2012/07/09

2012.7.5 ソウルでの韓国臨床微生物学会にて、日韓合同シンポジウムで結核の疫学の話をしてきました.

お世話になっている先生からのご指名で、日韓臨床微生物学会の合同企画、結核のシンポジウムの演者を努めることになりました。
お題は "Epidemiology of tuberculosis in Japan"

結核の話をするときは気が引き締まります。日本の結核の疫学については、結核予防会が毎年「結核の統計」という本を出していますから、安直にやろうとすればこの本の内容をかいつまんで話せばいいのですが、それだと私としては気が収まらないわけでして。ただ、今の仕事は結核診療の真ん中ではないので、アタマを整理し、ポイントを探ろうと、これまたお世話になっている元上司
の先生のもとへ昨今の結核事情について教えを請いに行き、情報だけでなくインスピレーションをもらって帰ってきました。

結核を減らすにはどうしたらいいか、「一人の結核発症患者から発生する感染者数(A)」x「感染者がその後発症する確率(B)」がreproductive numberであり、これを1未満にできるかどうか、ですわな。Aを減らし、Bを減らす、ことができるかどうかということになるわけで、Bを減らす手立ては潜在性結核感染(LTBI)治療しかありませんから、Aの減少を阻む因子をなくすということがポイントになります。そして、Aの減少を阻む因子はすなわち、診断・治療の遅れと不足、に他ならず、そのための行動目標を統計情報からあぶりだす、ということこそが「疫学」の価値だと思います。

今の日本の結核は減少傾向が続いてはいますが、減少率は明らかに鈍化しています。その原因を人口高齢化にのみ帰着させていいのか、そして、高齢化はこれからも進むという前提に立ったときに今の対策は足りているのか、足りないとするとそれはどこなのか、ということが話の軸になるだろうと、話す内容についてぼんやりとしたものは割と早くに固まったのですが、それを少しでもクリアに…もう少し踏み込んで…と試行錯誤してるうちに時間は経ち日は迫り、結局プレゼンが完成したのはギリギリ直前でした。

韓国は日本より数倍結核の罹患率は高いのですが、その事情についてはイメージがついていませんでした。その点、私の前に話した韓国の結核研究所の先生のお話はわかりやすく、私が日韓の違いを踏まえた話をする上でとても助かりました。

例によって、読み原稿は作らず、というか作れず、英語が口をついてでてくるようにとヒアリング+シャドウイング中心に練習し、今回もなんとかしのぎました。ただ、最後の締めの言葉だけはゴニョゴニョしないよう、前もって決めておこうと(直前ながら)考えておきました。

Anyway, we can act only against what we can see.

いつも実感していること、実践しようとしていること、そのまんまですな。