2011/03/30

今年度の終わり。

まもなく2010年度が終わります。毎年この時期は年度という言葉に少し緊張します。というのも今年度と言ったり書いたりするとき「今」年度(2010年度)なのか、「今年(2011年)」度なのか、どっちやねんと思ってしまうからです。こっちはよくても聞き手がどう捉えているかわからないですし。

それはともかく、年度が変わる前に書き損ねていたことを以下に。

2.25近畿中央胸部疾患センターの講習会で抗菌薬適正使用と予防策の結びつきについて話してきました。昨年も書いたとおり、御世話になった先生からの依頼で毎年行っているものです。数年前研修医の時ローテイトしてきていた現在某病院で耳鼻科医をしている医師が来年度からICTに入ることになったといって聴きに来てくれていて軽く感激しました。

3.1大学の臨床実習入門コースのトピック講義で「院内感染予防対策」の話。標準予防策と針刺し血液曝露事故の予防について話しました。90分でしたが、これくらいの時間話できるとやっと事の重大さを感じさせることができるかなと思いました。ここからやつぎばやに実習→詳説→…を繰り返せると効果的なのでしょうね。
同じ内容については、4.1には新採用研修医向けのオリエンテーションでも話しますが、わずか15分です。しかし、昨年までのスライドを手直ししたので時間の割りにしっかり印象づけたいと思っています。

3.3某社の社内講演会で「感染症診療の現状と展望〜製薬企業 感染症専門MR・感染症事業部へのメッセージ〜」というタイトルでしゃべってきました。このような依頼はこれまでも数回引き受けたことがあります。
足の引っ張り合いみたいな泥仕合はもうたくさん。タンパク結合率やら組織移行性やらがどうこういう前に臨床効果がどうなのか、本当にその薬が活きる診断とはどんなものなのか、といった情報を発信してほしい。すべてではないにせよ、多くの薬剤にはその薬剤が最適な診断というものがあるわけなので、その薬がただ売れることではなく本当に適した診断の下で使用されることが感染症の診療のレベルを上げることにつながるだろう。レベルが上がればその薬剤の最も適した診断に至る例も増えるだろうし、そうして診療のレベルを上げることが医療の一翼を担う企業としての使命だろう。といった話でした。

3.18は京滋薬剤耐性菌サーベイランス研究会にてちょっぴり登壇。せっかく労力を払って集積している情報なのでそのクオリティを保とうということを会そのものと終了後の世話人会で話しました。

で、今年度を振り返るとポジションが上がったこともあって、やっぱりずっと追いまくられていたような一年でした。

先週末近所を散歩していたら、外は冷たかったですが土曜の荒れ模様で霞んだ空気がどっか飛んで行って、つぼみが膨らんだ木々の中早咲きの桜が澄んだ空の下で嬉しそうに咲いていました。またこの季節が巡ってきたんだなとしみじみ。新年度はもう少し余裕を持ってのびのびと歩んで行きたいものです。



2011/03/13

2011.3.13 糖尿病と感染症について市民講座で話してきました。

京都医療センターの開催する第25回 DM京都 専門家による糖尿病実践講座 糖尿病と感染症 で講演してきました。タイトルは「糖尿病と感染症〜いまからできること、すべきこと〜」です。大学の同級生から頼まれたもので、気軽にOKしたはいいもののよく考えたら、学生や医療者向けの講演は何度も経験ありますが、市民講座は初めてでした。

どんな内容にしたらわかってもらいやすくて、しかも自分の伝えたいメッセージが伝わるだろうかとずいぶん考えました。こんな時は教科書的な内容をかみ砕いて構成したらいいのかな、と逃げの気持ちになったりもしました。その方が手間はかかっても準備は気楽かも、という気持ちです。でもそれは私としてはポリシーに反することなので、やっぱり思いとどまりました。確固たるポリシーというほどのものでもなんでもありませんが、自分が本当に伝えたいことを伝えたいという気持ちが講演仕事を引き受けるときの最大のモチベーションだからです。おかげでホストの先生から「オリジナリティーのある内容で気持ちが伝わった」と嬉しい言葉をいただきました。

わかりやすい内容と言葉で、でも伝えたかったというか講演後に聴衆の心に残したかったのは「自分の身体は自分で守る」という意思です。終了後聴いてくれた患者の一人から「食事療法、運動療法ももっと頑張ろうという気になった」と御礼を言ってもらいました。食事や運動の話など少しもしていないのにです。こんな瞬間があると苦労して作ったことが一気に報われる気がします。

最大の反省点は時間の超過。最近は比較的調子よかったのですが、今日はやっちまいました。スライド枚数は普段の2/3くらいに抑えたのですが、枚数を抑えた油断と平易な言葉でゆっくり話そうという気持ちとが相まってしまいました。ここも成長の過程、次への課題ですな。

週末仕事がこのところ立て続いていましたが、今週末の土日2連チャンでやっと少し空きます。中断していた歯医者に行かないと。そうこうしているうちに春めいてくるんでしょうね。


2011/03/12

2011.3.12 第41回日本嫌気性菌感染症研究会(西宮)に行ってきました。

今日は朝から兵庫医科大学まで第41回日本嫌気性菌感染症研究会に行ってきました。平成記念会館というきれいな建物でした。

お役目は一般演題の発表ひとつと、教育講演の司会です。

一般演題は腹部・泌尿生殖器の放線菌症についての検討でした。マンデルという感染症の有名な教科書があるのですが、その中で "the most misdiagnosed disease"とか "no disease which is so often missed by experienced clinicians" とか書かれてあって、初めて読んだときから引っかかっているのがこの放線菌症です。ここ数年を思い出して、放線菌症を疑った症例は何例もありますが、本当にそうだった例は非常に少ないです。1つ典型例が記憶にあるのですが、私の担当ではなかったこともありますが、鑑別に挙がっていながらうまくその疑いを活かせなかった例でした。頻度の低さ、抗菌薬がよく効いてしまう点、肉芽腫性病変のため炎症反応に乏しい点など診断しにくい特徴がそろっているのが、とくに腹部・泌尿生殖器系の放線菌症だと思うので、気を引き締めるためにもと思って前々から気になっていたこのテーマにしたのでした。

で、実際やってみるとやっぱりいい勉強になったなぁと。学会でしゃべる以上に勉強になるものないですな。

ここ数年の該当例を拾い上げて簡単にレビューしただけですが、新たな発見がいくつもありました。それだけでなく、上に書いた例も患者はよくなったとはいえもっとうまく直せたはずだと反省もしました。

こんな機会はもっともっとみんなにやってもらいたいなと思っているんですけどね。えらそうなこと書きつつ、今回演題出したのは縁のある先生に頼まれたからで、ちょっと強引に絞り出したところがあるのですが。

我ながらなんですけど、ある意味ではやらされたとも言えるようなことであってもそこから多くを得られるかがその人の技量ですわな。自分のやりたいことをやり続けていくことはもちろん大事ですが、そこからちょっと道草してみると、それは道草ではなくて新たなルートだったり、そのことがめぐり巡ってやりたいことにつながってきたりします。そんな経験をすると、やらされ仕事のもつ意味がまた変わってきます。とはいえ、こんなのがワーカホリックゆうんでしょうか。

プログラム最後は教育講演の司会でした。司会ってのは経験が乏しく不慣れなので、演者の先生の紹介やディスカッションの進め方、最後の締めなど、いまいちたどたどしくて不完全燃焼感を感じるのですが、今日はフロアからの発言がたくさん出たこともあり、今までになくうまくいったと思います。成長の過程ですな。

そして今日は、心身ともに無事仕事ができたこと、いつも以上に感謝の気持ちでいっぱいです。

明日もがんばります。