2011/12/31

2011年が終わります.

今年もまた怒濤の11月、12月でした。所感を…もなにもどこで何を話したのか振り返るだけでいっぱいいっぱいでした。

11.12は第14回レジ感(メルパルク京都)。11.14-15は国立大学病院感染対策協議会の相互チェックで宮崎大学病院へ。
11.19は来年うちのボスが会長を務める第59回臨床検査医学会総会のプログラム委員会で岡山に出向き、いろいろと企画案を話合ってきました。
11.24-26は奈良で化学療法学会西日本地方会・感染症学会中日本地方会の合同学会。初日に第132回ICD講習会「忘れてはならない結核」で結核の院内感染対策の話をし夜は評議員懇親会に出席。翌日は感染症学会の卒前・卒後教育企画「症例から学ぶ感染症セミナー〜症例の問題点から研究的考察へ〜」の司会と解説(カンジダ血症の疫学と病態因子)。最終日には指導した研修医の発表「京大病院における敗血症発症時の3点セット (血液培養・尿培養・胸部X線)実施の啓発と診療の適正化」と気の休まらない3日間でした。
11.29は院内の看護師対象のレベルアップ講習会「抗菌薬の適応と選択」

12.1は第32回臨床薬理学会年会シンポジウム3「臨床薬理と最新治療:感染症」で浜松へ「抗真菌薬の血中濃度モニタリングは必要か」
12.2は信州感染症フォーラムで長野「院内肺炎・NHCAPの診断と治療」
12.15はICDエキスパートフォーラムin千葉。
12.16京都臨床検査技師会の微生物班の講演会「深在性真菌症の診断と治療・検査の役割」その後忘年会にもお招きいただきました。
12.20は神奈川県病院薬剤師会 中小病院診療所委員会のTDM研修会にて「抗菌薬の適正使用とTDMの標準化を目指して」の題で抗MRSA薬の話を。
12.22は厚労省の研究班会議で東京「移植等の易感染性患者に発症する深在性真菌症の臨床疫学研究」

自転車操業ってこういうのを指すんでしょうか…

やっていることが少しずつリンクしてきて嬉しい反面、院外活動が増えすぎてきたのが今年の反省点と言えるかもしれません。

そういう来年初頭の予定はというと、

1.22は第23回臨床微生物学会(パシフィコ横浜)でベーシックレクチャー12「日和見感染の制御のための戦略」
1.28は第13回肝移植術後管理検討会(メルパルク京都)で「肝移植後感染症の特性と対策」
2.1は府内の公立病院の院内感染対策講習会で結核の院内感染対策の話をしに。
2.4は第27回環境感染学会総会(福岡国際会議場)シンポジウム15「医療関連感染アウトブレイク〜発生から発生後対応の実際に学ぶ〜」にて検査部におけるアウトブレイク防止対策を、トンボ帰って第15回レジ感(メルパルク京都)
2.9はICDエキスパートフォーラムin新潟。
2.24は第34回造血幹細胞移植学会総会(大阪国際会議場)のワークショップ8「移植関連臓器合併症の臨床」にて「造血幹細部移植における難治性真菌感染症の診断と治療のあり方」を。
2.28は第39回日本集中治療医学会学術集会で開かれる第1回MIICS (Master College of Infection Disease For Intensive Care Specialist)「ICU感染症患者を救うために」の座長をしに幕張メッセへ。

予定は入っちゃってるので反省が反映されるのは年度が変わってからですな。

来年度は新しい大学院生も入るので、これまでやってきたことの各々に芽を出させ、成長させられるような年になんとしてもしたいものです。


2011/11/04

2011.11.02 神戸の病院にて話してきました.

大学院に入るまで勤務していた病院での先輩がICTをしている病院(神戸市立医療センター西市民病院)にて「病院間連携による感染制御と感染症診療のレベルアップ」というタイトルで講演してきました。

病院間連携と感染制御・診療とは一見すこし離れたテーマですが、リクエストがそうだったということでこのようなタイトルになりました。

感染症は伝染って拡大する病気であることは新型インフルエンザを引き合いにだすまでもなく、ノロウイルスでもSARSでも同じことです。これらような自分の身に迫る危険感じる場合には感染制御や病院間連携を意識して、MRSAやESBLの時は感じないというのではプロフェッショナルではないと思います。

すぐ周りの感染制御ことを深く考えて実践していく延長線上で地域医療との関係の重要性に気づく、そこが感染制御における病院間連携のスタート地点なのだろう、と感じてもらいたかったのですが、病院間連携についての具体的なネタはあまりなくてまとまりがない話になってしまったかもしれません。それはわかっていたので、むしろ病棟内・病棟間の感染制御のことを深く認識してもらうことでまったく同じ構図が病院間、地域間、国家間にも当てはまることを感じてもらえればと思いながら話しました。

研修医に多く参加してもらっていたのは嬉しいことでした。ただ、研修医はまさに目の前の患者のことを超えたところまで思いをはせるのは難しいでしょうすね。中堅以上の医師が、研修医がそんな診療を自然にできるような空気をつくっていくことが肝要なのでしょう。

その先輩先生の撮ってくれた写真、自分の講演している光景のって意外ともらうことがないので、感謝の意も含めはずかしながら載せてみます。ちゃんと真剣な顔してますかね。

2011/10/29

2011.11.5は抗菌薬適正使用UPDATE (京都)です。

私の出番はないのですが、指導した研修医がトピックスでしゃべりますので行ってきます。

ローテイトしてきた研修医に、研修期間中にひとつテーマを決めて検討してもらう、ということを以前からずっとやっています。貴重な研修期間ですから何か形の残るものを、ということが目的のひとつ。勉強したい、知識を得たい、という気持ちでローテイトを選択してくれるのはとてもありがたいですが、この「勉強」というのは知識の取得ではなく、問題(テーマ)を明らかにして現実のなかでその解答を探る、というトレーニングだと思っています。なので、いつもテーマの設定に一番時間をかけています。研修医の感じた診療における漠然とした疑問が出発点ですが、それをいかに具体的な臨床的設問の形にするか、研修医に問い続けながら研いでいっています。お互いになかなかの負担なのですが、テーマが明確であればあるほどできあがったものの中に真実が見えてくる。どんなテーマでどんな結果であってもその感覚が新鮮ですし、その一連を研修医にも感じてもらいたいと思っています。


2011.9.17-21 51st ICAAC シカゴに行ってきました.

前の9.16はICD Expert Forumで仙台へ。
そしてその晩に成田まで行って、翌日、昨年行き損ねたICAACへ出発しました。3回目のシカゴです。
米国学会というものへの新鮮味はだいぶ薄れてきて、いい意味で少し冷めた目で学会を眺めるようになってきています。自分が演題を出していないからというところも多分にあって、そこはかなり反省ですが。新薬、耐性菌に対する話題もパターン化してきているような気がします。どのような話題も今後の課題としては診断と治療薬選択をどこまで最適化できるか、抗菌薬のスペクトラムと投与期間はどこまで絞れるか、というポイントに集約されるということがますます明らかになってきているように感じました。

現地でのとある企画でDr. Kettという最近Lancet Infectious Diseasesに意味深な研究結果を報告された、ICU医の先生と座談会をする機会に恵まれました。このような研究はその結果自体も面白いですが、なによりそれを確かめようという着想がすばらしいと感服します。このKett先生、この結果の意味するところを尋ねたところ「結局はベストプラクティスということだ」とさらりと言っていたのが印象的でした。たしかに。画一的な"ベスト"なんてあるわけないですから。

シカゴは行っている間天気が悪く、学会会場以外ほとんどどこにも出かけませんでしたが、最後の晩だけすこしマシになったので、John Hancock Observatoryへ行きました。これも3回目。
いいものは何度みるのもいいものです。

2年ぶりの海外でしたが、今回は機内で少しでも快適に過ごせるようにとあらかじめ買っておいた腰とお尻用の低反発クッション、足載せ用のエアクッションを持ち込みました。この手のものはもっと高いのをもっとあれこれ買ってもよかったかなと思いました。なにせ、座席クラスが変わると数十万違うわけですしね。このグッズ達と、読みたくて読めないままでいた本のおかげで往復とも割と短く感じたと思います。

ところが…帰国したら関東は台風もろに直撃。結局足止めくらって一泊過ごす羽目になり、それまで休んでた分翌日は絶対休めないし、でも新幹線は超満員だし…さんざんでした。もんじゃ焼き初体験できましたけど。


2011/10/23

2011.10.20 とある大阪の病院の院内講習会で話してきました

順番は飛びますが、最近のものも記憶が新たなうちに。

夏のセミナーを受講していただいた、市立枚方市民病院の先生から院内講習会での講師依頼を受け、そのセミナーでの「どこから何する?感染症~診断のマストと基本的な考え方~」を話してきました。

診断・治療の不足という穴は身近なところにたくさん開いていて、それは埋めることができるということ、診断・治療の不足は予防の不足につながり、予防の不足が診断・治療の不足を生じやすくしてしまう、といういつものテーマです。依頼を受けたとき、とくに医師に聞かせたいとのことでしたので、症例呈示を追加し、診療の現場に近い話になるよう心がけました。

聞いていただいた事務系の方から「病気や菌、薬の名前はもちろんわかりませんが、先生の言いたいことは事務の私にもよくわかりました。」とのお言葉をもらいました。こんなこと言われると嬉しくなるものです。

終了後の食事会には研修医がたくさん参加してくれました。私の、診断・判定の軸を多く持とうというメッセージに対し、「総合的な判断って結局"主観"ってことじゃないですか?」とおずおずと尋ねてきた研修医がいました。医師として咀嚼していなかければならない医療というもののもつ不確実性と、それ対していつまでも抱いていかなければならない不安というものが凝縮された、いい質問だなと思いました。彼が現場で慌ただしくもまれながら、身につけねばならない知識の多さに圧倒されながらも、(意識しているかはわかりませんが)医療というものに正面からぶつかっているということの現れなのでしょう。

食事量が3/10という客観的指標は、"3割くらい食べた"と患者本人あるいは下膳する看護師が記録用紙に記入した、という事実しか示しません。でもそのような曖昧な指標ならない方がいいかというとそんなことはないわけです。客観性とは医療が永遠に追求し続けるべきものですが、永遠に到達もできないもの、少なくとも到達できないのだろうと思い続けるべきものではないかと思います。

こういうの何か隠喩がなかったかなと考えているのですが思い出せません。シュレーディンガーの猫…マックスウェルの悪魔…単に不確定性原理かな?何か(全然?)違う気もしますが確かめても味気ないのでこのままに。頭の片隅においていればいつかどこかでこれだ!と視界がぱあっと明るくなるような時がくることでしょうし。

2011/10/22

2011.9.10 IUMS Sapporo 2011のシンポジウムで発表してきました.

2011.9.10は札幌へIUMS 2011で、日本医真菌学会と感染症学会とのジョイントシンポジウム "Epidemiology"にて、"Changing Epidemiology of Nosocomial Yeast Fungemia" というタイトルで発表してきました。Epidemiologyというか、ecologyというかは見方次第でしょうけど。

Non-albicans Candidaが増加しているという事象はとっくに既成事実となり、今やnon-albicansの中でこれまでと違う菌種が増加し、non-albicansというだけでなくnon-Candida yeastさえもが増加する、という変化・流れを冷静に認識し、捉え直してこれからの医療に臨んでいこう、というのがメッセージでした。オーストラリアのDr. MeyerのCryptococcus gattiiのglobalなレベルでのmolecular typingの話や、アスペルギルス症の大家であるDr. Stevensの発症要因についての切り口の新しい話、いずれも敬服に値する高いレベルの講演でした。スライドの見やすさ・キレイさでは自分の方が勝っていたと思いますが、内容的には彼らと比べると明らかに見劣りしており、大いに反省し、少しヘコんでしまいました。

英語は苦手ではないのですが得意でもありません。伝えたいことははっきり持っているのでかろうじて口をついて出てくることは出てくる、といった具合です。日本開催なので苦笑いで許容してもらったような感じでもしかして米国だったら浮きまくってたのかもしれません。
それでも英語を必死で勉強しようって気になかなかならんのですよね。一度手痛い目に遭わないとイカンのでしょうか。今回がまさにそれだったのにそう思ってないだけかもしれませんけどね。

実はこの前日9.9は福岡でのICD Expert forumにてACTIONs BUNDLEの話をしてきたところでした。講演後、北九州から深夜便で羽田に飛び、10日の早朝に札幌に飛ぶというむちゃくちゃなスケジュールですっかりバテてしまいました。予定の確認が甘かったのが原因なのですが、もうこんなのはこりごりですな。


2011/10/21

2011.9.3 医工連携人材育成セミナーで講義をしました.


前回からもうずいぶん日が空いてしまいましたが、ぼちぼちと更新しようかというところです。

すでに何年目でしょうか。毎年1回、医工連携人材育成セミナー(これ自体は3回目ですが)で「大学病院における臨床検査の現状と将来展望」というタイトルで医療や機器関係の社会人を対象に講義をしています。検査部に属していながら、というか属しているからむしろ、というべきか、なかなか難儀なテーマです。検査というものは診断と治療を進めるための道具ですので疾患概念や治療法が変われば検査もそれに合わせて変わっていくというたぐいのものであり、検査だけが進歩するということは通常ありません。理屈では、先端技術を駆使すれば新しい検査法が生まれるわけですが、それを活かす医療の場がなければその方法は宙に浮いているだけのものとなるでしょう。

ただ堅く言えることは、情報管理という側面での進歩幅は大きいだろうということです。かつて紙の報告書を紙カルテに貼り付けていた検査結果は完全にデジタル化しています。デジタル化した情報はユビキタス化するという必然の中で、どのように検査結果を管理する(あるいはしない)状態に向かうのか、向かうべきなのか、ということについては考えさせられるところが大きいです。実際講義終了後の質問もこのポイントを突かれました。ただ、これは検査に限ったことではなく診療情報のすべてに当てはまることなので、個人的な将来予想を語ることはできてもそれ以上には話しにくいというのが正直なところです。だれかこういうことを真剣に考えている人達はいるのか?という素朴な疑問がわいてきます。

とまあ、このようなことを考える機会、というが私にとってのこの仕事なんですね。

2011/08/12

2011.7.29は大阪、8.5は高松、そして8.26は広島へ〜ACTIONs BUNDLEツアー

カンジダ血症患者の予後向上という成果を目指し、診療レベルを上げるプロジェクトである、ACTIONs BUNDLEの講演会 (ICD Expert Forum in 各地)。全国ツアーさながらに続けています。

初回の京都、2回目の大阪と聴衆の反応や感想は上々だったのですが、以前に書いたように、プロジェクトリーダーの先生の意向と私の講演内容が合わず、しこりを残したままでいました。その先生も私もこのプロジェクトにかける思いは強いのですが、立ち位置が微妙に異なるためか、このBUNDLEを実際に使用してもらうにあたって何か越えるべき壁かという認識がズレていたようでした。
ということだったのかと、先日実際にサシで顔を合わせて1時間位ガンガン言い合ってようやく十分に理解できました。

結局は二人の間には埋めがたい溝があることはわかったのですが、このプロジェクトのリーダーはあくまでその先生であり、私はいわばスポークスマンの役です。となるとここは私が歩み寄るしかないです。溝があるならあるということがはっきりした以上、どちらかが折れる以外に道はないということがはっきりしたということですから。また、このプロジェクトが成功することを何より願っているという点は完全に一致していますし、私にその役を任命しただけでなく、京都・大阪と不満を抱きながらも外そうとはしなかったその先生の想い応えなければという気持ちもありましたから。
ただ、私も指をくわえて言うことを聞く、といった性分ではありませんし、京都・大阪分の講演に込めた私の想いは理解してもらいたかったですし随分と反論はしました。もちろん目上の先生ですから失礼のない言葉でではありますが、何か言う度にいちいち反論する様は知らない人が見たら喧嘩しているようだったかもしれません(実際学会や委員会等でのやりあいを初めて目にした人はよっぽど険悪な仲かと感じるそうです)。私もそうですが、おそらくその先生も言いたいことをしっかりと私に説得することができてすっきりしたのではないかと思います。

そんなこんなで迎えた、8.5のICD Expert Forum in TAKAMATSU.
私は「ここはなんと言われても譲れん」という箇所は残しつつ、イチオシで伝えたい最後の締めのフレーズも外さず、それ以外を大幅に差し替えて話をしました。
打ち合わせの時に「スライドちらっとだけでも見ておいて下さい」と言う私に「要らん要らん」と一瞥もせずに会場に向かったその先生ですが、私の話の終わった後は果たして…
表情、口調ともすごく満足してくれているのがよくわかりました。用事があって会の終了後足早に去ってしまったのですが、その前にお褒めの言葉を言い残してタクシーに乗っていったと後から聞きました。親交の深い先生によるとその日の私の講演は、今後もまかせられるかを試す「試験」だったんじゃないか、とのこと。

雨降って地固まるといったところでしょうか。というか雨降らずして地固まらず、なんでしょうね。

こんなこともあるので、考えたことを真剣にぶつけ合うのは、たとえ意見が一致しなかったとしても何かどこかに得るものが必ずあるから避けるべきじゃないんだといつも思っています。

ということで8.26は広島へ。
いろいろな意味でこれまで以上にノリノリでやっていきたいです。

2011/07/27

2011.7.30 第8回Blood Master (京都) にて真菌感染症の話をします.

輸血部の先生から御依頼いただき、造血器悪性腫瘍の診療に関する研究会でのミニレクチャーの講師を務めます。毎年顔を出しているICTの研究会と重なってしまい、そちらに行けないのが残念ですが、血液内科の先生方に対して感じる我々の思いを、難しい深在性真菌症の診断というテーマを通して少しでも伝えられればと思っています。

2011/07/19

2011.8.6 第3回「免疫抑制と感染症」症例検討カンファランス(京都)で座長をします。

免疫抑制治療の進歩に伴い様々な感染症が様々な、時として非典型的な徴候・病態で発症する場合が増えてきました。
そのような感染症に対してどのように対峙するか、というテーマで3年前に始めた症例検討カンファランスです。立場の異なる医師の意見や疑問をぶつけ合うことでお互いがレベルアップする、そんな研究会を目指しています。それに、症例検討はいつでもどんな症例でも面白いものです。
免疫抑制治療になじみのある方も薄い方もどうぞ覗いてみてください。

2011/07/18

引き続きなかなかハードな7月後半です。

2011.7.1は京都でカンジダ症の講演をしました。
深在性カンジダ症患者の予後を改善させたい、そのために「しっているをしているへ」を目指し、してほしい項目をプロジェクトメンバーでバンドルにまとめました。これを一人でも多くの感染症に関わる医療者が院内で活用してみようという気持ちになってもらうように考えを重ねてプレゼンをつくりました。
その意味ではうまく話せたかとほっとしながら講演を終えたのはよかったのですが、バンドルの内容の詳細や具体的な活用の仕方に踏み込んでいなかったことでプロジェクトリーダーの先生に不満を持たせてしまいました。
今回はいわば全国ツアーの皮切りでしたので、次回以降は(早速7.29に大阪で第2回目をやります)是非よりよい講演にしたいと思っています。

7.14-15は国立大学病院感染対策協議会の近畿・東海地区ブロック研修で福井に行ってきました。
これは地区の十数大学病院の感染対策担当者の集う、仲間の集まり的な研修会です。数年前から参加しています。この中でICNの活動実践報告の場があるのですが、ガイドライン的な内容を如何に院内で苦労・工夫しながら推進している様がよくわかって、参考にもなるし力づけられるので大変おもしろく聞いていました。これを是非ともICN以外の職種からも聞きたい、できれば若手でICTに足を突っ込むようになって間もない若手に話をしてもらうことでICTにより深くのめり込むきっかけにならないか、といった贅沢な期待をもってホストの大学の先生に企画を進言していたところ、二つ返事で賛同してくれて企画として実現し、私は司会にあててもらいました。で、終わっての感想としては、これはもっと早くからやればよかったな、これまで講演会、講習会的だったのが惜しかったなと。医師のみで集まる時間もあったのですが、皆同じように感じていたようで、手前味噌ながらなかなかいい企画でした。

7.16は 第3回細菌タイピング研究会(東京)に行ってきました。
昨年はじめて参加し少し話もしましたが、「タイピングの価値・意義はつまるところどこにあるのか?」と何人かに議論をふっかけてきたような感じでした。今回は質問しつつ会場の皆に問いかけることができ、交流会でも意見を交わすことができて、「どうタイピングを使えばその価値・意義があらわれそうなのか?」という昨年より一歩進んだところまで考えが到達してきたような気がしました。

7.17-18は第9回感染症の診断と治療セミナー(メルパルク京都)。お陰様でなかなかの盛況。イントロのレクチャーで感染症の診療の基本はやはり診断に尽きるということを強調して話しました。いくつか反省点もありましたが、1日目、2日目ともに設けたケーススタディは好印象で、来年度以降も充実させていきたいです。また、ひっそり8.20の第13回レジ感の告知をしておきました。

この間、日経メディカル社から耐性菌についての取材を受けました。2月に環境感染学会のシンポジウムで耐性菌感染症の現状、対処の難しさを発表したのを聞いて興味をもってくださったようで、わざわざ取材に来てくれましたので学会で話した内容と問題の本質がどこにあるか小一時間みっちり話をしました。記事としてはほんのわずかではありますが、記者の方に言いたかったことが理解してもらえたのがなんとなくわかる文章になっていて素直に嬉しかったです。

7月、これから先の予定はというと、、、
7.21(木)は第2回院内感染対策講習会。これから急ぎスライド準備するところです。
7.23(土)岐阜救急感染症セミナーにて6.28とほぼ同じ内容でカンジダ症について、7.26(火)は神奈川県東部若手医師感染症勉強会でサンフォードガイドの活用について、7.29は上述のカンジダ症の講演(ICD Expert Forum in OSAKA)、7.30は第8回Blood Master(京都)で造血器悪性腫瘍の診療における深在性真菌症、とくにアスペルギルス・接合菌症の診療と対策について、話してきます。
7.27は救急医療領域での感染症診療の向上を目指した企画の初回作戦会議、7.28は化学療法学会のセミナー企画会議で東京に行きます。

ということでなかなかハード。暑い日が続くので移動の車内で首もと冷やしつつしっかり身体を休めるよう気をつけていきたいと思います。

2011.6月にやったこと

今月はちょっと多めでした。

もう終わりましたが、6月1日は結核病学会の前日、私の属している委員会の会議がありました。結核病学会は会員数がジリ貧だったのですが、これは認定医制度を導入=認定のための単位になるセミナーを開始してとくに若手の医師の会員が増えたようです。この制度や教育的なセミナーに関する委員会で、学会の将来、と言うと大げさですが、今後の方向性のひとつの軸となるものだと思いますので、一肌脱ぐつもりで自分にできることを追求してみたいとあれこれ考えています。

6月6日は大学で今年度第1回の院内感染対策講習会。教授に登壇してもらいました。
翌7日は感染対策担当者会議。私と他メンバーとで当院の感染制御の体制、力を入れている点、急ぎ改善していかなければならない点などを各部署・診療科の担当者に伝達しました。

6月14日は山口大学、6月17日は山口赤十字病院へ、いずれも「感染症の適正診療と院内感染対策の結びつき」というタイトルで話してきます。同じ週に山口に2回行くことになったのは全くの偶然でした。どちらの病院でも真剣に取り組んでいる先生方と出会えて嬉しかったです。

6月23日から25日までは札幌へ。第59回日本化学療法学会総会です。23日は第18回抗菌薬適正使用生涯教育セミナー。テーマは薬剤の相互作用で、私は「抗菌薬と抗菌薬以外」の相互作用の話をし、その後ケーススタディで症例呈示(研修医の先生に依頼しています)・コメンテータの役があたっていました。25日はシンポジウム「抗 MRSA 薬における TDM 標準化のその後: コンセンサスが得られていること、解決しなければならないこと」にて「透析患者における抗MRSA薬の使用法とTDM」について話しました。

6月28日は西宮へ。第8回阪神ICT活動実践セミナーで、カンジダ症の話をしてようやく6月が終わりました。

いやはや感想も何も挙げるだけでいっぱいいっぱいですな。


2011/06/27

2011.6.28 阪神ICT活動実践セミナー(西宮)でカンジダ症の話をしてきます.

今週の金曜日と同じようなテーマで話をしに行きます。

カンジダ症をテーマに仕事をし始めたときはMRSAや緑膿菌と違って院内感染・感染制御とは関係が薄いかと思っていましたが、今はカンジダ症は院内感染の典型だと思うようになりました。というと「カンジダって伝染するの?」と突っ込まれそうですが、そのような突っ込みがくること自体が院内感染というものに対する偏った見方の反映だと思いますし、そのことが感染制御への切迫感の鈍さにリンクしていると思います。というようなところがまさに院内感染の典型の中の典型だとさえ言えるかもしれません。

とまでいうと禅問答みたいでしょうかね。



2011/06/25

2011.7.1京都でカンジダ症の講演をします!

今は日本化学療法学会で札幌に来ています。
今回のお役は適正使用生涯教育セミナーとTDMのシンポジウムです。

それはさておき、7月1日(金)に京都で開かれる "ICD Expert Forum" でカンジダ血症に関する講演をします。京都で話すのは久しぶりですし、今回お話しするACTIONs BUNDLEというのは昨年から企画メンバーで議論を重ねて進めてきたもので、つまるところ「ICDの力でカンジダ血症の予後をよくしよう」というプロジェクトで、私も大いに盛り上がっています。

京都を皮切りに各地でお話しする機会をいただける予定なので、各地で奮闘されている、あるいはこれから踏み出して行きたいという気持ちをもっている方々の弾みとなるような講演ができればと思っています。


2011/05/30

2011.5月の終わり。

5.21は関東医真菌懇話会(東京)にて、播種性トリコスポロン症の臨床疫学の話。
トリコ研のこれまでの成果について紹介しました。私のカンジダ症での経験から発案し、実現に至った研究会です。内容もさることながら、こんな形の研究もある、とくに数の少ないものでは不可欠だということを伝えることができていたら、と思います。

本日5.29には京都薬科大学へ「臨床で問題となっている耐性菌感染症の診療と対策」を話してきました。
意外にもこんな抗菌薬が効くとか、とりあえずこうすべきとか、最近こんな論文があるとか、そういう話はまったくせず、ひたすら現場で感じている問題意識について、それを共有できるようにと考えながら多角的に説明しました。
感染症(に限らず)治療の基本はとにかく診断である、菌と抗菌薬の組み合わせだけ考えていても治療は決して立ち行かないし、そのような考え方が今の耐性菌の状況をもたらしてしまった、という、またまた少し重めの話でした。
終わった後、世話役の先生が「たしかにこれまで感染症の治療といえば菌と薬の組み合わせしか考えていませんでした」とおっしゃっていました。この認識を改めて行かないと今後新薬がなかなか現れない中で耐性菌に立ち向かうのは難しく、その意味で発想の転換が必要なのだろうと思います。とりあえず、薬で、、、で何とかなった(あるいはそのように見えた)時代は過ぎたのだと思います。

有名な先生を聞いてても菌と抗菌薬と論文を見ているだけなのではないかと思うことがありますな。うんちくを語ることができてもそれで期待感をもたせることはできても残念ながら現場の問題の解決にはつながらない。抗菌薬は使えば使うほど効果の得られる患者が増えていく薬ではありませんから。
同じことばかり角度を変えて話している私ですが、目にとまりやすい耳当たりのいいことよりも、伝達したいことを繰り返ししっかりと伝達し続けたいと思っています。とにかくそのような機会がもらえただけでなく聴いてくれた方からの声が聞こえてくると、うれしくなってまた頑張る気も出てくるものです。

2011/05/04

2011.5月の予定。

学会シーズン一段落で5月はあまり予定がないはず、、、と思いながらスケジュール表を確認してみました。

5.14は第12回レジ感(メルパルク京都)。今回はコメンテータのみです。今回は以下の2例で、私もまだ診断名は知りません。
症例23:発熱と全身の痛みを訴えインフルエンザ治療を受けた80歳代女性
症例24 GISTでグリベック+プレドニン内服治療中に意識障害で救急搬送された60代女性
タイトルだけでも鑑別診断がいくつも挙がります。挙げられなかった、どんな鑑別診断が残っているのか、診療の経過でどのように期待を裏切ってくれるのか、毎回ながらたのしみです。
前回、私ともう一人のナビゲータが自ら症例プレゼンをやることになったため本来症例プレゼンターに進呈するはずの粗品の行き先がなくなってしまい、フロアの参加者から世話人が任意に選んだベストディスカッサントに進呈しました。しばらくこの方式でやってみて少しでも盛り上がればと思っています。

翌5.15は大学病院主催の研修医向け入局説明会です。数年前まで参加していましたが、まったくレスポンスがないので中断していました。アクセスは公開しているのでやる気のある人は連絡してくるだろうという甘い考えからです。今年も期待薄ですが、何もやらずに来ないよりやって来ない方があきらめもつくか、ということでまた数年頑張ってみようかと思います。

5.21第32回関東医真菌懇話会のシンポジウム「新興・再興真菌症の現状と対策」にて、播種性トリコスポロン症の臨床疫学を話します。研究会をつくって(私は外野ですが)検討を進めているところで、ようやく臨床像が見えてきたところです。だから対策もなにもわからないことだらけなのですが、そんな中でどこまで考察できるか、というテーマを自分に課してプレゼン準備をしようと思います。

5.23は人間健康学科にて「感染症の診断と治療」5.25は京都医療科学大学(園部)で「職業感染対策の理論と実践」講義をします。カリキュラムの講義は教科書的な内容をあますところなくわかりやすく説明する、というつもりで臨むと絶対無理ですね。どこを理解させればあとはテキストを読むだけで頭に入っていくか、あるいはどこから先は丸暗記するしかないのかがわかるか、ということを目標にして話すつもりです。テーマ全体を木とすると、講義によってこの木の幹と太い枝はこんなんです、と呈示できればと思っています。

5.29には京都薬科大学の卒後教育講座にて「臨床で問題となっている耐性菌感染症の診療と対策」を。2月の集中医療学会で話した内容を修正して構成するつもりです。
培養検査で陰性という結果を得たくて治療をしているわけではないですね。でも培養陰性という結果はその患者の真実がどうであれ担当医にとっては安心できる結果であるのでしょう。それはわかるのですが、誰のためなんのための医療かと考えれば話は変わってきます。医療に関連した感染症を起こしやすい(すなわち環境適合性が高く、抗菌薬抵抗性な菌、緑膿菌が典型)菌であるほど、採取しやすい検体において培養陰性とはなりがたく、それを陰性化したくてたまらずにいると、抗菌薬をとっかえひっかえして挙げ句の果てには局所投与したりして、そのようなことを続けているうちにまた耐性株に交替し、さらにややこしい菌に交替し、それがまた耐性菌感染を起こしやすくしている。このことを頭で理解できない人はいないはずなのに、起こさなければ培養陰性化するしないに関わらずやっててよかったと思い込んでやれやれ、それが真の感染症を起こしてしまうと(ここまで努力してきたんだから)もうやむなし手立てなし、で終わってしまうのが人間の性です。この悪循環をどう断ち切るか、発想を切り替える必要があるという話をしたいのですが、どう組み立てたらいいだろうかと正直まだ頭を悩ませています。

連休で1週少ないこと考えると意外になかなかハードな感じ。また寝不足の日々が増えそうです。とほほ。


2011/04/30

2011.4月を振り返って。

4月が終わるので振り返ってみました。

4.1はお約束の新採用研修医・医員へのオリエンテーションで感染対策の話をしました。わずか15分ですけど。昨年はこの担当になって間もなかったので前任者のつくったスライドをそのまま時間内にしゃべるだけで精一杯でしたが、今年は短時間なら短時間でその中で何を伝えたいかを一所懸命考えました。

病院は病気を治す場所なので感染症という病気が起こることをなんとしても最小限に抑える努力を怠るわけにはいきません。そして、病院内で診療に関係して発生しうる病気の中で他を圧倒して最多のものが感染症であるわけです。
そして医療者は一個人として自分の身の安全を守る意識を持つことも必要ですが、それはそれだけが目的ではありません。医療者の脱落は医療資源の減少を意味するからです。こういう言い方は医療者をモノ扱いしているように誤解されるかもしれませんが、そうでなければ職員が病院の費用でインフルエンザワクチンを打つことが正当化できません。その費用は直接患者のために使ってもよいはずのお金なのですから。
まあ、そこまで露骨な言い方はしませんでしたが、患者を守ることが第一の責務であることをまず強調し、自分の身を守ることが医療を守り患者を守ることだということを最も身近な血液曝露への対策と院内の接触による感染予防対策を2つの大きな項目として説明しました。自分なりにポイントを押さえた講義ができたかなと思います。

4.22 85回日本感染症学会総会(東京)のシンポジウムで話をしてきました。
シンポジウムのテーマは「多施設感染症臨床研究の基盤作り」で私はトップでイントロダクションとして「大学病院・感染制御部としての院内感染症の多施設研究」とのタイトルで話をしました。自らの関わった成功例、失敗例を紹介し、その反省を踏まえて、我々がまずどのようなところから踏み出していくべきなのかについてプレゼンしてきました。

感染症は臨床研究が少ない分野だと思います。新薬の治験以外で、感染症の臨床研究、少なくとも多施設研究を行ったことのある医師は少ないんですね。それでも第一歩として出来るものはどんな研究なのかを考えて経験を積んでいくしかないと思います。
少々懸念していたのですが、シンポジウムは臨床研究はかくあるべし的な話に進んでしまいました。CRC、データセンター、研究の管理部門、EDT(?)…整備されるに越したことはないのは言うまでもありません。しかし、それらが整うのを待つ間、我々は何をすべきなのでしょう。基盤が整備できたときにいきなりうまくいくのでしょうか。現在の限られたリソースの中でできることを追求していく過程と平行してこれらが整備されていった暁に大きな研究も可能になるのだと思います。我々にないものを挙げるだけでなく、あるものをmaxまで活用する姿勢が必要だと思うのです。
菌株のサーベイランス的研究、診療録をレビューして集計する研究は直ぐにでもできるはずです。
「今後も症例を集積して…」は学会報告のお決まりの逃げ口上です。多施設で症例を集めればそれだけでずっと貴重な情報が得られるのに、と感じる学会発表はたくさんあります。Research Questionは臨床現場で考えているといっぱい出てきては忙しい業務の中で流れて行きます。それらをぶつけ合う機会をもっと作れば、それを解決するための1つの手段に多施設研究があるという着想にたどりつくはずです。学会や研究会はたくさんありますが、それらのセッション、シンポジウム、ワークショップがそのような機会としての役割を担うことは十分可能なのにこれまではそのようなナビゲートはほとんどしてこなかったのではないか、と最後のディスカッションで訴えました。少なくとも座長の先生を含めその場にいた何名かの方々には賛同を得られたように感じました。前日(4.21)に行われた、私も企画ワーキンググループの一員として関わった「症例から学ぶ感染症症例検討セミナー~臨床の疑問点から研究的考察へ~」は座長の一人の先生が委員長をしているもので、まさにこのような視点の企画です。11月に奈良で開催される次回セミナーは私が担当することが決まっていますので、今回のセミナーとこのシンポジウムで流れはじめた源流を少しでもしっかりしたものに近づけられるかを課題にしたいと今から模索しています。

4.24の翌々日曜は神戸で開催された薬剤師プログラムにて市中肺炎についてのレクチャを行いました。薬剤師は薬物治療のプロではあっても、その前提となる診断のプロではありません。しかし感染症の臨床において最もないがしろにされがちなのがまさにこの「診断」です。その意味でどのような内容を話すか、またまた一所懸命に考えました。薬剤師に期待される第一は「その薬剤の効果が(もちろん安全性も含め)十分に発揮するような使われ方がされているか」を追求することだと思います。一般的に安全性の高い抗菌薬においては投与量・回数さえ守れば効果が発揮できるか否かはやはり診断で決まります。ということは診断のプロではない薬剤師のもう一つの役目は、微妙な言い方になりますが、ともに医療を支える職業として医師に対して「その診断は正しいのか?」というプレッシャーを与えることではないかと思っています。たとえ診断のことがよくわからなくてもその薬剤が有効な使われ方をしているのかについて真剣になってほしいし、ということは必然的に診断の妥当性にも意識を傾けてほしいからです。それが医師が診断に対して真剣になることにつながる道のひとつだと思います。診断に対して必要で最小限の使用がなされていなければ効果が減弱していくのが抗菌薬の重要な特性のひとつですから、それに大いに関心を持って考え、それを行動に移してほしいと切に願っています。

願っているだけでなく、そのために私にできることは是非やりたいです。実はこの会の数日後、京都府内のある病院の薬剤師から京都でもこのプログラムと同じようなことができないか考えているという連絡をいただきました。自分に何ができるかわかりませんが、何かできるだろうかと考えること自体、私にとって実に嬉しいことです。

4.26は大阪歯科大病院の院内感染対策講習会に呼んでいただいて「感染症診療と院内感染対策の結びつき」というタイトルで話をしてきました。話し慣れた内容なのですが、このところ少しずつ構成を変えていっています。以前は「自分の話したい内容を話したいように話す」という感覚が前にでていたように思いますが、あるきっかけからそれを少し反省して、聞いてくれた人の記憶に残したいポイントは何か、そのためにはどのように話したらよいか、という観点に立って見直してみたからです。この見直し後のプレゼンのペース配分が十分身についていないのか、考えていたより若干時間がかかってしまいました。幸い同じ内容で話す機会が夏までに数回入っていますので、会心のデキといえるものにしたいです(あくまで現時点の、ですけど)。

年度が変わってますます気ぜわしくて萎えることもときにありますが、こうして振り返ってみるとまだまだやりたいこと、できることがあるぞと気持ちが新たになりました。
そのための活力を蓄えるための期間として連休があるんでしょうかね。

2011/03/30

今年度の終わり。

まもなく2010年度が終わります。毎年この時期は年度という言葉に少し緊張します。というのも今年度と言ったり書いたりするとき「今」年度(2010年度)なのか、「今年(2011年)」度なのか、どっちやねんと思ってしまうからです。こっちはよくても聞き手がどう捉えているかわからないですし。

それはともかく、年度が変わる前に書き損ねていたことを以下に。

2.25近畿中央胸部疾患センターの講習会で抗菌薬適正使用と予防策の結びつきについて話してきました。昨年も書いたとおり、御世話になった先生からの依頼で毎年行っているものです。数年前研修医の時ローテイトしてきていた現在某病院で耳鼻科医をしている医師が来年度からICTに入ることになったといって聴きに来てくれていて軽く感激しました。

3.1大学の臨床実習入門コースのトピック講義で「院内感染予防対策」の話。標準予防策と針刺し血液曝露事故の予防について話しました。90分でしたが、これくらいの時間話できるとやっと事の重大さを感じさせることができるかなと思いました。ここからやつぎばやに実習→詳説→…を繰り返せると効果的なのでしょうね。
同じ内容については、4.1には新採用研修医向けのオリエンテーションでも話しますが、わずか15分です。しかし、昨年までのスライドを手直ししたので時間の割りにしっかり印象づけたいと思っています。

3.3某社の社内講演会で「感染症診療の現状と展望〜製薬企業 感染症専門MR・感染症事業部へのメッセージ〜」というタイトルでしゃべってきました。このような依頼はこれまでも数回引き受けたことがあります。
足の引っ張り合いみたいな泥仕合はもうたくさん。タンパク結合率やら組織移行性やらがどうこういう前に臨床効果がどうなのか、本当にその薬が活きる診断とはどんなものなのか、といった情報を発信してほしい。すべてではないにせよ、多くの薬剤にはその薬剤が最適な診断というものがあるわけなので、その薬がただ売れることではなく本当に適した診断の下で使用されることが感染症の診療のレベルを上げることにつながるだろう。レベルが上がればその薬剤の最も適した診断に至る例も増えるだろうし、そうして診療のレベルを上げることが医療の一翼を担う企業としての使命だろう。といった話でした。

3.18は京滋薬剤耐性菌サーベイランス研究会にてちょっぴり登壇。せっかく労力を払って集積している情報なのでそのクオリティを保とうということを会そのものと終了後の世話人会で話しました。

で、今年度を振り返るとポジションが上がったこともあって、やっぱりずっと追いまくられていたような一年でした。

先週末近所を散歩していたら、外は冷たかったですが土曜の荒れ模様で霞んだ空気がどっか飛んで行って、つぼみが膨らんだ木々の中早咲きの桜が澄んだ空の下で嬉しそうに咲いていました。またこの季節が巡ってきたんだなとしみじみ。新年度はもう少し余裕を持ってのびのびと歩んで行きたいものです。



2011/03/13

2011.3.13 糖尿病と感染症について市民講座で話してきました。

京都医療センターの開催する第25回 DM京都 専門家による糖尿病実践講座 糖尿病と感染症 で講演してきました。タイトルは「糖尿病と感染症〜いまからできること、すべきこと〜」です。大学の同級生から頼まれたもので、気軽にOKしたはいいもののよく考えたら、学生や医療者向けの講演は何度も経験ありますが、市民講座は初めてでした。

どんな内容にしたらわかってもらいやすくて、しかも自分の伝えたいメッセージが伝わるだろうかとずいぶん考えました。こんな時は教科書的な内容をかみ砕いて構成したらいいのかな、と逃げの気持ちになったりもしました。その方が手間はかかっても準備は気楽かも、という気持ちです。でもそれは私としてはポリシーに反することなので、やっぱり思いとどまりました。確固たるポリシーというほどのものでもなんでもありませんが、自分が本当に伝えたいことを伝えたいという気持ちが講演仕事を引き受けるときの最大のモチベーションだからです。おかげでホストの先生から「オリジナリティーのある内容で気持ちが伝わった」と嬉しい言葉をいただきました。

わかりやすい内容と言葉で、でも伝えたかったというか講演後に聴衆の心に残したかったのは「自分の身体は自分で守る」という意思です。終了後聴いてくれた患者の一人から「食事療法、運動療法ももっと頑張ろうという気になった」と御礼を言ってもらいました。食事や運動の話など少しもしていないのにです。こんな瞬間があると苦労して作ったことが一気に報われる気がします。

最大の反省点は時間の超過。最近は比較的調子よかったのですが、今日はやっちまいました。スライド枚数は普段の2/3くらいに抑えたのですが、枚数を抑えた油断と平易な言葉でゆっくり話そうという気持ちとが相まってしまいました。ここも成長の過程、次への課題ですな。

週末仕事がこのところ立て続いていましたが、今週末の土日2連チャンでやっと少し空きます。中断していた歯医者に行かないと。そうこうしているうちに春めいてくるんでしょうね。


2011/03/12

2011.3.12 第41回日本嫌気性菌感染症研究会(西宮)に行ってきました。

今日は朝から兵庫医科大学まで第41回日本嫌気性菌感染症研究会に行ってきました。平成記念会館というきれいな建物でした。

お役目は一般演題の発表ひとつと、教育講演の司会です。

一般演題は腹部・泌尿生殖器の放線菌症についての検討でした。マンデルという感染症の有名な教科書があるのですが、その中で "the most misdiagnosed disease"とか "no disease which is so often missed by experienced clinicians" とか書かれてあって、初めて読んだときから引っかかっているのがこの放線菌症です。ここ数年を思い出して、放線菌症を疑った症例は何例もありますが、本当にそうだった例は非常に少ないです。1つ典型例が記憶にあるのですが、私の担当ではなかったこともありますが、鑑別に挙がっていながらうまくその疑いを活かせなかった例でした。頻度の低さ、抗菌薬がよく効いてしまう点、肉芽腫性病変のため炎症反応に乏しい点など診断しにくい特徴がそろっているのが、とくに腹部・泌尿生殖器系の放線菌症だと思うので、気を引き締めるためにもと思って前々から気になっていたこのテーマにしたのでした。

で、実際やってみるとやっぱりいい勉強になったなぁと。学会でしゃべる以上に勉強になるものないですな。

ここ数年の該当例を拾い上げて簡単にレビューしただけですが、新たな発見がいくつもありました。それだけでなく、上に書いた例も患者はよくなったとはいえもっとうまく直せたはずだと反省もしました。

こんな機会はもっともっとみんなにやってもらいたいなと思っているんですけどね。えらそうなこと書きつつ、今回演題出したのは縁のある先生に頼まれたからで、ちょっと強引に絞り出したところがあるのですが。

我ながらなんですけど、ある意味ではやらされたとも言えるようなことであってもそこから多くを得られるかがその人の技量ですわな。自分のやりたいことをやり続けていくことはもちろん大事ですが、そこからちょっと道草してみると、それは道草ではなくて新たなルートだったり、そのことがめぐり巡ってやりたいことにつながってきたりします。そんな経験をすると、やらされ仕事のもつ意味がまた変わってきます。とはいえ、こんなのがワーカホリックゆうんでしょうか。

プログラム最後は教育講演の司会でした。司会ってのは経験が乏しく不慣れなので、演者の先生の紹介やディスカッションの進め方、最後の締めなど、いまいちたどたどしくて不完全燃焼感を感じるのですが、今日はフロアからの発言がたくさん出たこともあり、今までになくうまくいったと思います。成長の過程ですな。

そして今日は、心身ともに無事仕事ができたこと、いつも以上に感謝の気持ちでいっぱいです。

明日もがんばります。



2011/02/20

第26回日本環境感染学会のシンポジウムで多剤耐性菌感染症の治療について話をしてきました。

2011.2.19は早朝からパシフィコ横浜まで出かけました。朝9:00からシンポジウムの打ち合わせだったからです。新幹線ではぐっすり。で、会場つくや受付・クロークは超長蛇の列でびっくりしました。しかし、この学会はいつもこんな感じですな。


今回は多剤耐性菌の基礎から臨床といったテーマのシンポジウムで私は「多剤耐性菌感染症の治療とその難しさ」というタイトルでの口演でした。会場は立ち見の方が壁を埋める熱気で、それなりに場慣れしているはずの私ですが、今回は発表を待つ間に若干緊張してきました。


感染症の治療といったときに抗菌薬の選択しか頭にないのならば多剤耐性菌感染症の治療は極めて簡単です。多剤耐性であるほど治療薬選択の幅はなくなっていくわけですから、一つ二つあるか無いかの薬剤を使うしか他ないというだけのことで頭の使いようはありません。あったらいいなという期待はわかるのですが、他の人がはこっそり知っているけど私は知らなかった、実はこの菌にはこの薬が効く、みたいなうまい話(それがあるかのような発表はときおり耳にしますが)、そんなものはどこにもありません。


つまり、抗菌薬以外に治療としてできることがあるのか、あるならそれをどう可及的に探して行うかという一点が治療成功に大きく大きく影響する、それが多剤耐性菌感染症の治療のポイントだと思います。そうするとそれは結局は素早く正確な診断をつけるということに他ならないということです。


これはこれで極めて正当な論理展開ですし、実際そうなんだからしょうがないじゃないか、という思いで話をしたのですが、座長の一人の先生からは「なんだかうまくかわされた気がしますが、、」と言われてしまいました。しかしこのような診断のアプローチはそもそも耐性菌でも感受性菌でも同じく必要なことであって、いつも感受性菌感染症を診るときに出来ていなければ、より患者の状態の悪い状況で起こりやすい耐性菌感染症のときに出来るわけがないなと思います。よりそれが必要なのにもかかわらず、です。ここが難しさの一。


診断の不足を治療薬の選択幅によって何とか穴埋めしている気でいると、多剤耐性菌が検出された時点で即ドン詰まってしまうでしょうね。一つだけある感受性薬に吸い寄せられるようにすがる思いでその効果を期待するだけ期待して、診断への眼はますます曇ってしまうでしょうね。これが難しさの二。そしてそれは患者への正しい治療を遠ざけるという危険と、そのようなやり方が多剤耐性菌検出をこれだけの現状にしてしまったのだという慨嘆と、さまざまなメッセージを含んだ発表となりました。スライド枚数は大分がんばって減らしたのですが、伝えたい内容としてはまだちょっと欲張りに詰め込みすぎだったかもしれません。


座長のもう一人は前から知り合いの先生で終了後に少し話をしていて、「未承認のあれが効くとか、これとこれ併用したら効くかも、みたいな話はつまんないですから、今日の発表とってもよかったです」との言葉をもらいました。皆の期待に応えられていたのだろうか、とはいつも講演後にも感じることなので、とても嬉しい言葉でした。ある意味期待には応えられてなかったのでしょうけど。
ともあれ、聞いてくれた大勢の中には、何かひとつでも気づいて行動してくれる方がきっといるはずだと思っています。



2011/02/18

2011.2.18 姫路に講演しに行きます.

今日は夕方から姫路感染対策フォーラムで感染症診療と感染予防策の話をしに行ってきます。

内容的にはいつもと変わらない話なのですが、これまでの若干詰め込みすぎの内容を、エッセンスとアピールしたいポイントはそのままに、スライドの分量はややスリムにして、話し方に少し工夫を加えていこうかなと考えてます。

2011/02/05

2011.2.24の日本集中治療医学会学術集会(横浜)での教育セミナーの案内ができました。


第38回日本集中治療医学会学術集会(横浜)の教育セミナーの分の案内チラシを数日前に届けていただきました。製作はまかせっきりですが、わりといい感じに仕上がってます。







2011/01/31

2011年始まったと思ったらもう2月。

あっという間に1月も終わりです。

今年の発表・講演は1.8-9の第22回日本臨床微生物学会(岡山)で始まりました。9日のシンポジウムⅢ「血液培養:より有用かつ適正な検査を目指して」にて「全病院的な血液培養陽性症例に対する臨床介入の実践と効果」というテーマで話しました。
抄録にも書いたのですが、感染制御の目的が院内感染症の発症する可能性を最小限にし、もし発症した場合の治療成功する可能性を最大限にすることであるからには、 院内感染症の診療に踏み込むことは感染制御部の大きな役割の一つであり、血培採取状況はそのような院内感染制御の水準を反映する指標の一つであるとさえ言えるかもしれないと考えています。そのためには各病院が血液培養の採取と検出菌の状況を正しく、かつ客観的に把握するところから始めなければならないと思います。国内の血培の現状に関する多施設調査を実施するという目標に向けて懇意にしている他施設の某先生と計画を進めてきましたが、このシンポジウムはそれの実現に向けたいい弾みになる形にまとまったと若干自画自賛しています。

2.5は昼間は東京に真菌症フォーラムに行きます。ポスターセッションの座長とカンジダ症診療のプロジェクトの紹介役を仰せつかっています。でトンボ帰って第11回レジ感(メルパルク京都)です。今回はどうも私が症例プレゼンすることになりそうです。


2.18には姫路(姫路感染対策フォーラム)に院内感染対策の講演をしに行きます。同門の大先輩の先生からのご指名シリーズです。毎度緊張しますがありがたいことです。

翌2.19は第26回日本環境感染学会総会(横浜)にてシンポジウム25「耐性菌の基礎から疫学まで」の演者として話をします。「耐性菌による感染症の治療法とその難しさ」が与えられたテーマです。感染症の治療のモダリティは抗菌薬とフォーカス制御(排膿、デブリドマン、留置物抜去など)しかありませんので治療の難しさは診断の難しさとほとんどイコールです。耐性菌検出例でもそれが起因菌であるか否かの判断が最も難しい点ですから、やれコリスチンだ、併用による相乗効果だと先走る前に、たとえ耐性菌感染でなくても感染症診療で気をつけなければならないことは何かということに主軸をおいた話にしようかと考えています。

2.24は第38回日本集中治療医学会学術集会(横浜)の教育セミナーに話しに行きます。
タイトルは「集中治療領域における感染制御の方向性と ICT の役割」です。集中治療領域は患者の状態が悪いために感染症診療も複雑になりやすいですが、呼吸・循環を密にモニターできるために逆にアグレッシブに診療を進めやすかったり、担当している患者数が少ないので診療についての細やかな説明や感染予防策への注意を伝えやすいところもあります。院内の感染症診療レベルの向上は多くの診療科の医師が出入りし、研修医ローテイタも多いICUが起点になることも多いと思います。当院の集中治療部は私達の考える感染症診療方針に対して理解の深い先生ばかりで大いに助かっています。今のところ、症例を通しては密に関与しているICUですが、院内のコアな部門としてICUとの組織的な特別な連携体制ができているとはいえない状況です。これを起点した感染制御についてその可能性や方向性を考察したいと考えています。

2月の学会は2回とも会場はパシフィコ横浜。首都圏在住の人は気にならないのでしょうが、なんやかんやで歩かなければならない距離が長いのが正直うんざりですな。

それはそうと、この冬は昨年とうってかわってよく雪がふります。比叡山や北の方の山々の雪化粧がこんなきれいな冬は京都に来てから初めてかもしれません。