2010/04/26

2010.5.14 釧路ICTセミナーの案内が届きました。

行きも帰りも一日がかりになってしまいますが、釧路の地は初めてですのでどんなところなのかとても楽しみです。根釧台地って地理で暗記しましたけど、何が有名なんでしたっけ。パイロットファーム?

地理といえばシラス台地とか関東ローム層とか扇状地とかいろいろありましたね。

2010.4月は大学関連の講義をいくつかこなしました。

2010.4.15は大学の検査医学の講義でした。目的を意識して検査を行い、疾患・病態をイメージしてそれに沿って解釈すること、が強調したいポイントでした。診断ということを突き詰めると診察・検査という小窓からその奥に潜む病態を覗き込むことであり、イマジネーションが足りないと部分(単なる一現象)にしか気づけません。そのイマジネーションの源はそれまで基礎医学系の講義でさんざん学んできた解剖学、生化学、生理学、病理学等々にあり、それらをイマジネーション能力に形作り直すということが、臨床医学のイントロダクションとして必要なことなんでしょう。そんなことが講義をする立場になってわかってくるというのも悲しい現実かなと思いますが。


21日には京都府内の医療系の大学へ。医療安全管理学の講義シリーズの中で職業感染予防対策についての講義をしてきました。
内容は、針刺し事故等の血液曝露による感染の防止についてが中心でした。HBワクチンの存在は大きいものですが、安全装置、針の廃棄、教育、報告、集計、24時間検査体制、などの対策のひとつひとつはおそらくわずかな差しか生じないものと思います。しかし、スライドの準備をしながら、そして当日実際に話しながら、ここらもやはりスイスチーズだとしみじみ思いました。これまでほとんど話したことのない内容でしたのでスムーズに話せるか少し心配だったのですが、病院のシステムとして感染症から守るというコンセプトが普段の感染症診療に関するスタンスと一致していたからだと思いますが、自分としてはかなり気持ちが入っていくのを感じながら話をすることができ、意外な満足感を感じながら終えることができました。

私はかつて自分で作った「誰が押したかわからないスイッチ」というスライドを使って、現場には些細な原因がたくさん転がっていて誰もがそれをついつい押してしまっている、そのどれかが黒ひげ危機一髪のように、耐性菌感染をONしてしまうものだ、と話していました。
これはこれで幾人かから好評ももらい気に入ってもいるスライドなのですが、ちょっと違うとらえ方が必要かもと思うようになってきました。これだと、どれかわからないけどトドメのひとつの存在が仮定としてあることになります。軽重が多少あるかもしれない、その軽重は誰にもわからない、けれども全てが原因だと考えることができなければチーズの穴を小さくしていくための真の意識づけができないんじゃないか、と思い直しているからです。

翌22日は院内のある診療科のモーニングセミナーで感染症診療の基本アプローチについて話をしました。
どの診療科の感染症であっても診療科を問わない感染症と考え方はもちろん一緒で、診断を追求すること、これが治療を必要十分に行うこと、そして耐性菌感染症の予防にもなること、それが診断を追求しつつ開始する経験的治療の成功率を高く保つこととイコールであること。これまでも特定の診療科の医師を主な対象とする講演を何度となく行ってきましたが、感染症において診療科の特異性って一体何なんでしょう。もちろん探せばたくさんありますが、大事なポイントに、補わなければならない現状の不足点に、診療科の区別はやはりないと思います。


その夕方にはドイツから呼吸器学会に合わせて来日しているDr. Meisnerによるプロカルシトニンの講演会があり、私は幸運にも会の前に小一時間直接話をする機会に恵まれました。私は救急・集中医学系の領域での活用にとくに興味があり、彼自身集中治療領域の敗血症の研究者だったというDr. Meisnerも同意見でした。バイオマーカーにはいろいろな限界があるが、それを咀嚼して理解した上で、それでもそれをガイドとして抗菌薬の投与や中止判断を下していく、そのようなプラクティスが必要な領域だということだろうと思います。それだけの覚悟が現場にあるかな、という心配はぬぐいきれませんが、プロカルシトニンを用いて何かをいい方向に変えていく、そんな目的を共有することがまず第一で、それは自分自身の課題でもあるかと思いました。


学会から始まった4月。そのころ満開だった桜の木がすっかり新緑にかわり、街には花水木が開きつつあります。まだ終わっていませんが、身辺の変化もあって駆け足で過ぎて行く日々に追いつこうと必死になってるような感覚です。

2010/04/14

2010.5月は14日に釧路に行きます。29日には第8回レジ感があります。

5月14日は釧路ICTセミナーに行きます。
タイトルは「感染制御部の介入による感染症診療の適正化〜抗菌薬適正使用と院内感染予防策の結びつき〜」です。長すぎですかね。


5月29日は第8回レジデントのための感染症症例検討カンファランス(京都駅前のメルパルク京都)です。今回はコメンテータのみです。


どの地でもどんな立場でも感染症に真剣に対峙している方との出会いをいつも楽しみにしています。

2010/04/10

2010.4.7 病院のカンファレンスで感染制御部について話ししました。

テーマは当院における感染制御部の介入による感染症診療の適正化です。
感染症は診療科を問わずに発症するため、病院全体の診療レベル向上を図る必要があります。耐性菌アウトブレイクの話の中でスイスチーズモデルを引き合いに出しましたが、院内感染、医療関連感染も同じモデルで捉えることが可能だと思います。血液培養を端折ってしまった、抗菌薬の投与量が微妙に少なかった、ガーゼ交換を素手でやっちゃった、カテーテル抜去が1日遅れた、緑膿菌感染が否定的なのに抗緑膿菌薬を続けてしまった、呼吸回数が増えてたのにSpO2だけみて重症を見逃した、、、これらが一枚一枚のチーズの穴にあたります。このような、単独でのインパクトが認識されにくい不足のひとつひとつをどうやって埋めていくのかというのが難しい課題です。教育・啓蒙だけでなく、病院のシステムとしてこれらの穴を一枚一枚塞いでいく、そのシステムが感染制御部であろうと考えています。

主な対象が必ずしも感染症に関係していない検査部の技師さんたちだったので言葉を費やしながら話していたら時間が足らなくなり最後の方でダッシュしてしまいました。申し訳ないです。院外では何度もしゃべった内容なのですが、逆に院内ではここまでじっくり話したことはかったかもしれません。今年は院内の講習会を充実させていく予定なので全体講習会の場で少しずつでも話すことができればと思っています。


2010/04/07

2010.4.5-6 第84回日本感染症学会総会(京都)に行ってきました。

行っただけか?と言われると恐縮です。
今回は同僚の発表するワークショップに出席したのと、当たっていたポスターセッションの座長をやりました。あとは学会関係の会議もありましたので。

ESBL産生菌感染症に対する抗菌薬治療については座長の先生からも是非とも臨床研究を、という声が上がりとてもうれしく感じました。これについてはいくつかの病院の先生方と何らかの形で多施設共同研究をやろうという考えで一致しており、(その場で発言もしましたが)まさに立案中です。

新薬治験以外で多施設臨床研究のほとんどなされない感染症領域ですが、いきなり背伸びもできませんし、またしなくてもいいから、自分達の施設に眠っているほんの数例の症例情報であれ、多くの施設で集めようと。集まればなんらかモノが言える報告になるはず。私は大学院生時代にそのような体験をすることができ、とても知的に興奮しながら研究をすすめることができました。あのときの快感を私自身、または新たな仲間に感じさせられればと思っています。研究の学術的なクオリティに問題がのこるとの声が上がるかもしれませんが、研究の価値って第一にはテーマの独特さですよね。それにこのような後ろ向き症例収集型の研究すらできなかったらそれ以上のどんな多施設研究もできないんじゃないかと思いますし。

このような話題で会場で会ったいろんな人達と意見を交換し、共感しあうことができました。これも、無形ではありますが学会に参加した大きな成果だったなと思いました。

会場は職場から近いので車で行き来しました。近くでの学会ってのは便利は便利ですがあっけなくて、寂しいっちゃ寂しかったです。まあ、あの辺りは好きなエリアではあるのですが。

2010/04/02

2010.7月の連休に「感染症の診断と治療セミナー」をやります。

毎年夏に行っている、研修医、若手医師を対象とした感染症のセミナーで、今年で第8回目を迎えます。1.5日間の、コンパクトなレクチャーシリーズ+最後のケーススタディ。おかげさまで好評をいただいており、手前味噌ながら感染症入門として集中的に知識を整理するのにとってもいい機会だと思います。

私は最初に感染症診療の基本的な考え方、アプローチの仕方についてのレクチャーと、最後のケーススタディの司会をします。

是非とも研修医仲間で誘い合って参加してほしいなと心から願ってます。