2010/12/31

2010年、充実の11月から12月でした。

今年は11月が一番忙しかったです。

11月12-13日(土)の第53回日本感染症学会中日本地方会シンポジウム Emerging Infectious Diseasesでは企画と司会を担当しました。 初めての経験で難しさも痛感しましたが、うまくいった方かなと思います。ボスにも人選がよかったと褒めてもらいました。これまでの学会や研究会で直接知り合いになれた先生方に演者を頼むことができたことはとても幸せでした。もうひとつよかったと自分でも思うのは各演者の先生方にそのテーマの中でどういうポイントを話してほしいかをしっかりとリクエストできていたこと。独立した4つの感染症の総論を聞いても勉強にはなってもシンポジウムとは言えないんじゃないかとの思いからです。その真意をご理解いただけたのはやはり人選がよかったからで、そのような先生方と知り合いになれたのはやはり幸運であって。図々しく頼めた性格も幸運ですかな。一番の反省点は時間配分です。4演者いると各演者が微妙に時間を超過して、交替時に微妙に時間のロスがあって、で、ディスカッションの時間がやはり不足に。後ろが詰まっているのでどうにもならず、残念でした。まあしかし、次おなじような機会があればここをこうしようかといったアイデアもわいてきて、本当に貴重な経験ができました。

これは講演じゃないですけど11月16-17日は国立大学病院感染対策協議会の感染対策相互チェックを受審しました。2大学病院から感染対策担当者に訪問してもらい、院内の感染対策についてチェックしてもらうというシステムですが、これはとてもインパクトの大きなことで、いいシステムだと思います。アウトブレイクなど大事があると外部調査委員会などが入って調査し、報告書を作成するという形の勧告を行い、これが院内に大きな影響を与えてくれますが、感染対策は予防が基本なわけですので、大事が起こる前に外部の目が入るというこんなシステムこそ充実させていくべきものと思います。

11月20日はレジ感。記念すべき第10回でした。これについてはまたあらためてレジ感のサイトに。

そして24日から、日本化学療法学会西日本地方会で大分へ。

24日は学会主催の抗菌薬適正使用セミナー。ケーススタディの司会をしました。25日は技師に発表してもらった皮膚抗酸菌症の症例報告のセッションに出席。
26日はICD・ICP講習会でこちらはちゃんと発表。

これでやっと11月がおしまい。12月もなかなか充実でした。

12月2日は第31回日本臨床薬理学会年会のワークショップ3「感染症の臨床薬理」 で、「PK-PD理論に基づく抗MRSA薬・抗真菌薬の適正使用」というタイトルで話してきました。理論の話ではなく、それに基づく実践について話しました。理論は理論のままでは少なくとも患者には何の役にも立ちません。それを臨床現場に当てはめるということはどういうことなのかという問題意識で内容をつくりました。薬剤にとって最も有効性が高くなる投与量・用法は理論的に決まっていることであり、それを各症例に当てはめるということは各症例毎にカスタマイズした用量・用法を設定するということではないと思います。つまり、感染症症例に日々接している身として感じる実践目標はとにもかくにも「治療不足を徹底的に避ける」ということに尽きます。新しい薬剤が登場して治療の選択肢が増えていくのはありがたいことですが、このことが診断の不足に目を瞑る結果をもたらしては元も子もありません。しかし実際は、ある薬剤Aを投与していても効果不良の場合にその原因となる診断を顧みずに薬剤BやCにただ変更して様子を見ている(実際は何もしていないに等しい)、といったことはしばしばあるわけです。治療不足を避けるために診断が不足していては始まらないので、結果として血液培養をはじめとする診断の重要性をかなり強調することになりました。無論意識していれば、ですけど、用量・用法が正しいことが診断の不足に気づきやすくなるはずです。そのような意味で薬剤師の活躍によって埋めることのできる穴は大きく残っていると思います。

12月11-12日は近畿医学検査学会で奈良へ。学会のテーマが「まほろばにて温故知新」。まほろばってなんやねん、と思いましたが、辞書をひくと"すばらしい場所"という意味だそうです。やっぱなんやねん感はすっきりせずですが。

それはともかく11日はランチョンセミナー「耐性菌感染制御を目指す細菌検査のあり方」、12日は血液培養のシンポジウムで「血液培養の重要性(医師の立場から)とのタイトルで話をしました。11日のについては、準備しながら話す内容を絞り込んでいくうちに、細菌検査技師にしかできない何かを、検査結果を出すだけのことを越えた技師としての使命を考えてもらいたい、という思いがだんだん強くなり「〜 DataをIntelligenceへ, そしてPracticeへ 〜」のサブタイトルを付けました。検査結果を診療に反映させるためにどうしたらよいか、技師のできることも大きく残っていると思います。

12月8日は大阪赤十字病院にて「多剤耐性菌から病院を守る〜見えにくい”不都合な真実”〜」14日は京都桂病院で「抗菌薬適正使用=院内感染予防策の実践論」と題して院内感染対策講習会で話してきました。

こうして挙げていくと、我ながらよくがんばったなと思います。機会に恵まれたことにも感謝感謝です。書き足りないですが、今年の仕事は今年のうちにということで。

2010/12/18

10月末からのいろいろ

予定通りですが、10月末から次々にイベントがあって、アップするヒマというか気分的な余裕がありませんでした。列挙してみたらたくさんでしたのでとりあえず、少しずつ。


10月28-29日は国立大学病院感染対策協議会で幕張メッセまで行ってきました。全体としては例年通りでしたが、今回は数年来なかなか話が進んでいなかった、この協議会全体として外にエビデンスを出していくというひとつの方向性が定まってきました。常から何か物事を発展・向上させようと思ったときにはリアリズムに徹することが一番大切だと思っています。自分たちの感染対策がうまくいっているのか、問題があるのか、あるとすればどこにあって何をどうすることでそれを改善しようとするのか、これら全てに共通する出発点は、今現在の自分はどこにいるのかを客観的に見つめて現実を認識することだと思います。そしてすべてはそこから始まるのだろうと思います。その場所を確認したい、自分が確認するだけでなくて参加する各大学病院に確認してもらいたいというのが今回の協議会で提案した調査研究の主眼です。研究と銘打つともっと発展した話(比較研究、介入試験など)に考えが行きがちですが、それが可能なことか、我々にまず求められるのは何なのかを厳しく見つめるとやはりまずはこのような内容ではないかと考えています。いきなりバック宙しようとせずにまずは前転をきれいにできるように。スタートですので堅実に進めていきたいものです。


11月1日は横浜に深在性カンジダ症についての講演に。会の前にホスト側の先生方とお話ししていて、先の続きではないですが、やはり我々は意識していないと自分自身のいる位置が見えにくいものなのだろうなと思うようなことがありました。血液培養2セットどれくらいとられていますか?当院ではようやく40%くらいです、とお話ししたところ「うちはだいぶ(2セット)とってるよ。ほとんどじゃないかな?」とのこと。すごいですね、80%越えてますか?と聞き直すと「パーセントなんて出したことないけど。コンサルト来た症例で2セット採ってないことなんてないんじゃないかな」と。病院内で1セットしか出さずに見逃している菌血症がどれくらいあるのか?コンサルトといっても大きな病院の敗血症症例で数名の医師がコンサルト対応できる患者数はどんなにがんばっても3割も行かないだろうと思います。我々は自分の目の前の窓から世界を見ていますが、その窓がどれくらいの大きさなのか、その奥は本当はどれくらい広いのか、自分から見えない世界がどの程度あるのかを考えること、自分の見えている範囲は限られているということを認識することはやはりリアリズムだと思うのです。テーマのカンジダ症に関して自分の思う問題点もそうですし、考えてみると私がする講演のすべてはこのような観点に立っているような気がします。


こんなペースで書いてたら最近の分までどんだけ長くなるねん、なので今日はここまで。


2010/10/29

2010.11.1 神奈川県感染制御セミナー (横浜) に話しにいきます。

タイトルになっているプロジェクトは私も世話人に入っているもので、「カンジダ症の診療レベルアップを図ろう」というキャンペーンです。

前にも書いたかもしれませんが自分達の活動によって何かが変わっていくということを感じることができたなら、オーバーに言えば世界が変わるような感じがすると思います。自分自身それを感じることができたのはとても幸運なことだったと、つまり運に恵まれたところがあると思っていますし、このことが今もこうして仕事を嬉々として続けられている理由の一つとも思っています。

さて、カンジダ症の診療レベルアップについてですが、カンジダ血流感染に対して極く単純な「抗真菌薬の量と期間を最低限守ろう」「CVカテーテルは抜去(別部位入れ替え)しよう」という2点を院内に広く啓発することでカンジダ症の予後が良くなるか、ということをなんらかの形で検証することを考えています。数年前、日本公共広告機構のCMで「"知っている"を"している"に」というフレーズがありましたが、これは本当に秀逸作ですね。このプロジェクトもキャンペーンといってこれまでのように知識を教え込むことばかりでは医療のエンドユーザーまで届くとは限りません。少しでも"している"になってもらえるように、その契機・口実を作りたいというのが私のこのプロジェクトに期待している思いです。

会場は夜景のきれいないいとこっぽいですが、平日なのでまた翌朝始発で京都に戻らにゃなりませんし、泊まるのはきっといつもの新横浜の駅前ホテルになるでしょうな。まあ、ここもシンプルでいいホテルですけど。

2010/10/21

2010.10.17 ICD講習会で話をしてきました。

第54回日本医真菌学会で「真菌症を中心とした院内感染制御の実際」というテーマでICD講習会が開催され、1番目の演者として話す機会をいただきました。

タイトルは「抗真菌薬の適正使用〜病院感染症への診療支援から考える」です。

適正使用というのは好きな言葉ではないと随分前にも書きましたが、それでも今でも結構しつこくタイトルに入れています。リクエストされるからという側面もありますが、最近はそれだけじゃないです。しゃべりだすとこで適正ってなんなんだろう…って違和感を持ったり、逆にイントロであえて触れたりすることで本当に主張したいことを自分の中で再確認してペースがつかめてくるような気がするからです。

今回もまた診断の重要性が最も主張したいポイントでした。
真菌感染症の診療は細菌感染症という土台の上に初めて成り立つものだと思います。つまり、細菌感染症の診療がうまくできていないと真菌感染症は容易に見逃したり治療不足に陥ったりします。真菌症は入院患者の中でも重症化しやすいリスク因子をもつ患者で発症するので診療の善し悪しが予後に与える影響が宿主因子に紛れてわかりにくいものです。治療も一筋縄ではいかないことがしばしばです。だからこそ私達ができることは下した診断と治療を"守る"ことだと思います。これらをはっきりさせておけばうまくいっているのかおかしいのかは気づきやすくなるのに、あいまいな診断であいまいな治療をすると、うまくいってもいかかなくても何が理由なのかわからないからです。治療が不足してしまう最大要因が診断のあいまいさです。確定診断がなかなかつかないから、というのは現実ではありますが言い訳にはなりません。臨床診断だろうが暫定診断だろうが自分の下した診断をその根拠とともに明確にしておくことが十分な治療を行うという"覚悟"につながります。一例一例の治療の成否にはたしかに宿主因子の影響の大きい真菌感染症ですが、だからこそそこがしっかりしていなければ自分の行っている診療の妥当性、不足のある可能性に気づくことはできないでしょう。

気脈の通じ合う先生と話をしていると必ずといっていいほど「結局は"診断"につきる」というところに話しが向かいます。薬の使い方がわからない、という相談を受けることがよくありますが、使い方は診断で決まるものだと説明すると不満そうな反応がされることが多くて、残念な気持ちになります。いかに診断をおろそかに薬を選んでいるかの反映なのでしょうね。

研修医には「ごくごく単純な感染症をしっかりと診断しベタに治療する」という経験を積むことが大事だとよく言って指導しています。この基本問題が解けないと応用問題である複雑な細菌感染症も真菌感染症も解けないだろうと思っています。

来月は感染症中日本(京都)と化療西日本(大分)で2つICD講習会やります。ひとつは今回とほぼ同じ内容の真菌症の話ともうひとつは人工呼吸器関連肺炎サーベイランスの話です。

2010/10/07

2010.11.12-13 に日本感染症学会中日本地方会が京都で開催され、シンポジウムを担当します。

第53回日本感染症学会中日本地方会京都リサーチパークで開催されます。


私は2日め13日(土)のシンポジウム Emerging Infectious Diseasesの企画と司会を担当することになりました。


以下、抄録(司会の言葉)から抜粋:
「新しく出現したウイルス、それまで遭遇していなかった細菌と我々が遭遇し、それによって感染症の臨床が大きく変化するような機会はこれから先だけでなく今この時点でもすぐそこにあります。本シンポジウムではEmerging infectious diseases(新興感染症)を聞きなじみのない新しい病原体による感染症の出現ととらえるのではなく、身近に迫りつつある脅威としての多剤耐性菌を中心に4つの病原体をとりあげることとしました。多剤耐性アシネトバクター、VRE、多剤耐性結核、新型インフルエンザに先陣を切って対応されている先生方に、実際に現場で対処された自らの体験にもとづく反省点や問題点を発表いただき、どう対処すべき(だった)か、 前もってどのような準備や体制が必要(だった)かにポイントをおいてディスカッションをしたいと思います。」

Emerging Infectious Diseasesといっても稀な感染症を意識するだけでなく、というよりむしろ、しのびよる脅威に対して現実を冷静に認識し、いかに準備・対応をすべきかに迫りたいと思っており、取り上げた4つの感染症に関するディスカッションから普遍的なポイントが導かれればと考えておる次第です。

2010/10/02

2010.9.29 外勤先の病院の院内トピック研修で多剤耐性菌の話をしました。

4月から週1日、隔週で行っている大阪の済生会野江病院。7月末に院内感染対策講習会で講演していますが、今回は多剤耐性アシネトバクターのアウトブレイク報道を受けた院内でのトピックス研修という形で講義しました。

実は先日の会議でこの日に行うこと了解しておきながらプレゼンが完成しておらず直前までばたばたと準備に追われました。
多剤耐性アシネトバクター、ニューデリー型メタロβラクタマーゼ産生腸内細菌、と立て続けに話題になっていますが、こういう報道を受けたとき、それをいいチャンスにして院内感染予防策や診療適正化を進めるきっかけや駆動力にすることが大事だろうと思います。当院では検出されてないから気にしなくても…ということではなく、今のこのMRSA・緑膿菌の状況であるならもしこの耐性菌が院内に入っていたらどんなことになるのかというイマジネーションをかき立て、感染予防策はどのような耐性菌であっても同じく有効に働くものなのだ、だから今でもいつでも必要なのだということを感じてもらえるように構成しました。今回はスライド枚数をセーブし余裕をもって臨めたのでなんとかうまく話せたのでは、と自負しています。

帰りの京阪は混み合う時間になってしまいました。ほんでまた最近の私鉄は、途中の○○でナントカ急行に乗り換えろ、みたいなのが多くなっててうっとうしい。途中で乗り換えってアナウンスを意識しておかないといけないだけでもメンドくさいですから。公共交通機関での通学・通勤をひたすら避けて生きてきたのでこういうのにいつまでも弱いままです。

2010/09/30

2010.10.16 第54回日本医真菌学会(東京)でセミナーを2つします。


なんと、ランチョンとイブニングと2つもセミナーで話をする機会をいただきました。そしてさらにその翌日(10.17)はICD講習会でまた真菌の話「抗真菌薬の適正使用~病院感染症への診療支援から考える」をします。

この3つに今の自分の院内感染症のひとつしての真菌感染症に対する考えや問題意識を集約してみたいと思っています。

2010/09/25

2010.9月が終わりかけてます。

院内での対策に手を取られていることもあり、9-11日の3連チャン後もなかなかです。

9.16は口腔外科にてミニレクチャー。
症例コンサルトの時に感染症・抗菌薬に興味をもってくれた若手医師の先生のおかげで実現しました。以前も書いた気がしますが感染症は簡単でも難しくもありません。簡単と思い込んでいる人にとって突如として難しい顔を見せる病気です。難しい症例はありますが、これらに正しく対処できるかどうかは、よくある感染症を普通に診断し、普通に治療する、このような基本問題とでもいうべき症例の経験をいかに積み重ねられているかで決まってきます。抗菌薬の使いやすさやCRP頼りの治療はこれをとばしてしまう作用、感染症を簡単なものと誤解させる作用があり、それが感染症診療レベルの向上の足かせになってしまっているというところはあるでしょうね。ともあれ、このような企画はこちらが開催して呼びかけても思うほど人が集まらないものでして、日常診療もこんな出張レクチャの機会が増えるように意識しながらやっていきたいです。

9.21は院内感染対策講習会。呼吸器内科の先生に主役で話してもらい、私は脇役で結核の院内感染対策について最後に5分だけ話しました。今年度の講習会は2つの講堂(一つはビデオ中継)で開催していますが、毎回立ち見のでるほどの聴衆に恵まれており、とてもうれしく思っています。いろいろな感染症について院内感染対策の話をすることがあるわけですが、スライド作ったり話したりしていると病原体の種類は違っても対策の本質は見事に一致しているなと感じ、こんなふうな普遍性を感じると感染症への視界がまた少し開けたような気がしてきます。こうした形で理解が深まると感染症はまた楽しく(というと語弊ありますが)なるので他のICTメンバーにもどんどん講習会の講師をやってもらいたいと言っているのですけどね。頼むとたいがい嫌がられてしまうのどうしたらいいんでしょうね。

来週9.28は看護師レベルアップ講習会です。毎年同じタイトルで「抗菌薬の適応と種類」。抗癌剤の適応なんていうタイトルの講義なんてないでしょうし、抗癌剤は種類がいろいろあってわからないという質問も聞かないですな。だからここでも抗菌薬がどうこうと言いつつ実はやっぱり診断!という話です。
この日はこれが終わったら新幹線飛び乗って東京へ。多剤耐性アシネトバクターの某大学病院でのアウトブレイクを受けた厚労省主催の大学病院の感染対策担当者に緊急招集のかかった会議です。眠たい話じゃなかったらいいですけど。


10月は7日に県立尼崎病院で講演会、14日に金沢医大にて感染症学の講義、16-17日は東京で医真菌学会(セミナー2つとICD講習会)、月末28-29日は千葉にて国立大学病院感染対策協議会。11月、12月は学会が2つずつ。シーズン到来って感じで、ひとつひとつ書いていく余裕もなさそうです。



2010/09/03

2010.8月のあれこれ、9月のあれこれ。

夏休み期間だったからというわけではないですが、しばらくぶりの更新です。

2010.8.21には第9回レジ感(メルパルク京都にて)。めずらしい症例だったという感想もあるでしょうが、というよりもこの症例の中にいくつかあったよくある部分でそのようなときにいかに堅実に診療していくかということを伝えたい症例でした。例によって楽しく司会できました。

8.26は大学での「熱病」講演会。一昨年は自分が当日に高熱を出してしまって、まさに熱病講演会やなと自嘲しながらなんとか話したんでした。自分が研修医の時にはこんなテーマの講演はなかったよな、と思いつつ、しかしそんな中でこの領域に入ってこのようなテーマの大切さに自分で気づくことができて、どっちがよかったのかわからないなと思いました。聴きに来てくれた皆さんが「感染症の診療ってそういうもんか」と思ってくれたらそれはそれで嬉しいですが、その上で自分で苦労しながら診療にあたっていくうちに「あっ!そういうことだったのか」と改めて感じてもらえたならもっと嬉しいなと秘かに願ってます。一枚大事な内容にミスがあり、終わった後に指摘してもらって気づきました。出席の全員にお詫びと訂正を配布してもらうことにしました。一回こういうことがあるとこれまでホントに大丈夫だったんだろうかと心配になりますね。ギリで準備してしまう習慣をなんとかして、今後こんなことの無いように気をつけたいです。

8.28は臨床微生物学会の教育セミナーの講師をやりました。うちの教授が担当理事してる関係で昨年に引き続きの開催でした。
まずはトップバッターで「感染症適正治療のためのコツ」というタイトルで講義。このタイトルは実は自分でつけたものではないのですが、結果的にはコツなどない、というありがちなオチの講演内容でした。いつものとおり、診断に対する貪欲さが治療を決めるということ、そのことが治療成功だけでなく「予防」の効果をももたらしてくれるということがポイントでした。
午後は症例検討グループディスカッションの司会・進行役をやりました。3時間の長丁場、2症例呈示して、症例毎に設定しておいた細菌検査と診断についての設問にグループで議論して発表してもらうという形式です。ディスカッションが十分にできるように昨年より症例数を減らしたのがよかったかなと思いました。こちらの想定していない意見や考えがでてきて、私も大いに勉強になりました。途中である参加者の意見に対し「それは全く考えてなかったです」と言ったらなぜかウケてしまって、発言した方に若干気まずそうな表情をされてしまいました(フォローはしたつもりですが)。でも、そういう意見が出てくることが出席者全員参加型の一番いいところだと思いますし、ホストの立場としてもそれが一番エキサイティングで楽しいところなんですよね。
終了後の懇親会では質問をたくさんいただきまして、正直言うと気が抜けつつあったところだったのですが、とても嬉しかったです。

8.29は東京国際フォーラムで化学療法学会の抗菌薬適正使用生涯教育セミナーの1コマの座長をしました。演者として話すのと違った独特の緊張感で、しかもずっとステージ上で聞いていたので恥ずかしかったです。時間が少しだけ残ったからということで私から演者の先生に振った質問はちょっと意図がわかりにくかったかもしれなかったかも、というのが反省点でした。


こんな感じで後半がギュっと詰まった8月でした。

9月はと言いますと、、、

9.4は大学時代のクラブの先輩が主催する「関西みみはな治療研究会」で大阪へ耳鼻咽喉科領域での感染症について、9.9は草津へ「滋賀呼吸器感染症研究会」に真菌感染症の話をしに行きます。その週は臨床検査医学会(東京)もありました。VREに関する一般演題発表(9.10)と座長(9.11)が各一つ。その間には大学で医工連携のセミナー(これは感染症とはあまり関係ありませんが)が入っており、金土で東京2往復。なんかあほらしけどしょうがないです。

ってな感じで9月は前半がギュっと詰まってますな。

2010/08/06

2010.7.31 院内感染対策講習会 (大阪、済生会野江病院) で話してきました。

タイトルは「感染予防策と抗菌薬適正使用の結びつき」でいろいろなところで何度も話した内容です。

出席してたのは看護師の方が多かったです。看護師こそ患者の変化に一番に気づく存在ですし、血液培養をとるのも看護師の役であることが(市中病院では)多いでしょうから、敗血症をみのがすまい、めんどくさがらずに血培を採ろう、という動機づけに少しでもなってくれたらと願うばかりです。


この病院には4月から週1回(同僚の医師と隔週交替で)非常勤感染症科医として勤務しています。

ここのICTには兼任ながら熱心に感染制御に取り組んでいる看護師がいてそれを数名の医師と看護師のメンバーが支えるような形です。

常勤の兼任メンバーに週1非常勤ながら専従の医師とが組み合わさるとことで有機的な変化が起こらないかな、などと考えながら仕事しています。ICTとして一緒に院内感染対策ラウンドをしながら血培陽性例を中心に感染症診療への介入を行っていますが、なにしろ週1回のみとなると、一例一例を綿密にフォローできませんし、感染対策についても大まかな助言以外はできません。総論は常勤兼任者がすすめていき、各論や"穴"の部分を非常勤専従者で埋める、というスタイルが一つの形になることを期待を持ちながら想像しています。


今のところまだコンサルトが少ないのが悩みのタネです。困ったときにそこにいない非常勤なのでコンサルトしようという気になりにくいだろなとも思いますが、それまで自力でなんとかしていた(なんとかなってると思っていた)わけですし、コンサルトして良かったという体験もないでしょうからやむを得ないと思います。血培を促進して網にかかる症例が増えること、血培陽性例への介入を通して、こりゃコンサルトした方がいいなと感じる機会が増えるようになることを狙っています。裏を返せば改善の余地がたくさん残っているということでもありますし、そこは私が感染症の業界に身を置こうと思ったきっかけでもあります。大学病院では逆にやりにくいようなことに取り組んで行けたら、そしてその成功体験を病院のメンバーと共有できたらと思っています。


2010/07/22

2010.8.26 大学でサンフォードガイドの講演会をやります。

昨年に引き続き、大学で主に研修医の先生を対象にSanford guide「熱病」の講演会をやれることになりました。

先日のセミナーで話せなかったところを交えながら、先月末の横浜での講演と同様、Sanford guideの使い方というより、使えるような診療の仕方、といった話をしたいと思います。

2010.7.18-19 第8回感染症の診断と治療セミナーを開催しました。

案内
多くの参加者に恵まれてとてもうれしかったです。
私としては今年からはかなりダイレクトに企画に関わりました。とはいえ、前回までと比べて、1コマの時間を少し短めにして、テーマを少し増やして、少しですが間に休憩をとって、というだけで、どれも少しずつなので全体的には変わり映えもなにもなかったかもしれませんけど。

しかし、やっぱり一日目に7つの講義を詰めこむ形はちょっとしんどいですね。私の出番は最初の方に終わったのであとは気楽に、と思っていたのですが、やはりいろいろ気になる点がでてきて落ち着きませんでした。


2日めは最後のケーススタディの司会。
長崎での学会のセミナーの時にも思いましたが、こういうのは司会をすることそのものというか、司会を担当することによって何とか聴衆にメッセージを残したいと強く願い、どういうふうに話すとそれできるのかと自問する、そんな機会をもつことが様々な意味でよい訓練になります。実際うまくできているのかはわからないですけど、少なくともそんな気持ちにはなれます。だから他のメンバーにやってもらいたい気持ちもありつつ、任せるのは心配な気持ちもあり、複雑な心境です。当の司会ではいつも思っていること、言っているようなことを、ここぞとばかりにぼんぼん口に出してアピールしました。説教臭かったかなとも思いましたけど。多くの聴衆の前で言えるのが心地よかった反面、後になってなんだかちょっと照れました。というようなことを終了直後に知り合いの先生に話したら「いつもどおりでしたよ」と返されますますはずかしなってしまいました。


来年も同じ3連休にやることになる予定です。休みがつぶれるのは構わないですし、自分の出番そのものは限られているのですが、今年もいろいろな意味で精神的にはけっこうぐったりきました。来年は気分的にもうちょっと余裕もって臨みたいなとは思います。って、いつも始まる前まではそのつもりなんですけどね。

2010/07/05

2010.7.1 院内感染対策の講演会(長浜赤十字病院)でお話ししてきました。

講演タイトルは「感染症診療の基本的アプローチから見た抗菌薬の適正使用法」でした。

こちらの病院は実は以前に2回もお邪魔しており、今回3回目です。これまでに感染対策と抗菌薬の結びつき、カンジダ症の診療についてお話ししましたので、今回はもう少し感染症診療の具体的なところに踏み込んだ話を、と求められました。以前に聴いていただいた人・病院から再度依頼を受けるというのは初めてのところに行くのとまた違った嬉しさがあります。

先の投稿で適正使用という言葉には…などと書いたわりにもろタイトルに入れてしまってますね。これは言い訳をするとそれをリクエストされるからです。なので、または、なのに、講演の中では「適正使用」という言葉自体はほとんど出てきません。

今月18-19日の感染症の診断と治療セミナーの内容とかぶる部分が多いですが、いつもの感染制御メインの話から感染症診療にウエイトを大いに移動させて、診断の大切さについて話をしたという感じです。診断に対する細心の注意、最大限の努力こそが決め手であるという、いつもの主張に全く代わりはありません。言われ尽くしてるような今更のようなこと、やってるつもりで実はあまりやってないようなのことの大切さを認識してもらうことをとくに強調した、というかほぼそれだけの話でした。まあしかし、どんな聞き飽きたようなことでもそれは大切だから、そしてその割に実践が不十分なので聞き飽きる程言い古されているわけですから、そのことを改めて違う文脈や展開の中で説明できてるとしたらそれでよかったのかなとも思います。私はいわゆる診療科の医師とは少し違った角度から感染症を捉えて仕事をしていますのでこのような役回りにちょうどいいのかもしれないとはよく思います。まあ、外部の人に指摘されるのが刺激になって良いという以上の理由は無いのかもしれませんが。

前日の横浜のと2日連続だったからかなんだか疲れちゃいました。体力的にどうこういう程のハードスケジュールでもなかったのですが、移動ってそれなりに疲れちゃうものなんでしょうね。私は幸いにも電車通勤の経験がほとんどないので余計にそうなのかもしれません。それに、毎回始まる前はそこそこ緊張もしますし、講演後は爽快さもありますがやっぱりぐったりくるような脱力感も感じますから。

いつのまにか7月、今年も後半に突入ですね。

2010/06/29

2010.6.24 感染管理ブロック別研修会 (三重) で話してきました。

梅雨の合間の天気のいい日。津まで行ってきました。

国立大学病院感染対策協議会の近畿・北陸・東海ブロックの研修会。抗菌薬適正使用に向けた取り組み、というテーマで、医師の立場からということでご依頼いただきましたので。

正直言うと抗菌薬適正使用という言葉にはいつも違和感がつきまといます。適正診療といったキャッチフレーズはないですし(当たり前すぎて)、すべて医療に患者を救う以外の目的があるかと思うからです。確かに感染症・抗菌薬にはやや特殊な事情がありますが、結局は患者を救うということ全てを研ぎ澄まして追求すること、それだけです。

目の前の患者を全力で救うのが医師の役目だ、そのために少しでもいいと思えることなら、根拠があろうがなかろうが可能性がわずかでもあるのならそうしよう、それが目の前の患者に最善を尽くすということだ、という主張にはそれなりの道理があります。聞こえのよいわかりやすい主張ではあるのですが、そこにはそれなりの道理しかなく、自らのおかれた現状の客観的な把握、患者を救うことへの本当の追求、医療を担うプロフェッショナルな意識はごく表面的にしか感じられません。感染症を専門としない人なら理解もできますが、専門家を名乗る人がこのような主張にカタルシスを得ているのを目にするのは少々暗い気持ちになります。専門家と云われている自分の話していることがどのような影響を及ぼすのかという点へのイマジネーションがいまひとつなことがさらに気持ちを暗くします。

ま、実際は、私が今の部門に入ってからこの感染制御部がどのように歩んできたかということを振り返ってみて、そして今後もこの方向で進んでいくのがいいだろうということを再認識した、適正使用はその結果ついてくるものじゃないか、というようなことを元気よく(?)主張して話を終えました。

そのセッションが終わって感じたことは、このような話は今まさに始動してあれこれ工夫している、というような実践報告の方が多くの大学の担当者を(演者自身をも)奮起させるんじゃないか、ということでした。私自身、人前で話しをするようになってモチベーションは随分変わってきたと思いますから。これってちょっとエラそうな感想なんでしょうか。

帰りの新幹線はなんと痛恨の乗り過ごし。新大阪止まりでほんとよかったです。きびだんご食べ損ないましたけど。

2010/06/22

2010.6.12 内科学会近畿地方会で座長を、6.19細菌タイピング研究会で発表をしました。

6.12は大学で内科学会近畿地方会の感染症2のセッションの座長をしてきました。このセッションは興味深い症例報告が続きました。

MSMの人のSTDの例はとても興味深い症例で、自分達の部署で昼のセミナーで輪読しているNew England Journal of MedicineのMGH case conferenceにて最近取り上げられていた症例と偶然にも全く同じ診断でした。鑑別診断にこれが挙がるかどうかは何よりイマジネーションが必要なんだろうなと思う反面、当然の知識としてもっておくことこそが必要ということかとも思いました。イマジネーションのない人だと知識が身につきにくいといったところがオチとして妥当なラインかもしれませんね。

前のセッション(感染症1)から聞いていたのですが、仕事柄からか抗菌薬の使い方がとても気になり、口を挟まざるを得ない気持ちになって質問として指摘してしまったような演題もありました。でも演者の方はよく判っていない表情で、正しい診断を意識せずに治療しているために良くなったケースでも何がどうよかったから改善したのかを理解できていないようでした。言ってよかったのか焼け石に水だったのか結局わからず、もやもやが残ってしまいました。

私の座長は35分くらい遅れて始まりました。係の人に「30分以上遅れていますので御配慮の程お願いします」とのメモ紙をもらい座長席に付きましたが、まったくもって何を配慮したらいいのやらって感じです。口演6分、質疑応答2分で7演題。1題あたり1分短く終わっても7分しか早く終わりません。口演を5分30秒より早く終わる演者はまずいません(むしろ半数以上が6分を越える)し、1分短縮も現実的にはムリ。結局巻きながら予定時間通りに終わるのが精一杯でした。係の人のメモも「これ以上遅らせないでください」という意味なんでしょうね。そりゃわかってるけど。でもこれくらい遅れるのは必然ですわな。プログラムは1題6+2の8分で終わり、演題間はもちろんセッション間にも1分の時間もとってないんだから。乗り換え時間ない旅程立ててるようなものです。今はPCでのプレゼンばかりになり、枚数制限がありません。それも口演時間がいたずらに長くなりやすくなる傾向に拍車をかけているのかもしれません。

もし私がプログラムを立てられる立場になったなら、.
1. 症例報告的な演題のセッションは最短3分/題まで短縮する.
2. その一方、質疑応答は最低3分はとる.
3. 質問者はあらかじめマイクの前に出てくるように促す.
4. セッション間に5分程度は余裕をつくる.
という形にしたいと思います。なんか政権公約みたいですけど。

もしかしたら1が抵抗をもたれるところかもしれませんが、私は症例カンファにしろ口演にしろ、伝えたいことを伝えるという目的を達成するために、30分と言われたら30分、5分なら5分、1分なら1分で話せるように優先順位やポイントを整理しておこう、と人にも言いますし自分でもそう思っています。自分の講演はどうやねんと指摘されると冷や汗ですが、少なくとも次が控えているときは最低限のノルマと思って、そこはなんとか守っています。


6.19は大阪で第2回細菌タイピング研究会。前日の東京出張から新幹線で直接会場ホテルへ向かいました。

私は京都のVREについて話しました。結核病学会の感想でも書きましたが、最近、タイピングの真の意義はどこにあるのかという根源的な点が考えれば考えるほど解らなくなります。接触感染、院内感染予防策の不十分さによって拡がるという20年は前から証明されていることをあの手この手で再証明しているだけではないかと思うからです。想定外の感染経路が発覚するかもしれない、その時にその証明手段になりうるというのはわかります。でもそのような経路を仮定するのはタイピングからか?と思いますし、そのようなおそらく稀なときのために常時からタイピングをすべきなのかも疑問に思います。我々は感染経路も対策手段ももうすでに知っているからです。タイピングの結果を見てやっぱり院内伝播だったか、接触感染だったか、器材消毒不徹底だったか、といった想定内の現象を目の当たりにし、あたかも"腑に落ちる"こと自体が目的になっていないかと不思議に感じます。必要なことは如何にすればその対策のレベルが向上するかであり、そこにタイピングが不可欠であるという真の理由がどこにあるのかわからずにあれこれ考えを巡らせています。知っている対策手段を厳重にとってみてもなお感染伝播が収まらない時に想定外の経路を仮定しなければならない、そのような場合にそれを検証するための手段にタイピングがある、しかしそれ以上にはないのではないかということが今の私の考えです。仮定そのものがタイピング結果から生まれる期待はゼロではないにせよ極めて低いでしょうし。

というようなことを講演をしていた会社のプロマネの方につたない英語で議論をふっかけたまではよかったのですが、真意を十分に伝えられずに大いに苦労してしまいました。先方はタイピングが有用であった事例を2,3挙げて説得しようとしてきましたが、ひとつでもあるから有用というのはロジカルではありませんね。しかし米国では科学的とは思えないほどの合理主義に基づいた方針でタイピングが必要な状況になっているようではあります。オランダでは国家としての対策強化を追求した探索研究として実施しているようでもあります。これらは私の疑問に思っていることの答えではありませんが、しかし、米国でよく行われるように、手をこまねいて進まないよりは思い切って割り切って突き進んでみて問題点を改めて探すというやり方も確かにありかもしれないなと、プロカルシトニンの時に感じたようなことをふと思いました。また、"腑に落ちる"こと自体が実は対策にとってとても大きなことかもしれないという気もすることはします。そこまで割り切れればまた話は別です。しかし、目的がそこにあるなら本当にそれが効果的であるかをやはり科学的に検証するのが真っ当な方向性だろうと思っています。

2010/06/13

2010.6.10 君津木更津地区 感染症セミナーで話してきました。

タイトル、内容ともに先月の釧路での講演とほぼ同じものにしました。このような時は話し方が少しなめらかになっているような気がします。

私の講演は概ね、診断、治療、予防の間の密接な結びつき合い(これが感染症ならではだと思います)を理解してもらうように意識した展開で講演をつくっています。そして、それらを改善、向上させるには自らの今の状況を把握しなければならない、それが数値化する意義、サーベイランスの目的であるということをバックグラウンドに流しているようなつもりで話をしています。

現場にはいろいろな問題が潜んでいますが、どのような種類の問題であっても、これらをいい方に向けるにはまず、可能な限りその問題の本質を掘り下げて考え、漠然とした問題をより具体的かつ特異的な問題に置き換えていく作業が必要です。これが具体的な行動目標の設定につながります。診療上その根源は診断の不足にあると感じるところが大きく、そのため講演の中で血液培養の重要性を結果として強調することになっています。血培をとるようにすることだけで解決できる問題は大きくはないのですが、そのことが診断への追求度の指標になることは間違いないと思うからです。

そしてどの病院に行ってもいろいろな問題に取り組むICT担当の方の使命感はひしひしと感じることができます。その力をひとつでもふたつでも小さなものでもいい、何か具体的な指標がいい方向に「変わる」という実感にもっていってもらいたい、その変化が現場の意識までをも変えていく原動力になるのだろうと思います。そして次にお会いしたときにそのようなお話を伺うことができればといつも願っています。

講演終了後は海ほたるを渡って品川のホテルに泊まりました。始発で出なければならなかったので早起きすると、窓からの東京の朝焼けはきれいですがすがしく、ほんのちょっとだけですがまだ人気のないホテルの周囲を歩きました。大都会でも人の少ない時と場所の雰囲気は好きなんですよね。

2010/06/08

第58回日本化学療法学会総会(長崎)でセミナーとシンポジウムをやってきました。

6.2は抗菌薬適正使用生涯教育セミナーのケーススタディのコメンテータをしました。ウイルス感染症がテーマというこのセミナーシリーズでは初の試みで、講師の先生方はどのレベルに合わせて話をしたものか、かなり苦慮された様子で、自分も聴きながら確かに難しいところだなと思いました。自分自身のケーススタディのコメントも含め、苦慮したものの結果として虻蜂取らずになってしまっていたような気がしました。企画会議のとき、各回のセミナーのレベルをBASICとADVANCEDに分けようということになり、今回はADVANCEDの設定でしたので、最初から開き直っておもいきりADVANCEDな内容にしてしまってもよかったのかもしれません。このあたりは難しいところなんだと感じてもらうのも生涯教育という大きな意味では大切なことだと思いますし。参加者は立場、職場が異なるわけですから誰もが同じレベルに到達することはそもそも無理な話です(例えば私でいえば、お恥ずかしながらHIVの細かいことはよくわかりませんし)。こういうケースがある、その時は自分のとこではここまでにしておいて、このような施設の医師に相談ないし紹介するべきなのだというようなことを知るのも大切だと思います。来月会議がありますので議論になるでしょうが、恐る恐るながら楽しみでもあります。

しかし、レジ感でもそうですけど、このような会で司会やコメンテータをするのは自分にとってすごくいい勉強になります。ポイントはどこにあるかを立場上前のめりで聴きながら考えていると、ケースの背景から感じられる普遍的な教訓が目の前に現れてくる、そんな感覚にとてもエキサイトする、というようなことがあるからです。実はこのセミナーのケーススタディは3回目なのですが、なんだか自分ばっかしやってていいのかなと少し申し訳ない気分にもなったりしてます。

6.4は「抗MRSA薬のTDMの標準化に向けて」というシンポジウムで、バンコマイシンのTDM標準化について話しました。気持ちとしては同薬にかぎったことではなく、ある薬にとって最も効果的な使用法は何か、そしてそれを標準法とすることがいかに大切かという普遍的な命題に対して、バンコマイシンを例にとって話したという感じです。標準があって応用(個別化)がある訳なので、まず土台と1階をしっかり建てよう、そうでないといつまでも2階はできないだろう、というところです。同薬はもっともデータの蓄積のある薬剤なのですが、それでもまだ各論的にはよくわからないところがたくさんあるものだと思いました。使用経験もTDM実績も豊富な薬なんですから、後ろ向き症例調査をやろうとすれば大きなNの研究ができるはずです。そう発言もしましたが、是非とも進めていきたいと思います。

また、感染症に限らず、診断と治療は密接な関係にあります。治療が先行することの多い感染症では、治療から診断へと向かう状況もたくさんあるわけで、そこで治療に不備があると診断がさらに遅れる危険が高まります。バンコマイシンでいうと、血中濃度を意識せずに治療が有効・無効と考えてもミスにつながりますし、目標濃度に到達したにもかかわらず効果がないということの意味に気づけなければ次の一手をミスったり遅れたりする危険性がでてきます。というようなことも話の中で触れることができてよかったです。このような認識はβラクタムを1日2回投与でどこが悪いの?と本気で考えている人ばかりだと理解されにくかったでしょうね。いろいろなことは互いにリンクしながら動いていくものだなと、そしてそのような動きのある時期にこの領域に関わることができて幸運だなと思っています。

今回、中日に時間があったのでほんのすこしだけですが観光しました。天気がよかったのもあって新緑と青い空と海がまばゆく、気持ちよいひとときを過ごすことができました。平日の昼間の人の少ない時にそういうところに行けるってのは実に贅沢ですな。

2010/05/30

2010.5.26 外勤先の病院で行った研修医向けのセミナー、そして、2010.6.30 の横浜の"熱病"講演会の案内、他。

4月から隔週で非常勤感染症科医として働いている大阪の病院で、研修医向けのセミナーの第1回を行いました。「感染症診療の基本」というタイトルで、感染症の患者に対してなにをどう考え、チェックしていけば適切に診療をすすめられるのかという内容を簡潔にまとめて話してみました。

2010.6.30は横浜へSanford guideの活用法について講演に行ってきます。昨年も7月にお邪魔した勉強会です。先日案内が届きました(一部を切り取り)。

私もSanford guideは研修医の頃持っていましたが、ほぼ開かないままでした。なぜそうなったか、今ではよくわかります。それを振り返って、Sanford guideを使うため、使えるためにはどういったことが必要か、という話です。

抗菌薬は感染症科医でないと使えないような怖い薬ではありませんが、そのことと、感染症診療が難しいか簡単かは全く別の問題です。感染症診療は特別難しくはありませんが、特別簡単でもありません。他の診療科とおなじくらいだと思います。感染症は簡単なはず、だから簡単に治療の選べるSanford guideがあるとめっちゃ便利なはず!と思っていたら大間違い、というわけです。くりかえしますが、感染症は簡単ではありません。が、特別難しくもありません。だから、他の診療ができている医師にとって、感染症だけはわからんということは、感染症をよほど軽くみていないかぎり、ないはずだと思います。

この大阪の病院でのセミナー後「重症度が大事だというのはよくわかりました。じゃ、先生はsevere sepsisの時はどの抗菌薬を投与しますか?」と質問され、さすがにちょっとあっけにとられてしまいました。これって「癌だとしたらどの抗癌剤を投与しますか?」っていう質問とおなじなので。このこととSanford guideを持っていても使えないことの背景はぴったりおなじものだと思います。そのへんを意識しながらお話しできたら、と考えています。

優秀な医師ってどういうことだろうかと考えることがあります。子供のようにひたむきに、何とかの一つ覚えのように丁寧に、いつでも問診、診察、検査のひとつひとつを、要領よく省略しようと思わずにこなしていく、そのことの大切さを理解してそうありつづけることのできる、そんな医師がそうなれるのだろうと思います。

同じ内容のSanford guide "熱病"の講演会は昨年に引き続き、大学でも夏に行う予定です。めだった変更点は今年の版にはないようです。でもそれは特殊な抗菌薬や標準治療を変えるほどの研究成果が毎年でるわけではないですから当たり前ですね。とにかくせっかく持っているSanford guideをもっと使ってほしい、というか、使えるような診療ができるようになってほしいと思っています。売ってるの買うと結構いい値しますしね。

2010/05/25

2010.5.21 結核病学会(京都)に参加してきました。

結核の分子疫学の口演セッションの座長をしてきました。学会では時間が押してしまうことが多いですが、それなりに質疑も出たわりに時間もぴったりで終了でき、ほっとしました。

内容はというと、遺伝子タイピングの演題が4題続くセッションでした。結核はヒト=ヒト感染しか起こらないこと、感染しても発症するのは1割程度に過ぎないこと、発症までの潜伏期間は数ヶ月~数十年と幅が大きいこと、がわかっています。タイピングからは、どのような研究でも限られた数の株しか検討できないことから受ける制限のもとに、これらから想定される事象が実際に起こっているということが確認された、という以上の知見はどこにもないというのが正直な印象です。

多数株を含むないし他地域にまたがるクラスターの存在はもともと当然想定されることです。たとえると、インフルエンザで学級閉鎖が相次ぐほど多数がやられた学校が京都にあったことと家族が複数やられた家庭が京都と東京にあったことが発見された、と言っているのと同じことだからです。それが細菌学的要因によるものか社会的要因によるものかはわからないが菌の特性を示している可能性があるから今後も続けていきたい、という結びもよく考えると理解しがたいところです。学級閉鎖多発にいたったインフルエンザ株は変異によって感染性が高くなった株だと言えるのでしょうか?可能性はあるでしょうが、普通の感覚ではそうとは言えない、あるいは株のタイピングからはそれはわからないでしょうね。解析株数が増えていくことで結果がどう質的に変わると予測しているのか、人の行き交う現代社会で社会的要因はどこまで掘り下げることができて、どこまですることにその労に見合うだけの効果があるか、という本質的な議論を少しでもしたかったのですが、それができなかったのは少し残念でした。会場外で演者のお一人と突っ込んだ議論ができたのはよかったですが。

結核に限らず様々な病原体で遺伝子タイピングがなされています。タイピングで今までは推定だけで見えなかったことが具体的に見えるようになるということは知的にエキサイティングではあるでしょうが、我々医療者はタイピングの結果でどのようにその感染症への対峙の仕方が変わるのか、そう変えることがその感染症への医療を本当によくするものなのかをもっと追求し、その上でタイピングの意義がどこにあるのかを問い直していかねばならないのだと思います。

2010/05/17

2010.5.14 釧路ICTセミナーで話してきました。あと、2010.6月の予定など。

案内
今回いつもより強調した点は、数値化することの意義、です。自分の講演を振り返って、特徴の一つは自分たちの集計した値を重視し、それを根拠にして(もちろんすべてではありませんが)話を作っているということだと思ったことがいくつかある理由のひとつです。値そのものもそうですが、自分たちの値が欧米や国内の他の病院と比べてどうなのか、有意差があるのかないのかなどということはポイントでも何でもなく、すべての実践を自分たちの現状を自ら把握するところからスタートさせる、という点こそが普遍的に重要なポイントだと思います。

何をどうやって集計するのか?という質問を受けましたが、私が話しているもの(話に使えると思うもの)はすべて日常の実践のなかで必要に感じて集計をとったものばかりです。自分が思うような方向に何か物事を改善させたい時、必要なのは改善させたいという熱意だけではありません。変えようとしているものが自分自身ではないからです。なぜ変えなければならないのか、どこがどう変えなければならないような現状なのかを、変わってもらいたい人に納得してもらえなければしかたありません。さらに、自分のやってることがうまく伝わって変わっていっているのか、それともやってることはムダなのかを自分で知らなければなりません。思ったように変わったことを単に喜びたいという気持ちも正直ありますが、でも主な目的はあと二つあって、その一つは、このやり方がうまくいくようだと同じ問題をかかえる人に伝えられるかどうかを確かめたいということ。もう一つは、もしうまくいっていなければやり方を変えるかその問題を一時放っておくかしなければならないということです。やりたいこと、やらなければならないことはいつでもできることよりたくさんあります。一方、限られた貴重な時間をつぎ込む労力の割に成果のなさそうなことに少なくとも同じやり方のまま費やすことはできません。医療に関わっている以上、ほとんどの実践は時間も含めて常に自分自身のためのものではないからです。

そんなことを最後に補足的に説明できたことで、全体としてのメッセージという「画像」を「自動レベル調整」できたようなすっきりした気分を感じました。

釧路は最高気温10℃!と聞いてビビってましたが、2日間とも比較的穏やかで気持ちよかったです。帰りにほんの少しですが時間が空いたので、こちらのICTの方に教えていただいた空港そばの丹頂鶴自然公園に立ち寄りました。生まれたばかりの雛鳥のケージに群がるエゴイズム丸出しのカメラマン達と、人少ない他のケージにいた鶴の面白い動きをじっくりと観察することができました。まあ、どちらかと言うと、こちらの人にとってはなんてことないらしい道東の遅い春の光景、とくに独特な山や木々の色合いがとっても新鮮で印象深く残ってます。

5月はまだ半分ですが、あと講演等の予定は外勤先での研修医向け講習がひとつとレジ感のコメンテータを残すのみになりました。6月は、学会関係のセミナー二つとシンポジウム一つがあって長崎と札幌へ、他には、細菌遺伝子タイピングの研究会(大阪)と国立大学病院感染対策協議会のブロック研修(津)での口演が各一つ、個人の講演としては10日に千葉県は木更津へ。あと、保健学科の講義もどっかに入ってましたな。あと、横浜にサンフォードガイドの話をしに行くかも。こう列挙すると今から疲れた気分になっちゃいますが、まあ、このようないろいろな機会をいただけるのはありがたいことです。

2010/05/12

2010.5.11 院内感染対策講習会でちょいと話しました。

今年度初回の院内感染対策講習会でした。
ボスがたくさん話したあとの付録みたいなかたちで、テーマは「当院における感染制御部の感染症診療への介入について」でした。新規入職者や新たに担当になった方もいるだろうから、半分は顔見せの意味ということで。


以前のスイッチのスライドを今回はチーズのに変えました。
どっちがわかりやすいんでしょうね。自分では判りません。些細なことの積み重ねが大きな効果を生むというポジディブな意味はこっちのスライドの方が感じやすいかもしれない気がしますが、単に使って話す自分が勝手にそんなノリになってるだけかもしれないです。


会場は立ち見がでるほどの盛況でうれしい限りでした。ありがたいことです。案内に私が話すことまで載っていたらもっと大喜びだったでしょうけど。

2010/04/26

2010.5.14 釧路ICTセミナーの案内が届きました。

行きも帰りも一日がかりになってしまいますが、釧路の地は初めてですのでどんなところなのかとても楽しみです。根釧台地って地理で暗記しましたけど、何が有名なんでしたっけ。パイロットファーム?

地理といえばシラス台地とか関東ローム層とか扇状地とかいろいろありましたね。

2010.4月は大学関連の講義をいくつかこなしました。

2010.4.15は大学の検査医学の講義でした。目的を意識して検査を行い、疾患・病態をイメージしてそれに沿って解釈すること、が強調したいポイントでした。診断ということを突き詰めると診察・検査という小窓からその奥に潜む病態を覗き込むことであり、イマジネーションが足りないと部分(単なる一現象)にしか気づけません。そのイマジネーションの源はそれまで基礎医学系の講義でさんざん学んできた解剖学、生化学、生理学、病理学等々にあり、それらをイマジネーション能力に形作り直すということが、臨床医学のイントロダクションとして必要なことなんでしょう。そんなことが講義をする立場になってわかってくるというのも悲しい現実かなと思いますが。


21日には京都府内の医療系の大学へ。医療安全管理学の講義シリーズの中で職業感染予防対策についての講義をしてきました。
内容は、針刺し事故等の血液曝露による感染の防止についてが中心でした。HBワクチンの存在は大きいものですが、安全装置、針の廃棄、教育、報告、集計、24時間検査体制、などの対策のひとつひとつはおそらくわずかな差しか生じないものと思います。しかし、スライドの準備をしながら、そして当日実際に話しながら、ここらもやはりスイスチーズだとしみじみ思いました。これまでほとんど話したことのない内容でしたのでスムーズに話せるか少し心配だったのですが、病院のシステムとして感染症から守るというコンセプトが普段の感染症診療に関するスタンスと一致していたからだと思いますが、自分としてはかなり気持ちが入っていくのを感じながら話をすることができ、意外な満足感を感じながら終えることができました。

私はかつて自分で作った「誰が押したかわからないスイッチ」というスライドを使って、現場には些細な原因がたくさん転がっていて誰もがそれをついつい押してしまっている、そのどれかが黒ひげ危機一髪のように、耐性菌感染をONしてしまうものだ、と話していました。
これはこれで幾人かから好評ももらい気に入ってもいるスライドなのですが、ちょっと違うとらえ方が必要かもと思うようになってきました。これだと、どれかわからないけどトドメのひとつの存在が仮定としてあることになります。軽重が多少あるかもしれない、その軽重は誰にもわからない、けれども全てが原因だと考えることができなければチーズの穴を小さくしていくための真の意識づけができないんじゃないか、と思い直しているからです。

翌22日は院内のある診療科のモーニングセミナーで感染症診療の基本アプローチについて話をしました。
どの診療科の感染症であっても診療科を問わない感染症と考え方はもちろん一緒で、診断を追求すること、これが治療を必要十分に行うこと、そして耐性菌感染症の予防にもなること、それが診断を追求しつつ開始する経験的治療の成功率を高く保つこととイコールであること。これまでも特定の診療科の医師を主な対象とする講演を何度となく行ってきましたが、感染症において診療科の特異性って一体何なんでしょう。もちろん探せばたくさんありますが、大事なポイントに、補わなければならない現状の不足点に、診療科の区別はやはりないと思います。


その夕方にはドイツから呼吸器学会に合わせて来日しているDr. Meisnerによるプロカルシトニンの講演会があり、私は幸運にも会の前に小一時間直接話をする機会に恵まれました。私は救急・集中医学系の領域での活用にとくに興味があり、彼自身集中治療領域の敗血症の研究者だったというDr. Meisnerも同意見でした。バイオマーカーにはいろいろな限界があるが、それを咀嚼して理解した上で、それでもそれをガイドとして抗菌薬の投与や中止判断を下していく、そのようなプラクティスが必要な領域だということだろうと思います。それだけの覚悟が現場にあるかな、という心配はぬぐいきれませんが、プロカルシトニンを用いて何かをいい方向に変えていく、そんな目的を共有することがまず第一で、それは自分自身の課題でもあるかと思いました。


学会から始まった4月。そのころ満開だった桜の木がすっかり新緑にかわり、街には花水木が開きつつあります。まだ終わっていませんが、身辺の変化もあって駆け足で過ぎて行く日々に追いつこうと必死になってるような感覚です。

2010/04/14

2010.5月は14日に釧路に行きます。29日には第8回レジ感があります。

5月14日は釧路ICTセミナーに行きます。
タイトルは「感染制御部の介入による感染症診療の適正化〜抗菌薬適正使用と院内感染予防策の結びつき〜」です。長すぎですかね。


5月29日は第8回レジデントのための感染症症例検討カンファランス(京都駅前のメルパルク京都)です。今回はコメンテータのみです。


どの地でもどんな立場でも感染症に真剣に対峙している方との出会いをいつも楽しみにしています。

2010/04/10

2010.4.7 病院のカンファレンスで感染制御部について話ししました。

テーマは当院における感染制御部の介入による感染症診療の適正化です。
感染症は診療科を問わずに発症するため、病院全体の診療レベル向上を図る必要があります。耐性菌アウトブレイクの話の中でスイスチーズモデルを引き合いに出しましたが、院内感染、医療関連感染も同じモデルで捉えることが可能だと思います。血液培養を端折ってしまった、抗菌薬の投与量が微妙に少なかった、ガーゼ交換を素手でやっちゃった、カテーテル抜去が1日遅れた、緑膿菌感染が否定的なのに抗緑膿菌薬を続けてしまった、呼吸回数が増えてたのにSpO2だけみて重症を見逃した、、、これらが一枚一枚のチーズの穴にあたります。このような、単独でのインパクトが認識されにくい不足のひとつひとつをどうやって埋めていくのかというのが難しい課題です。教育・啓蒙だけでなく、病院のシステムとしてこれらの穴を一枚一枚塞いでいく、そのシステムが感染制御部であろうと考えています。

主な対象が必ずしも感染症に関係していない検査部の技師さんたちだったので言葉を費やしながら話していたら時間が足らなくなり最後の方でダッシュしてしまいました。申し訳ないです。院外では何度もしゃべった内容なのですが、逆に院内ではここまでじっくり話したことはかったかもしれません。今年は院内の講習会を充実させていく予定なので全体講習会の場で少しずつでも話すことができればと思っています。


2010/04/07

2010.4.5-6 第84回日本感染症学会総会(京都)に行ってきました。

行っただけか?と言われると恐縮です。
今回は同僚の発表するワークショップに出席したのと、当たっていたポスターセッションの座長をやりました。あとは学会関係の会議もありましたので。

ESBL産生菌感染症に対する抗菌薬治療については座長の先生からも是非とも臨床研究を、という声が上がりとてもうれしく感じました。これについてはいくつかの病院の先生方と何らかの形で多施設共同研究をやろうという考えで一致しており、(その場で発言もしましたが)まさに立案中です。

新薬治験以外で多施設臨床研究のほとんどなされない感染症領域ですが、いきなり背伸びもできませんし、またしなくてもいいから、自分達の施設に眠っているほんの数例の症例情報であれ、多くの施設で集めようと。集まればなんらかモノが言える報告になるはず。私は大学院生時代にそのような体験をすることができ、とても知的に興奮しながら研究をすすめることができました。あのときの快感を私自身、または新たな仲間に感じさせられればと思っています。研究の学術的なクオリティに問題がのこるとの声が上がるかもしれませんが、研究の価値って第一にはテーマの独特さですよね。それにこのような後ろ向き症例収集型の研究すらできなかったらそれ以上のどんな多施設研究もできないんじゃないかと思いますし。

このような話題で会場で会ったいろんな人達と意見を交換し、共感しあうことができました。これも、無形ではありますが学会に参加した大きな成果だったなと思いました。

会場は職場から近いので車で行き来しました。近くでの学会ってのは便利は便利ですがあっけなくて、寂しいっちゃ寂しかったです。まあ、あの辺りは好きなエリアではあるのですが。

2010/04/02

2010.7月の連休に「感染症の診断と治療セミナー」をやります。

毎年夏に行っている、研修医、若手医師を対象とした感染症のセミナーで、今年で第8回目を迎えます。1.5日間の、コンパクトなレクチャーシリーズ+最後のケーススタディ。おかげさまで好評をいただいており、手前味噌ながら感染症入門として集中的に知識を整理するのにとってもいい機会だと思います。

私は最初に感染症診療の基本的な考え方、アプローチの仕方についてのレクチャーと、最後のケーススタディの司会をします。

是非とも研修医仲間で誘い合って参加してほしいなと心から願ってます。

2010/03/23

2010.3.19 京滋薬剤耐性菌サーベイランス研究会で少し話しました。

この会は2002年からやっている、京滋地区の大きめの病院の細菌検査室での耐性菌検出状況を確認していこうという会で、感染症治療におけるいわゆるローカルファクターの病院版のひとつ上のレベルとしての地域版を知ろうというものです。私は世話人をしており、2010年度以降のサーベイランスの方針と新規項目についてちょこっと話しました。出だしプロジェクタの調子がわるく少し焦りました。

今日の最善は明日の最善ではない(誰かの言葉)

医療において一般的には創薬や技術の進歩によってそうゆうことになるわけですが、感染症においてはエコロジーの変化がそうさせます。地球の温度がコンマ何度上がったからエネルギー政策をこうしなければならない、と言うのと同じレベルで、AmpC型耐性の大腸菌がどれだけいるかを知らなければならない、でも知るだけでは何にもならなくて、それによって何が最善かを見直し、かつ実践し続けていかなければならない。しんどいことですが、そんな今日の最善がまたエコロジーを変化させ、その変化は創薬と同じくらいにより多くの患者の救命をもたらすことができる、そんな明日の最善を目指して。感染症ってそんな病気ですからね。

会場でのお弁当はマジックカットで留められていました。私は材料など印字してるシールをちぎって留めましたが、食べたあとふたを留めにくいのはマジックカットのわかりやすい残念な点ですね。登場してもうしばらく経ってるわけなので、ここは弁当屋というよりマジックカット製造会社がそこまで気を配ってほしいです。単なる真新しさでも製造者の都合のためでもなく、利用者の便利を追求してるのだってことが伝わらなかったらせっかくの技術がもったいないですし。

2010/03/19

2010.3.18 神戸感染症フォーラムで話してきました。

タイトルは「深在性カンジダ症の制御にむけて~最善を尽くすとは何か~」
カンジダ症は大学院生時代にとり組んだ、私にとって原点ともいえる感慨深いテーマです。このテーマで話しするのはすこし久しぶりだったので軽く緊張しました。

難しいのは、カンジダ症をはじめとする真菌感染症は細菌感染症に対する診療をうまく行えていないとうまく対処できないということです。これはいつも強調していることですが、真菌感染症の中で深在性カンジダ症は非特異的な危険因子をもつ患者群に発症するのでその意識が不足すると(そういうことが多いので)診断・治療が遅れがちです。そういう意味で真菌感染症の診療は細菌感染症診療の応用編みたいなところがあると思います。

最善を尽くすとは、というサブタイトルの意味したかったところはダイレクトにはあまり説明できなかったかもしれません。
経過が思わしくないとき、予後の悪い病態に対峙するとき医師は往々にして自分の診断能を棚に上げて薬剤のせい、耐性菌のせい、患者の"免疫能"のせいにしがちですが、実際はそういうときこそ診断を追求することが最優先の命題であるということがその意味するところのひとつです。

もう一つは、そのような意識の不足を補うためには診療医に対してストレートに教育・啓蒙することにとどまらず、それにプラスして、それをサポートするような体制をつくるという方策が有効だろうということ。これは自分の立場あるいは自分達の病院での成果からとくに強くそう思うのかもしれません。そして感染症診療一般に言えることですが、様々な不足のある現実を理解すれば、それをいろいろな立場の医療者が限られた自分の範疇の中であっても少しずつ補っていくことはできるだろう、そしてその総和として「病院」として感染症診療のレベルを上げていく、それを目指すべきだろうと。スポーツでもなんでもそうでしょうけど、ここぞというときに力を発揮できるかは、普段普通にできるはずの普通のことの確実性を高く保てているかに依存すると思うからです。
そういう意味で、カンジダの話をしながらも実はカンジダとは必ずしも関係のないこのようなメッセージを背景に流したくて、それがサブタイトルの問いかけるところ、というわけでした。

なつかしのポートアイラインドで、始まるまでは気持ちも高ぶっていたのですが、よく言うとそれゆえに、内実は単にこのところの寝不足がたたって、話が終わった後はねむねむでうとうとでした。いけませんね。

2010/03/12

2010.3.11 院内感染対策講習会(大阪、住友病院)にて話してきました。

タイトルは「院内感染予防策と抗菌薬適正使用の結びつき〜不都合な真実を見る目〜」

内容は、いつも通りです。って書いてしまうとこれから先もずっとそうなってしまいますが。それでも話をした後に残る思いは毎回少しずつ違います。

今回終了後に思ったこと。
講演中にも口にしましたが、楽天の野村前監督の言葉に「(勝ちに不思議の勝ちあり、)負けに不思議の負けなし」というのがあるそうです。これは医療安全の院内講演会に来られた外部講師の方が引用されていた言葉で、とても印象深く残っていますし、感染症やっていてもいつも思うことと同じだなと感じ入りました。どうしてかわからないまま勝つことはある、しかし、いつもどうして勝っているかわからないと余計にどうして負けるかもわからないままだろうと思います。

感染症診療においていうとこれはまさに「診断」のことでしょう。診断Aへの治療が診断Bへの治療を内包することはよくありますから、診断が間違っていたのに治ったということもまたよくあることです。例えば腎機能正常の成人にセフェム1g1日2回で治っている症例などはそういうこと。そのような場合、どうして勝っているのかわからずに勝っているにすぎないにもかかわらず、それで正しいと思ってしまうのが人情なのでしょう。なぜうまくいったのかわかっていないからうまくいかなかった場合にどうしてかがわからない。だからセフェム1g1日2回の何が悪い?っていうような感覚になってしまう。セフェム1g1日2回で治る患者はもっと違う治療(内服抗菌薬、もしかしたら抗菌薬なし[こちらがむしろありがち])でも治るんでしょうね。そう思うから私はこういう用量・用法に対する違和感を持ち続けたいですし、多くの人に持っていてほしいなと思います。

あれは野村前監督の言葉じゃなくって江戸時代の剣術家松浦静山の言葉だよ、っていう突っ込みに対しては「そいつ自身が他の誰かの言葉をパクってないってなぜ言える」と返したいです。突っ込めるのは以前から松浦静山をよく知ってた人だけであって、こういうのは有名にしたもん勝ちですよね。

2010/03/07

2010.3.6 岩手県病院薬剤師会学術講演会(盛岡)で話してきました。

(案内)
タイトルは「MRSA感染症の診療におけるピットフォール」

MRSA感染症を題材にして、やはり正しい診断の大切さについて。病院内感染症の特徴と黄色ブドウ球菌の臨床的な特性を少しでも知れば診断のポイントがわかる、そしてそのポイントの押さえ方を知れば正しい診断ができる、それが最適な治療につながるということ。薬剤をそれが最も大きな効果を持つように使うことが正しい診断に対してもいかに重要なインパクトを与えるか、ということも強調したつもりです。薬剤をそういうふうに使うことはそれくらい大事なことで、でもそれがそのように理解されにくい原因が正しく診断されていないことでもあり、こういうところはループになっちゃっているんだろうと思います。

究極的には、医師はその能力と精力を診断を突き詰めることにめいっぱい注いで治療を選択する、薬剤師は選択された薬剤をもっとも有効に働かせることにめいっぱい能力と精力を注ぐ、ということだろうと。そのプロセスの中または先に必然的に形成されるベストパートナーシップ、それが患者にとってのベストプラクティスってことなんでしょうね。

帰りに司会の先生におすすめの盛岡冷麺のお店に連れて行ってもらいました。ふつうの韓国冷麺じゃん、でしたけど、とてもおいしかったです。

2010/03/05

2010.3.5 第37回集中治療医学会学術集会(広島)にシンポジストとして参加してきました。

集中治療医学会は初めての参加でした。
テーマは「チームで取り組む感染症コントロール」
私は5名の演者のトップで「集中治療室における多剤耐性菌の問題点」というタイトルで話しました。

耐性菌感染の増加が必然である集中治療の領域において、患者予後の向上を真に目指すのであれば、今までの当たり前を本当にそれがベストかと問い直し、もしかしたら少し修正しなければならないかもしれない、もう既にそんな時期が来ているのではないか、というやや重たい感じの話になりました。時間が限られる中まくしたので言いたいことが伝わったか若干心配ではあります。

しかし、いつも思うことは感染症診療・感染制御(この二つは別物と考える向きもありますが、私の頭の中では同一化しています)には改善の余地が大いに残っているということです。ギリギリのところで、我々の医療はもっともっとたくさんの患者を助けることができるはずだ、と楽観的に考えています。

あともう一つ付け加えるならば、我々はプロとしてリアリズムに徹しなければならない、ということです。それがどんなにキツいことでもそのままの現実を厳しくとらえなければその先には行けないと思っています。徹底したリアリズムの中では人は自ずと活路を見いだせるものだという、これまた楽観主義なんですけど。

広島はコート不要の暖かさで面食らいました。3月上旬ってこんなでしたっけ。それとも瀬戸内気候だからですかな。

2010/02/26

2010.2.26 近畿中央胸部疾患センター(堺)で開催された院内感染対策研修会で話してきました。

この研修会は国立病院機構の近畿ブロック医療技術研修で、縁あって数年前から毎年講師として、1日研修の中の1コマをいただいてお話しています。

タイトルは「院内感染対策と抗菌薬の適正使用」です。(いつもながら)診断への貪欲さと予防するという意識の重大さ、そして、診断・治療・予防がどう結びついているかについて、自分の病院での経験に基づいてお話ししました。簡単なこと、些細なことのわずかな不足がそれと気づかれないままに積み重なって感染症患者の予後を悪化させているという、見ようとしなければ見えにくい真実、しかし逆にいうと改善させる余地がたくさん残されているということでもある、ということが(改めて書くとたいそうな感じですが)伝えたいメッセージです。感染症は伝染するといういやな病気ですが、だからこそ予防する手段があるんですよね。

毎年同じような話ばかりで、、、と司会の先生に言い訳したところ、この手の話は何度も繰り返し聞いて意識づけることが大切だし何度も聞いてやっとわかってくるところもあるから来年も同じのをよろしく、とありがたいお言葉をいただきました。

帰りは寝過ごさないようにと天王寺からすこし贅沢して京都終着のはるかにしたところ、案の定、車内で特急券買った次の瞬間は京都でした。しかしはるかはホームから改札まで遠すぎるのが難点ですな。

2010/02/19

2010.3月には盛岡と神戸へ話しに行きます。

2010.3.6岩手県病院薬剤師会学術講演会で話してきます。

タイトルは「MRSA感染症の診療におけるピットフォール」です。
内容はやはり、ベーシックなポイントを十分に追求することの重要性と必要性です。できているつもりで実はできていないってことは実に多いですから。黄色ブドウ球菌は奥の深い菌なのでとくにです。

岩手県には3年前にも3月に久慈までカンジダ症の話をしに行きました。盛岡は医師になって3-4年目だったか臨床呼吸機能講習会で行ったことがあります。私の出身の大分県にもリアス式海岸があるので勝手に親近感もってます。三陸海岸にくらべたら子分もいいとこですけど。


もうひとつは、2010.3.18神戸感染症フォーラム、タイトルは「深在性カンジダ症の制御にむけて」です。

会場の神戸ポートピアホテルは以前勤務していた病院、住んでいたマンションのすぐそばです。あの頃はあの頃でしんどく仕事していましたが、今に比べればまあ随分気楽でしたね。

2010.2.18 庄内病棟薬剤師学術講演会(山形県酒田市)で話してきました。


案内
実を言うとお話しする内容はいつも同じです。診断を追求せずに治療が行われること、選択した薬剤が不十分な投与であることの危うさ、そしてそれらが顧みられていない状況を一歩ずつでも改善させることの重要性と必要性。

聴衆がどんな方であっても大事なことが変わる訳じゃありませんので私としては同じで当たり前です。ただ、今回は薬剤師の会でしたので、とくに用法・用量を改善させること(単なる正常化ですが)を自らの使命というか義務として貪欲に追求してほしいという点を強調はしました。そしてそのことが診断にも間接的にリンクするということも。

と言うのも、その薬剤が本当にその真の最大効果を発揮できているかということこそが他ならぬ薬剤部にとっての至上命題だと思うからです。そういう意味で薬剤部が、その本分中の本分であることに誰も文句の付けようのない、薬剤の「使われ方」に対して本気で真剣になっていることが伝わっていけば、医師ももう少し真剣に本当にその薬剤が必要かを考えるのではないか、その方が少なくとも、薬剤師が何で口出してくるの?っていう空気をまとう医師達に対して薬剤の選択に微妙なちゃちゃを入れ続けることよりは互いに前進できるのではないかと思っています。


来月は岩手(岩手県病院薬剤師会学術講演会)に行きます。東北となんかご縁があるんでしょうかね。

2010/02/15

2010.2.13 第2回JPIC学術講演会(神戸)にディスカッサントとして参加してきました。

私は「アウトブレイクから学ぶ」のセッションのメンバーでした。

はじめに2つの事例を当該病院の先生にご紹介いただきましたが、いずれの事例でもその中ででてくるひとつひとつの事柄に重みというか奥深い意味があるということを、過去から今に至るまでの自分とその周りの経験から深く感じながら聴きました。

アウトブレイクでは考えられる様々な要因への対策を速やかに、同時に進めなければなりません。それを十分わかっているつもりでいながら、一方で「どうしてこんなことになってしまったんだ」と苦悩する当事者達には、「どこか(の一点)に原因があったんじゃないのか」という本能的な疑問が沸いてくるものだと思います。でも本質はそうではないということをスイスチーズモデルは意味しています。どれか特定の一枚の穴が大きかったことが原因と思い込むことは心の平静を取り戻すには有効かもしれませんが、対策を見誤る(あるいは再発する)危険がとても大きい。ある特定の医療処置が危険因子の一つとして挙げられるとそれがスケープゴートになってしまうのはマスコミの悪影響の一つでしょう。素人はそう思ってもしかたないですが、プロがそれくらいの視野しか持ってなかったらちょっとアウトですね。

例えば「そうか、器具の洗浄・管理方法がわるかったんだ」と思うのは簡単だし、こころの平静も得やすいです。しかし、その器具をよく使う医療者(の手指衛生)に問題はあったのかもしれない。そもそも、だからこそその器具にその菌が最初に付くことになったのかもしれない。さらにいうとある処置が有意だったといってもそれのみが唯一の有意因子というケース自体まれですし(少ない因子のみの解析だったらわかりませんが)、統計解析で有意でなかった=無関係だったということでもありません。

しかし、ここは実際には学術的にはなかなか難しい問題です。アウトブレイクが起こった時に「ピンポイントの対策のみで他は何もしない」という選択肢は現実的にあり得ないからです。アウトブレイクの終息のために行ったことはおそらくすべて有効だった(一枚一枚のチーズの穴を塞いだ)のでしょう。思い切って行った特異的な一つが含まれていたら英断を下した当事者はその一つが特別有効だったと思いたくなるのは自然な心理ですが、本当にそう思い込んでしまってはやはりプロ的視野を持っているとは思えません。いろいろな対策を包括的に進めることができたということ自体が、チームにとって、病院にとって最も大きなことです。

とはいえ、人前で話すときには目を引くようなことを言わざるを得ないというプラクティカルな事情があるのもよくわかりますけどね。しかし、なぜ、どんなきっかけで包括的に対応できたのか、何が対策の障壁だったかというようなことを(通常わかっていてできないことなので)、泥臭い人間関係みたいなところまで含めて掘り下げて話した方が普遍性があるかなと、次、自分の話す機会があったら考えてみようかなと思ってます。

まったくの余談ですが、アウトブレイクの終息というときに、「収束」が使われてるところを目にしますが、まったく合ってないと思います。収束ってのはばらばらだったものがひとつにまとまるっていう意味ですからね。確かに、ある意味ばらばらだったものがまとまるわけですけど、それはアウトブレイクが、ではないですな。


場所は、ホテル北野プラザ六甲荘。ゆっくり一泊したくなるお上品なホテルでした。来年第3回は同じ時期に名古屋駅のマリオットで、だそうです。

2010/02/09

2010.2.18 庄内病棟薬剤師学術講演会で話してきます。

タイトルは「抗菌薬適正使用を目指す診療支援のあり方〜医師と薬剤師の役割〜」です。
山形県酒田市。もちろん初めてです。雪景色が好きで楽しみなんですが、そういうと住んでいる方に申し訳ないのでこっそりそう思うだけにしています。

2010/02/08

2010.2.6 第94回京都実地医家の会例会でお話ししてきました。

今シーズンめずらしく雪模様の日でした。

タイトルは「呼吸器感染症に対する診療アプローチと適正使用の考え方」でした。
外来診療で上気道炎に対して診断=最適治療が何か、を追求しているか、という(偉そうですが)問いかけが主旨です。


固定給をいただいている勤務医と日々の診療がダイレクトに収入に反映する開業医との間では感覚に多少ギャップが生じるところもあるかもしれませんが、患者にとってのベストを尽くすという使命感は同じでしょうから、私の話す内容も伝わったのではないかと思います。
忙しい外来で全ての上気道炎患者に対して厳しく診断を追求するのは無理があるかもしれませんが、いわゆるかぜ症候群に対して抗菌薬を"念のため"に投与することが、いきなりゼロにならなくても、今の1/2でも1/3にでも少なくなればと願うばかりです。

最初は「ほんとは抗菌薬要らないんじゃないのかなあ・・・」と思いながらしぶしぶ処方していた医師も、患者の希望や一抹の不安に押されているうちに一度処方がルーチン化してしまうと、意識しないうちにメンタルな防御反応によって徐々に「抗菌薬投与した方が患者の反応がいい」「肺炎の予防になっているはずだ」というふうに思い込んでしまう、自己矛盾した行動に普通の人は耐え続けられないので自分を納得させられるようにそう言い聞かせているうちに本当にそう信じてしまうようになってしまったというようなことはあると思います。
ということ、前から思っていましたが、質問に答えているうちに、流れで口に出してしまいました。

次にレジ感が迫っているため自分の講演が終わるやいなや会場を後にしなければならなかったのが残念でした。レジ感もエキサイティングでよかったですけど。

2010/02/06

2010.2.5 環境感染学会総会の教育セミナーで話してきました。

テーマは地域における感染対策。
私は「京都におけるVRE感染対策」というタイトルで、我々が取り組んできたこと、その成果について話しました。
パニクったりすぐに諦めたりせずに正しく状況を把握することで、何が最善か(何が理想かではなく)を考えることの大事さ、そしてそれが最善かどうかはやっぱり正しく状況を把握できるかにかかっている、というサイクルについて。
感染対策のキモ中のキモがサーベイランスにある、というのもそういうところからですよね。私はこの領域に入ってまもなくの頃は、サーベイばっかやっててもそれ自体目的になるようなもんじゃないししょーがないじゃん、って少しさめた目でサーベイランスを見ていました。すみません。っていうか恥ずかしいです。