2010/12/31

2010年、充実の11月から12月でした。

今年は11月が一番忙しかったです。

11月12-13日(土)の第53回日本感染症学会中日本地方会シンポジウム Emerging Infectious Diseasesでは企画と司会を担当しました。 初めての経験で難しさも痛感しましたが、うまくいった方かなと思います。ボスにも人選がよかったと褒めてもらいました。これまでの学会や研究会で直接知り合いになれた先生方に演者を頼むことができたことはとても幸せでした。もうひとつよかったと自分でも思うのは各演者の先生方にそのテーマの中でどういうポイントを話してほしいかをしっかりとリクエストできていたこと。独立した4つの感染症の総論を聞いても勉強にはなってもシンポジウムとは言えないんじゃないかとの思いからです。その真意をご理解いただけたのはやはり人選がよかったからで、そのような先生方と知り合いになれたのはやはり幸運であって。図々しく頼めた性格も幸運ですかな。一番の反省点は時間配分です。4演者いると各演者が微妙に時間を超過して、交替時に微妙に時間のロスがあって、で、ディスカッションの時間がやはり不足に。後ろが詰まっているのでどうにもならず、残念でした。まあしかし、次おなじような機会があればここをこうしようかといったアイデアもわいてきて、本当に貴重な経験ができました。

これは講演じゃないですけど11月16-17日は国立大学病院感染対策協議会の感染対策相互チェックを受審しました。2大学病院から感染対策担当者に訪問してもらい、院内の感染対策についてチェックしてもらうというシステムですが、これはとてもインパクトの大きなことで、いいシステムだと思います。アウトブレイクなど大事があると外部調査委員会などが入って調査し、報告書を作成するという形の勧告を行い、これが院内に大きな影響を与えてくれますが、感染対策は予防が基本なわけですので、大事が起こる前に外部の目が入るというこんなシステムこそ充実させていくべきものと思います。

11月20日はレジ感。記念すべき第10回でした。これについてはまたあらためてレジ感のサイトに。

そして24日から、日本化学療法学会西日本地方会で大分へ。

24日は学会主催の抗菌薬適正使用セミナー。ケーススタディの司会をしました。25日は技師に発表してもらった皮膚抗酸菌症の症例報告のセッションに出席。
26日はICD・ICP講習会でこちらはちゃんと発表。

これでやっと11月がおしまい。12月もなかなか充実でした。

12月2日は第31回日本臨床薬理学会年会のワークショップ3「感染症の臨床薬理」 で、「PK-PD理論に基づく抗MRSA薬・抗真菌薬の適正使用」というタイトルで話してきました。理論の話ではなく、それに基づく実践について話しました。理論は理論のままでは少なくとも患者には何の役にも立ちません。それを臨床現場に当てはめるということはどういうことなのかという問題意識で内容をつくりました。薬剤にとって最も有効性が高くなる投与量・用法は理論的に決まっていることであり、それを各症例に当てはめるということは各症例毎にカスタマイズした用量・用法を設定するということではないと思います。つまり、感染症症例に日々接している身として感じる実践目標はとにもかくにも「治療不足を徹底的に避ける」ということに尽きます。新しい薬剤が登場して治療の選択肢が増えていくのはありがたいことですが、このことが診断の不足に目を瞑る結果をもたらしては元も子もありません。しかし実際は、ある薬剤Aを投与していても効果不良の場合にその原因となる診断を顧みずに薬剤BやCにただ変更して様子を見ている(実際は何もしていないに等しい)、といったことはしばしばあるわけです。治療不足を避けるために診断が不足していては始まらないので、結果として血液培養をはじめとする診断の重要性をかなり強調することになりました。無論意識していれば、ですけど、用量・用法が正しいことが診断の不足に気づきやすくなるはずです。そのような意味で薬剤師の活躍によって埋めることのできる穴は大きく残っていると思います。

12月11-12日は近畿医学検査学会で奈良へ。学会のテーマが「まほろばにて温故知新」。まほろばってなんやねん、と思いましたが、辞書をひくと"すばらしい場所"という意味だそうです。やっぱなんやねん感はすっきりせずですが。

それはともかく11日はランチョンセミナー「耐性菌感染制御を目指す細菌検査のあり方」、12日は血液培養のシンポジウムで「血液培養の重要性(医師の立場から)とのタイトルで話をしました。11日のについては、準備しながら話す内容を絞り込んでいくうちに、細菌検査技師にしかできない何かを、検査結果を出すだけのことを越えた技師としての使命を考えてもらいたい、という思いがだんだん強くなり「〜 DataをIntelligenceへ, そしてPracticeへ 〜」のサブタイトルを付けました。検査結果を診療に反映させるためにどうしたらよいか、技師のできることも大きく残っていると思います。

12月8日は大阪赤十字病院にて「多剤耐性菌から病院を守る〜見えにくい”不都合な真実”〜」14日は京都桂病院で「抗菌薬適正使用=院内感染予防策の実践論」と題して院内感染対策講習会で話してきました。

こうして挙げていくと、我ながらよくがんばったなと思います。機会に恵まれたことにも感謝感謝です。書き足りないですが、今年の仕事は今年のうちにということで。

2010/12/18

10月末からのいろいろ

予定通りですが、10月末から次々にイベントがあって、アップするヒマというか気分的な余裕がありませんでした。列挙してみたらたくさんでしたのでとりあえず、少しずつ。


10月28-29日は国立大学病院感染対策協議会で幕張メッセまで行ってきました。全体としては例年通りでしたが、今回は数年来なかなか話が進んでいなかった、この協議会全体として外にエビデンスを出していくというひとつの方向性が定まってきました。常から何か物事を発展・向上させようと思ったときにはリアリズムに徹することが一番大切だと思っています。自分たちの感染対策がうまくいっているのか、問題があるのか、あるとすればどこにあって何をどうすることでそれを改善しようとするのか、これら全てに共通する出発点は、今現在の自分はどこにいるのかを客観的に見つめて現実を認識することだと思います。そしてすべてはそこから始まるのだろうと思います。その場所を確認したい、自分が確認するだけでなくて参加する各大学病院に確認してもらいたいというのが今回の協議会で提案した調査研究の主眼です。研究と銘打つともっと発展した話(比較研究、介入試験など)に考えが行きがちですが、それが可能なことか、我々にまず求められるのは何なのかを厳しく見つめるとやはりまずはこのような内容ではないかと考えています。いきなりバック宙しようとせずにまずは前転をきれいにできるように。スタートですので堅実に進めていきたいものです。


11月1日は横浜に深在性カンジダ症についての講演に。会の前にホスト側の先生方とお話ししていて、先の続きではないですが、やはり我々は意識していないと自分自身のいる位置が見えにくいものなのだろうなと思うようなことがありました。血液培養2セットどれくらいとられていますか?当院ではようやく40%くらいです、とお話ししたところ「うちはだいぶ(2セット)とってるよ。ほとんどじゃないかな?」とのこと。すごいですね、80%越えてますか?と聞き直すと「パーセントなんて出したことないけど。コンサルト来た症例で2セット採ってないことなんてないんじゃないかな」と。病院内で1セットしか出さずに見逃している菌血症がどれくらいあるのか?コンサルトといっても大きな病院の敗血症症例で数名の医師がコンサルト対応できる患者数はどんなにがんばっても3割も行かないだろうと思います。我々は自分の目の前の窓から世界を見ていますが、その窓がどれくらいの大きさなのか、その奥は本当はどれくらい広いのか、自分から見えない世界がどの程度あるのかを考えること、自分の見えている範囲は限られているということを認識することはやはりリアリズムだと思うのです。テーマのカンジダ症に関して自分の思う問題点もそうですし、考えてみると私がする講演のすべてはこのような観点に立っているような気がします。


こんなペースで書いてたら最近の分までどんだけ長くなるねん、なので今日はここまで。