床の疑問点から研究的考察へ~」は座長の一人の先生が委員長をしているもので、まさにこのような視点の企画です。11月に奈良で開催される次回セミナーは私が担当することが決まっていますので、今回のセミナーとこのシンポジウムで流れはじめた源流を少しでもしっかりしたものに近づけられるかを課題にしたいと今から模索しています。

4.24の翌々日曜は神戸で開催された薬剤師プログラムにて市中肺炎についてのレクチャを行いました。薬剤師は薬物治療のプロではあっても、その前提となる診断のプロではありません。しかし感染症の臨床において最もないがしろにされがちなのがまさにこの「診断」です。その意味でどのような内容を話すか、またまた一所懸命に考えました。薬剤師に期待される第一は「その薬剤の効果が(もちろん安全性も含め)十分に発揮するような使われ方がされているか」を追求することだと思います。一般的に安全性の高い抗菌薬においては投与量・回数さえ守れば効果が発揮できるか否かはやはり診断で決まります。ということは診断のプロではない薬剤師のもう一つの役目は、微妙な言い方になりますが、ともに医療を支える職業として医師に対して「その診断は正しいのか?」というプレッシャーを与えることではないかと思っています。たとえ診断のことがよくわからなくてもその薬剤が有効な使われ方をしているのかについて真剣になってほしいし、ということは必然的に診断の妥当性にも意識を傾けてほしいからです。それが医師が診断に対して真剣になることにつながる道のひとつだと思います。診断に対して必要で最小限の使用がなされていなければ効果が減弱していくのが抗菌薬の重要な特性のひとつですから、それに大いに関心を持って考え、それを行動に移してほしいと切に願っています。

願っているだけでなく、そのために私にできることは是非やりたいです。実はこの会の数日後、京都府内のある病院の薬剤師から京都でもこのプログラムと同じようなことができないか考えているという連絡をいただきました。自分に何ができるかわかりませんが、何かできるだろうかと考えること自体、私にとって実に嬉しいことです。

4.26は大阪歯科大病院の院内感染対策講習会に呼んでいただいて「感染症診療と院内感染対策の結びつき」というタイトルで話をしてきました。話し慣れた内容なのですが、このところ少しずつ構成を変えていっています。以前は「自分の話したい内容を話したいように話す」という感覚が前にでていたように思いますが、あるきっかけからそれを少し反省して、聞いてくれた人の記憶に残したいポイントは何か、そのためにはどのように話したらよいか、という観点に立って見直してみたからです。この見直し後のプレゼンのペース配分が十分身についていないのか、考えていたより若干時間がかかってしまいました。幸い同じ内容で話す機会が夏までに数回入っていますので、会心のデキといえるものにしたいです(あくまで現時点の、ですけど)。

年度が変わってますます気ぜわしくて萎えることもときにありますが、こうして振り返ってみるとまだまだやりたいこと、できることがあるぞと気持ちが新たになりました。
そのための活力を蓄えるための期間として連休があるんでしょうかね。

2011/03/30

今年度の終わり。

まもなく2010年度が終わります。毎年この時期は年度という言葉に少し緊張します。というのも今年度と言ったり書いたりするとき「今」年度(2010年度)なのか、「今年(2011年)」度なのか、どっちやねんと思ってしまうからです。こっちはよくても聞き手がどう捉えているかわからないですし。

それはともかく、年度が変わる前に書き損ねていたことを以下に。

2.25近畿中央胸部疾患センターの講習会で抗菌薬適正使用と予防策の結びつきについて話してきました。昨年も書いたとおり、御世話になった先生からの依頼で毎年行っているものです。数年前研修医の時ローテイトしてきていた現在某病院で耳鼻科医をしている医師が来年度からICTに入ることになったといって聴きに来てくれていて軽く感激しました。

3.1大学の臨床実習入門コースのトピック講義で「院内感染予防対策」の話。標準予防策と針刺し血液曝露事故の予防について話しました。90分でしたが、これくらいの時間話できるとやっと事の重大さを感じさせることができるかなと思いました。ここからやつぎばやに実習→詳説→…を繰り返せると効果的なのでしょうね。
同じ内容については、4.1には新採用研修医向けのオリエンテーションでも話しますが、わずか15分です。しかし、昨年までのスライドを手直ししたので時間の割りにしっかり印象づけたいと思っています。

3.3某社の社内講演会で「感染症診療の現状と展望〜製薬企業 感染症専門MR・感染症事業部へのメッセージ〜」というタイトルでしゃべってきました。このような依頼はこれまでも数回引き受けたことがあります。
足の引っ張り合いみたいな泥仕合はもうたくさん。タンパク結合率やら組織移行性やらがどうこういう前に臨床効果がどうなのか、本当にその薬が活きる診断とはどんなものなのか、といった情報を発信してほしい。すべてではないにせよ、多くの薬剤にはその薬剤が最適な診断というものがあるわけなので、その薬がただ売れることではなく本当に適した診断の下で使用されることが感染症の診療のレベルを上げることにつながるだろう。レベルが上がればその薬剤の最も適した診断に至る例も増えるだろうし、そうして診療のレベルを上げることが医療の一翼を担う企業としての使命だろう。といった話でした。

3.18は京滋薬剤耐性菌サーベイランス研究会にてちょっぴり登壇。せっかく労力を払って集積している情報なのでそのクオリティを保とうということを会そのものと終了後の世話人会で話しました。

で、今年度を振り返るとポジションが上がったこともあって、やっぱりずっと追いまくられていたような一年でした。

先週末近所を散歩していたら、外は冷たかったですが土曜の荒れ模様で霞んだ空気がどっか飛んで行って、つぼみが膨らんだ木々の中早咲きの桜が澄んだ空の下で嬉しそうに咲いていました。またこの季節が巡ってきたんだなとしみじみ。新年度はもう少し余裕を持ってのびのびと歩んで行きたいものです。



2011/03/13

2011.3.13 糖尿病と感染症について市民講座で話してきました。

京都医療センターの開催する第25回 DM京都 専門家による糖尿病実践講座 糖尿病と感染症 で講演してきました。タイトルは「糖尿病と感染症〜いまからできること、すべきこと〜」です。大学の同級生から頼まれたもので、気軽にOKしたはいいもののよく考えたら、学生や医療者向けの講演は何度も経験ありますが、市民講座は初めてでした。

どんな内容にしたらわかってもらいやすくて、しかも自分の伝えたいメッセージが伝わるだろうかとずいぶん考えました。こんな時は教科書的な内容をかみ砕いて構成したらいいのかな、と逃げの気持ちになったりもしました。その方が手間はかかっても準備は気楽かも、という気持ちです。でもそれは私としてはポリシーに反することなので、やっぱり思いとどまりました。確固たるポリシーというほどのものでもなんでもありませんが、自分が本当に伝えたいことを伝えたいという気持ちが講演仕事を引き受けるときの最大のモチベーションだからです。おかげでホストの先生から「オリジナリティーのある内容で気持ちが伝わった」と嬉しい言葉をいただきました。

わかりやすい内容と言葉で、でも伝えたかったというか講演後に聴衆の心に残したかったのは「自分の身体は自分で守る」という意思です。終了後聴いてくれた患者の一人から「食事療法、運動療法ももっと頑張ろうという気になった」と御礼を言ってもらいました。食事や運動の話など少しもしていないのにです。こんな瞬間があると苦労して作ったことが一気に報われる気がします。

最大の反省点は時間の超過。最近は比較的調子よかったのですが、今日はやっちまいました。スライド枚数は普段の2/3くらいに抑えたのですが、枚数を抑えた油断と平易な言葉でゆっくり話そうという気持ちとが相まってしまいました。ここも成長の過程、次への課題ですな。

週末仕事がこのところ立て続いていましたが、今週末の土日2連チャンでやっと少し空きます。中断していた歯医者に行かないと。そうこうしているうちに春めいてくるんでしょうね。


2011/03/12

2011.3.12 第41回日本嫌気性菌感染症研究会(西宮)に行ってきました。

今日は朝から兵庫医科大学まで第41回日本嫌気性菌感染症研究会に行ってきました。平成記念会館というきれいな建物でした。

お役目は一般演題の発表ひとつと、教育講演の司会です。

一般演題は腹部・泌尿生殖器の放線菌症についての検討でした。マンデルという感染症の有名な教科書があるのですが、その中で "the most misdiagnosed disease"とか "no disease which is so often missed by experienced clinicians" とか書かれてあって、初めて読んだときから引っかかっているのがこの放線菌症です。ここ数年を思い出して、放線菌症を疑った症例は何例もありますが、本当にそうだった例は非常に少ないです。1つ典型例が記憶にあるのですが、私の担当ではなかったこともありますが、鑑別に挙がっていながらうまくその疑いを活かせなかった例でした。頻度の低さ、抗菌薬がよく効いてしまう点、肉芽腫性病変のため炎症反応に乏しい点など診断しにくい特徴がそろっているのが、とくに腹部・泌尿生殖器系の放線菌症だと思うので、気を引き締めるためにもと思って前々から気になっていたこのテーマにしたのでした。

で、実際やってみるとやっぱりいい勉強になったなぁと。学会でしゃべる以上に勉強になるものないですな。

ここ数年の該当例を拾い上げて簡単にレビューしただけですが、新たな発見がいくつもありました。それだけでなく、上に書いた例も患者はよくなったとはいえもっとうまく直せたはずだと反省もしました。

こんな機会はもっともっとみんなにやってもらいたいなと思っているんですけどね。えらそうなこと書きつつ、今回演題出したのは縁のある先生に頼まれたからで、ちょっと強引に絞り出したところがあるのですが。

我ながらなんですけど、ある意味ではやらされたとも言えるようなことであってもそこから多くを得られるかがその人の技量ですわな。自分のやりたいことをやり続けていくことはもちろん大事ですが、そこからちょっと道草してみると、それは道草ではなくて新たなルートだったり、そのことがめぐり巡ってやりたいことにつながってきたりします。そんな経験をすると、やらされ仕事のもつ意味がまた変わってきます。とはいえ、こんなのがワーカホリックゆうんでしょうか。

プログラム最後は教育講演の司会でした。司会ってのは経験が乏しく不慣れなので、演者の先生の紹介やディスカッションの進め方、最後の締めなど、いまいちたどたどしくて不完全燃焼感を感じるのですが、今日はフロアからの発言がたくさん出たこともあり、今までになくうまくいったと思います。成長の過程ですな。

そして今日は、心身ともに無事仕事ができたこと、いつも以上に感謝の気持ちでいっぱいです。

明日もがんばります。



2011/02/20

第26回日本環境感染学会のシンポジウムで多剤耐性菌感染症の治療について話をしてきました。

2011.2.19は早朝からパシフィコ横浜まで出かけました。朝9:00からシンポジウムの打ち合わせだったからです。新幹線ではぐっすり。で、会場つくや受付・クロークは超長蛇の列でびっくりしました。しかし、この学会はいつもこんな感じですな。


今回は多剤耐性菌の基礎から臨床といったテーマのシンポジウムで私は「多剤耐性菌感染症の治療とその難しさ」というタイトルでの口演でした。会場は立ち見の方が壁を埋める熱気で、それなりに場慣れしているはずの私ですが、今回は発表を待つ間に若干緊張してきました。


感染症の治療といったときに抗菌薬の選択しか頭にないのならば多剤耐性菌感染症の治療は極めて簡単です。多剤耐性であるほど治療薬選択の幅はなくなっていくわけですから、一つ二つあるか無いかの薬剤を使うしか他ないというだけのことで頭の使いようはありません。あったらいいなという期待はわかるのですが、他の人がはこっそり知っているけど私は知らなかった、実はこの菌にはこの薬が効く、みたいなうまい話(それがあるかのような発表はときおり耳にしますが)、そんなものはどこにもありません。


つまり、抗菌薬以外に治療としてできることがあるのか、あるならそれをどう可及的に探して行うかという一点が治療成功に大きく大きく影響する、それが多剤耐性菌感染症の治療のポイントだと思います。そうするとそれは結局は素早く正確な診断をつけるということに他ならないということです。


これはこれで極めて正当な論理展開ですし、実際そうなんだからしょうがないじゃないか、という思いで話をしたのですが、座長の一人の先生からは「なんだかうまくかわされた気がしますが、、」と言われてしまいました。しかしこのような診断のアプローチはそもそも耐性菌でも感受性菌でも同じく必要なことであって、いつも感受性菌感染症を診るときに出来ていなければ、より患者の状態の悪い状況で起こりやすい耐性菌感染症のときに出来るわけがないなと思います。よりそれが必要なのにもかかわらず、です。ここが難しさの一。


診断の不足を治療薬の選択幅によって何とか穴埋めしている気でいると、多剤耐性菌が検出された時点で即ドン詰まってしまうでしょうね。一つだけある感受性薬に吸い寄せられるようにすがる思いでその効果を期待するだけ期待して、診断への眼はますます曇ってしまうでしょうね。これが難しさの二。そしてそれは患者への正しい治療を遠ざけるという危険と、そのようなやり方が多剤耐性菌検出をこれだけの現状にしてしまったのだという慨嘆と、さまざまなメッセージを含んだ発表となりました。スライド枚数は大分がんばって減らしたのですが、伝えたい内容としてはまだちょっと欲張りに詰め込みすぎだったかもしれません。


座長のもう一人は前から知り合いの先生で終了後に少し話をしていて、「未承認のあれが効くとか、これとこれ併用したら効くかも、みたいな話はつまんないですから、今日の発表とってもよかったです」との言葉をもらいました。皆の期待に応えられていたのだろうか、とはいつも講演後にも感じることなので、とても嬉しい言葉でした。ある意味期待には応えられてなかったのでしょうけど。
ともあれ、聞いてくれた大勢の中には、何かひとつでも気づいて行動してくれる方がきっといるはずだと思っています。



2011/02/18

2011.2.18 姫路に講演しに行きます.

今日は夕方から姫路感染対策フォーラムで感染症診療と感染予防策の話をしに行ってきます。

内容的にはいつもと変わらない話なのですが、これまでの若干詰め込みすぎの内容を、エッセンスとアピールしたいポイントはそのままに、スライドの分量はややスリムにして、話し方に少し工夫を加えていこうかなと考えてます。

2011/02/05

2011.2.24の日本集中治療医学会学術集会(横浜)での教育セミナーの案内ができました。


第38回日本集中治療医学会学術集会(横浜)の教育セミナーの分の案内チラシを数日前に届けていただきました。製作はまかせっきりですが、わりといい感じに仕上がってます。







2011/01/31

2011年始まったと思ったらもう2月。

あっという間に1月も終わりです。

今年の発表・講演は1.8-9の第22回日本臨床微生物学会(岡山)で始まりました。9日のシンポジウムⅢ「血液培養:より有用かつ適正な検査を目指して」にて「全病院的な血液培養陽性症例に対する臨床介入の実践と効果」というテーマで話しました。
抄録にも書いたのですが、感染制御の目的が院内感染症の発症する可能性を最小限にし、もし発症した場合の治療成功する可能性を最大限にすることであるからには、 院内感染症の診療に踏み込むことは感染制御部の大きな役割の一つであり、血培採取状況はそのような院内感染制御の水準を反映する指標の一つであるとさえ言えるかもしれないと考えています。そのためには各病院が血液培養の採取と検出菌の状況を正しく、かつ客観的に把握するところから始めなければならないと思います。国内の血培の現状に関する多施設調査を実施するという目標に向けて懇意にしている他施設の某先生と計画を進めてきましたが、このシンポジウムはそれの実現に向けたいい弾みになる形にまとまったと若干自画自賛しています。

2.5は昼間は東京に真菌症フォーラムに行きます。ポスターセッションの座長とカンジダ症診療のプロジェクトの紹介役を仰せつかっています。でトンボ帰って第11回レジ感(メルパルク京都)です。今回はどうも私が症例プレゼンすることになりそうです。


2.18には姫路(姫路感染対策フォーラム)に院内感染対策の講演をしに行きます。同門の大先輩の先生からのご指名シリーズです。毎度緊張しますがありがたいことです。

翌2.19は第26回日本環境感染学会総会(横浜)にてシンポジウム25「耐性菌の基礎から疫学まで」の演者として話をします。「耐性菌による感染症の治療法とその難しさ」が与えられたテーマです。感染症の治療のモダリティは抗菌薬とフォーカス制御(排膿、デブリドマン、留置物抜去など)しかありませんので治療の難しさは診断の難しさとほとんどイコールです。耐性菌検出例でもそれが起因菌であるか否かの判断が最も難しい点ですから、やれコリスチンだ、併用による相乗効果だと先走る前に、たとえ耐性菌感染でなくても感染症診療で気をつけなければならないことは何かということに主軸をおいた話にしようかと考えています。

2.24は第38回日本集中治療医学会学術集会(横浜)の教育セミナーに話しに行きます。
タイトルは「集中治療領域における感染制御の方向性と ICT の役割」です。集中治療領域は患者の状態が悪いために感染症診療も複雑になりやすいですが、呼吸・循環を密にモニターできるために逆にアグレッシブに診療を進めやすかったり、担当している患者数が少ないので診療についての細やかな説明や感染予防策への注意を伝えやすいところもあります。院内の感染症診療レベルの向上は多くの診療科の医師が出入りし、研修医ローテイタも多いICUが起点になることも多いと思います。当院の集中治療部は私達の考える感染症診療方針に対して理解の深い先生ばかりで大いに助かっています。今のところ、症例を通しては密に関与しているICUですが、院内のコアな部門としてICUとの組織的な特別な連携体制ができているとはいえない状況です。これを起点した感染制御についてその可能性や方向性を考察したいと考えています。

2月の学会は2回とも会場はパシフィコ横浜。首都圏在住の人は気にならないのでしょうが、なんやかんやで歩かなければならない距離が長いのが正直うんざりですな。

それはそうと、この冬は昨年とうってかわってよく雪がふります。比叡山や北の方の山々の雪化粧がこんなきれいな冬は京都に来てから初めてかもしれません。

2010/12/31

2010年、充実の11月から12月でした。

今年は11月が一番忙しかったです。

11月12-13日(土)の第53回日本感染症学会中日本地方会シンポジウム Emerging Infectious Diseasesでは企画と司会を担当しました。 初めての経験で難しさも痛感しましたが、うまくいった方かなと思います。ボスにも人選がよかったと褒めてもらいました。これまでの学会や研究会で直接知り合いになれた先生方に演者を頼むことができたことはとても幸せでした。もうひとつよかったと自分でも思うのは各演者の先生方にそのテーマの中でどういうポイントを話してほしいかをしっかりとリクエストできていたこと。独立した4つの感染症の総論を聞いても勉強にはなってもシンポジウムとは言えないんじゃないかとの思いからです。その真意をご理解いただけたのはやはり人選がよかったからで、そのような先生方と知り合いになれたのはやはり幸運であって。図々しく頼めた性格も幸運ですかな。一番の反省点は時間配分です。4演者いると各演者が微妙に時間を超過して、交替時に微妙に時間のロスがあって、で、ディスカッションの時間がやはり不足に。後ろが詰まっているのでどうにもならず、残念でした。まあしかし、次おなじような機会があればここをこうしようかといったアイデアもわいてきて、本当に貴重な経験ができました。

これは講演じゃないですけど11月16-17日は国立大学病院感染対策協議会の感染対策相互チェックを受審しました。2大学病院から感染対策担当者に訪問してもらい、院内の感染対策についてチェックしてもらうというシステムですが、これはとてもインパクトの大きなことで、いいシステムだと思います。アウトブレイクなど大事があると外部調査委員会などが入って調査し、報告書を作成するという形の勧告を行い、これが院内に大きな影響を与えてくれますが、感染対策は予防が基本なわけですので、大事が起こる前に外部の目が入るというこんなシステムこそ充実させていくべきものと思います。

11月20日はレジ感。記念すべき第10回でした。これについてはまたあらためてレジ感のサイトに。

そして24日から、日本化学療法学会西日本地方会で大分へ。

24日は学会主催の抗菌薬適正使用セミナー。ケーススタディの司会をしました。25日は技師に発表してもらった皮膚抗酸菌症の症例報告のセッションに出席。
26日はICD・ICP講習会でこちらはちゃんと発表。

これでやっと11月がおしまい。12月もなかなか充実でした。

12月2日は第31回日本臨床薬理学会年会のワークショップ3「感染症の臨床薬理」 で、「PK-PD理論に基づく抗MRSA薬・抗真菌薬の適正使用」というタイトルで話してきました。理論の話ではなく、それに基づく実践について話しました。理論は理論のままでは少なくとも患者には何の役にも立ちません。それを臨床現場に当てはめるということはどういうことなのかという問題意識で内容をつくりました。薬剤にとって最も有効性が高くなる投与量・用法は理論的に決まっていることであり、それを各症例に当てはめるということは各症例毎にカスタマイズした用量・用法を設定するということではないと思います。つまり、感染症症例に日々接している身として感じる実践目標はとにもかくにも「治療不足を徹底的に避ける」ということに尽きます。新しい薬剤が登場して治療の選択肢が増えていくのはありがたいことですが、このことが診断の不足に目を瞑る結果をもたらしては元も子もありません。しかし実際は、ある薬剤Aを投与していても効果不良の場合にその原因となる診断を顧みずに薬剤BやCにただ変更して様子を見ている(実際は何もしていないに等しい)、といったことはしばしばあるわけです。治療不足を避けるために診断が不足していては始まらないので、結果として血液培養をはじめとする診断の重要性をかなり強調することになりました。無論意識していれば、ですけど、用量・用法が正しいことが診断の不足に気づきやすくなるはずです。そのような意味で薬剤師の活躍によって埋めることのできる穴は大きく残っていると思います。

12月11-12日は近畿医学検査学会で奈良へ。学会のテーマが「まほろばにて温故知新」。まほろばってなんやねん、と思いましたが、辞書をひくと"すばらしい場所"という意味だそうです。やっぱなんやねん感はすっきりせずですが。

それはともかく11日はランチョンセミナー「耐性菌感染制御を目指す細菌検査のあり方」、12日は血液培養のシンポジウムで「血液培養の重要性(医師の立場から)とのタイトルで話をしました。11日のについては、準備しながら話す内容を絞り込んでいくうちに、細菌検査技師にしかできない何かを、検査結果を出すだけのことを越えた技師としての使命を考えてもらいたい、という思いがだんだん強くなり「〜 DataをIntelligenceへ, そしてPracticeへ 〜」のサブタイトルを付けました。検査結果を診療に反映させるためにどうしたらよいか、技師のできることも大きく残っていると思います。

12月8日は大阪赤十字病院にて「多剤耐性菌から病院を守る〜見えにくい”不都合な真実”〜」14日は京都桂病院で「抗菌薬適正使用=院内感染予防策の実践論」と題して院内感染対策講習会で話してきました。

こうして挙げていくと、我ながらよくがんばったなと思います。機会に恵まれたことにも感謝感謝です。書き足りないですが、今年の仕事は今年のうちにということで。

2010/12/18

10月末からのいろいろ

予定通りですが、10月末から次々にイベントがあって、アップするヒマというか気分的な余裕がありませんでした。列挙してみたらたくさんでしたのでとりあえず、少しずつ。


10月28-29日は国立大学病院感染対策協議会で幕張メッセまで行ってきました。全体としては例年通りでしたが、今回は数年来なかなか話が進んでいなかった、この協議会全体として外にエビデンスを出していくというひとつの方向性が定まってきました。常から何か物事を発展・向上させようと思ったときにはリアリズムに徹することが一番大切だと思っています。自分たちの感染対策がうまくいっているのか、問題があるのか、あるとすればどこにあって何をどうすることでそれを改善しようとするのか、これら全てに共通する出発点は、今現在の自分はどこにいるのかを客観的に見つめて現実を認識することだと思います。そしてすべてはそこから始まるのだろうと思います。その場所を確認したい、自分が確認するだけでなくて参加する各大学病院に確認してもらいたいというのが今回の協議会で提案した調査研究の主眼です。研究と銘打つともっと発展した話(比較研究、介入試験など)に考えが行きがちですが、それが可能なことか、我々にまず求められるのは何なのかを厳しく見つめるとやはりまずはこのような内容ではないかと考えています。いきなりバック宙しようとせずにまずは前転をきれいにできるように。スタートですので堅実に進めていきたいものです。


11月1日は横浜に深在性カンジダ症についての講演に。会の前にホスト側の先生方とお話ししていて、先の続きではないですが、やはり我々は意識していないと自分自身のいる位置が見えにくいものなのだろうなと思うようなことがありました。血液培養2セットどれくらいとられていますか?当院ではようやく40%くらいです、とお話ししたところ「うちはだいぶ(2セット)とってるよ。ほとんどじゃないかな?」とのこと。すごいですね、80%越えてますか?と聞き直すと「パーセントなんて出したことないけど。コンサルト来た症例で2セット採ってないことなんてないんじゃないかな」と。病院内で1セットしか出さずに見逃している菌血症がどれくらいあるのか?コンサルトといっても大きな病院の敗血症症例で数名の医師がコンサルト対応できる患者数はどんなにがんばっても3割も行かないだろうと思います。我々は自分の目の前の窓から世界を見ていますが、その窓がどれくらいの大きさなのか、その奥は本当はどれくらい広いのか、自分から見えない世界がどの程度あるのかを考えること、自分の見えている範囲は限られているということを認識することはやはりリアリズムだと思うのです。テーマのカンジダ症に関して自分の思う問題点もそうですし、考えてみると私がする講演のすべてはこのような観点に立っているような気がします。


こんなペースで書いてたら最近の分までどんだけ長くなるねん、なので今日はここまで。


2010/10/29

2010.11.1 神奈川県感染制御セミナー (横浜) に話しにいきます。

タイトルになっているプロジェクトは私も世話人に入っているもので、「カンジダ症の診療レベルアップを図ろう」というキャンペーンです。

前にも書いたかもしれませんが自分達の活動によって何かが変わっていくということを感じることができたなら、オーバーに言えば世界が変わるような感じがすると思います。自分自身それを感じることができたのはとても幸運なことだったと、つまり運に恵まれたところがあると思っていますし、このことが今もこうして仕事を嬉々として続けられている理由の一つとも思っています。

さて、カンジダ症の診療レベルアップについてですが、カンジダ血流感染に対して極く単純な「抗真菌薬の量と期間を最低限守ろう」「CVカテーテルは抜去(別部位入れ替え)しよう」という2点を院内に広く啓発することでカンジダ症の予後が良くなるか、ということをなんらかの形で検証することを考えています。数年前、日本公共広告機構のCMで「"知っている"を"している"に」というフレーズがありましたが、これは本当に秀逸作ですね。このプロジェクトもキャンペーンといってこれまでのように知識を教え込むことばかりでは医療のエンドユーザーまで届くとは限りません。少しでも"している"になってもらえるように、その契機・口実を作りたいというのが私のこのプロジェクトに期待している思いです。

会場は夜景のきれいないいとこっぽいですが、平日なのでまた翌朝始発で京都に戻らにゃなりませんし、泊まるのはきっといつもの新横浜の駅前ホテルになるでしょうな。まあ、ここもシンプルでいいホテルですけど。

2010/10/21

2010.10.17 ICD講習会で話をしてきました。

第54回日本医真菌学会で「真菌症を中心とした院内感染制御の実際」というテーマでICD講習会が開催され、1番目の演者として話す機会をいただきました。

タイトルは「抗真菌薬の適正使用〜病院感染症への診療支援から考える」です。

適正使用というのは好きな言葉ではないと随分前にも書きましたが、それでも今でも結構しつこくタイトルに入れています。リクエストされるからという側面もありますが、最近はそれだけじゃないです。しゃべりだすとこで適正ってなんなんだろう…って違和感を持ったり、逆にイントロであえて触れたりすることで本当に主張したいことを自分の中で再確認してペースがつかめてくるような気がするからです。

今回もまた診断の重要性が最も主張したいポイントでした。
真菌感染症の診療は細菌感染症という土台の上に初めて成り立つものだと思います。つまり、細菌感染症の診療がうまくできていないと真菌感染症は容易に見逃したり治療不足に陥ったりします。真菌症は入院患者の中でも重症化しやすいリスク因子をもつ患者で発症するので診療の善し悪しが予後に与える影響が宿主因子に紛れてわかりにくいものです。治療も一筋縄ではいかないことがしばしばです。だからこそ私達ができることは下した診断と治療を"守る"ことだと思います。これらをはっきりさせておけばうまくいっているのかおかしいのかは気づきやすくなるのに、あいまいな診断であいまいな治療をすると、うまくいってもいかかなくても何が理由なのかわからないからです。治療が不足してしまう最大要因が診断のあいまいさです。確定診断がなかなかつかないから、というのは現実ではありますが言い訳にはなりません。臨床診断だろうが暫定診断だろうが自分の下した診断をその根拠とともに明確にしておくことが十分な治療を行うという"覚悟"につながります。一例一例の治療の成否にはたしかに宿主因子の影響の大きい真菌感染症ですが、だからこそそこがしっかりしていなければ自分の行っている診療の妥当性、不足のある可能性に気づくことはできないでしょう。

気脈の通じ合う先生と話をしていると必ずといっていいほど「結局は"診断"につきる」というところに話しが向かいます。薬の使い方がわからない、という相談を受けることがよくありますが、使い方は診断で決まるものだと説明すると不満そうな反応がされることが多くて、残念な気持ちになります。いかに診断をおろそかに薬を選んでいるかの反映なのでしょうね。

研修医には「ごくごく単純な感染症をしっかりと診断しベタに治療する」という経験を積むことが大事だとよく言って指導しています。この基本問題が解けないと応用問題である複雑な細菌感染症も真菌感染症も解けないだろうと思っています。

来月は感染症中日本(京都)と化療西日本(大分)で2つICD講習会やります。ひとつは今回とほぼ同じ内容の真菌症の話ともうひとつは人工呼吸器関連肺炎サーベイランスの話です。

2010/10/07

2010.11.12-13 に日本感染症学会中日本地方会が京都で開催され、シンポジウムを担当します。

第53回日本感染症学会中日本地方会が京都リサーチパークで開催されます。


私は2日め13日(土)のシンポジウム Emerging Infectious Diseasesの企画と司会を担当することになりました。


以下、抄録(司会の言葉)から抜粋:
「新しく出現したウイルス、それまで遭遇していなかった細菌と我々が遭遇し、それによって感染症の臨床が大きく変化するような機会はこれから先だけでなく今この時点でもすぐそこにあります。本シンポジウムではEmerging infectious diseases(新興感染症)を聞きなじみのない新しい病原体による感染症の出現ととらえるのではなく、身近に迫りつつある脅威としての多剤耐性菌を中心に4つの病原体をとりあげることとしました。多剤耐性アシネトバクター、VRE、多剤耐性結核、新型インフルエンザに先陣を切って対応されている先生方に、実際に現場で対処された自らの体験にもとづく反省点や問題点を発表いただき、どう対処すべき(だった)か、 前もってどのような準備や体制が必要(だった)かにポイントをおいてディスカッションをしたいと思います。」

Emerging Infectious Diseasesといっても稀な感染症を意識するだけでなく、というよりむしろ、しのびよる脅威に対して現実を冷静に認識し、いかに準備・対応をすべきかに迫りたいと思っており、取り上げた4つの感染症に関するディスカッションから普遍的なポイントが導かれればと考えておる次第です。

2010/10/02

2010.9.29 外勤先の病院の院内トピック研修で多剤耐性菌の話をしました。

4月から週1日、隔週で行っている大阪の済生会野江病院。7月末に院内感染対策講習会で講演していますが、今回は多剤耐性アシネトバクターのアウトブレイク報道を受けた院内でのトピックス研修という形で講義しました。

実は先日の会議でこの日に行うこと了解しておきながらプレゼンが完成しておらず直前までばたばたと準備に追われました。
多剤耐性アシネトバクター、ニューデリー型メタロβラクタマーゼ産生腸内細菌、と立て続けに話題になっていますが、こういう報道を受けたとき、それをいいチャンスにして院内感染予防策や診療適正化を進めるきっかけや駆動力にすることが大事だろうと思います。当院では検出されてないから気にしなくても…ということではなく、今のこのMRSA・緑膿菌の状況であるならもしこの耐性菌が院内に入っていたらどんなことになるのかというイマジネーションをかき立て、感染予防策はどのような耐性菌であっても同じく有効に働くものなのだ、だから今でもいつでも必要なのだということを感じてもらえるように構成しました。今回はスライド枚数をセーブし余裕をもって臨めたのでなんとかうまく話せたのでは、と自負しています。

帰りの京阪は混み合う時間になってしまいました。ほんでまた最近の私鉄は、途中の○○でナントカ急行に乗り換えろ、みたいなのが多くなっててうっとうしい。途中で乗り換えってアナウンスを意識しておかないといけないだけでもメンドくさいですから。公共交通機関での通学・通勤をひたすら避けて生きてきたのでこういうのにいつまでも弱いままです。