2010/10/29

2010.11.1 神奈川県感染制御セミナー (横浜) に話しにいきます。

タイトルになっているプロジェクトは私も世話人に入っているもので、「カンジダ症の診療レベルアップを図ろう」というキャンペーンです。

前にも書いたかもしれませんが自分達の活動によって何かが変わっていくということを感じることができたなら、オーバーに言えば世界が変わるような感じがすると思います。自分自身それを感じることができたのはとても幸運なことだったと、つまり運に恵まれたところがあると思っていますし、このことが今もこうして仕事を嬉々として続けられている理由の一つとも思っています。

さて、カンジダ症の診療レベルアップについてですが、カンジダ血流感染に対して極く単純な「抗真菌薬の量と期間を最低限守ろう」「CVカテーテルは抜去(別部位入れ替え)しよう」という2点を院内に広く啓発することでカンジダ症の予後が良くなるか、ということをなんらかの形で検証することを考えています。数年前、日本公共広告機構のCMで「"知っている"を"している"に」というフレーズがありましたが、これは本当に秀逸作ですね。このプロジェクトもキャンペーンといってこれまでのように知識を教え込むことばかりでは医療のエンドユーザーまで届くとは限りません。少しでも"している"になってもらえるように、その契機・口実を作りたいというのが私のこのプロジェクトに期待している思いです。

会場は夜景のきれいないいとこっぽいですが、平日なのでまた翌朝始発で京都に戻らにゃなりませんし、泊まるのはきっといつもの新横浜の駅前ホテルになるでしょうな。まあ、ここもシンプルでいいホテルですけど。

2010/10/21

2010.10.17 ICD講習会で話をしてきました。

第54回日本医真菌学会で「真菌症を中心とした院内感染制御の実際」というテーマでICD講習会が開催され、1番目の演者として話す機会をいただきました。

タイトルは「抗真菌薬の適正使用〜病院感染症への診療支援から考える」です。

適正使用というのは好きな言葉ではないと随分前にも書きましたが、それでも今でも結構しつこくタイトルに入れています。リクエストされるからという側面もありますが、最近はそれだけじゃないです。しゃべりだすとこで適正ってなんなんだろう…って違和感を持ったり、逆にイントロであえて触れたりすることで本当に主張したいことを自分の中で再確認してペースがつかめてくるような気がするからです。

今回もまた診断の重要性が最も主張したいポイントでした。
真菌感染症の診療は細菌感染症という土台の上に初めて成り立つものだと思います。つまり、細菌感染症の診療がうまくできていないと真菌感染症は容易に見逃したり治療不足に陥ったりします。真菌症は入院患者の中でも重症化しやすいリスク因子をもつ患者で発症するので診療の善し悪しが予後に与える影響が宿主因子に紛れてわかりにくいものです。治療も一筋縄ではいかないことがしばしばです。だからこそ私達ができることは下した診断と治療を"守る"ことだと思います。これらをはっきりさせておけばうまくいっているのかおかしいのかは気づきやすくなるのに、あいまいな診断であいまいな治療をすると、うまくいってもいかかなくても何が理由なのかわからないからです。治療が不足してしまう最大要因が診断のあいまいさです。確定診断がなかなかつかないから、というのは現実ではありますが言い訳にはなりません。臨床診断だろうが暫定診断だろうが自分の下した診断をその根拠とともに明確にしておくことが十分な治療を行うという"覚悟"につながります。一例一例の治療の成否にはたしかに宿主因子の影響の大きい真菌感染症ですが、だからこそそこがしっかりしていなければ自分の行っている診療の妥当性、不足のある可能性に気づくことはできないでしょう。

気脈の通じ合う先生と話をしていると必ずといっていいほど「結局は"診断"につきる」というところに話しが向かいます。薬の使い方がわからない、という相談を受けることがよくありますが、使い方は診断で決まるものだと説明すると不満そうな反応がされることが多くて、残念な気持ちになります。いかに診断をおろそかに薬を選んでいるかの反映なのでしょうね。

研修医には「ごくごく単純な感染症をしっかりと診断しベタに治療する」という経験を積むことが大事だとよく言って指導しています。この基本問題が解けないと応用問題である複雑な細菌感染症も真菌感染症も解けないだろうと思っています。

来月は感染症中日本(京都)と化療西日本(大分)で2つICD講習会やります。ひとつは今回とほぼ同じ内容の真菌症の話ともうひとつは人工呼吸器関連肺炎サーベイランスの話です。

2010/10/07

2010.11.12-13 に日本感染症学会中日本地方会が京都で開催され、シンポジウムを担当します。

第53回日本感染症学会中日本地方会京都リサーチパークで開催されます。


私は2日め13日(土)のシンポジウム Emerging Infectious Diseasesの企画と司会を担当することになりました。


以下、抄録(司会の言葉)から抜粋:
「新しく出現したウイルス、それまで遭遇していなかった細菌と我々が遭遇し、それによって感染症の臨床が大きく変化するような機会はこれから先だけでなく今この時点でもすぐそこにあります。本シンポジウムではEmerging infectious diseases(新興感染症)を聞きなじみのない新しい病原体による感染症の出現ととらえるのではなく、身近に迫りつつある脅威としての多剤耐性菌を中心に4つの病原体をとりあげることとしました。多剤耐性アシネトバクター、VRE、多剤耐性結核、新型インフルエンザに先陣を切って対応されている先生方に、実際に現場で対処された自らの体験にもとづく反省点や問題点を発表いただき、どう対処すべき(だった)か、 前もってどのような準備や体制が必要(だった)かにポイントをおいてディスカッションをしたいと思います。」

Emerging Infectious Diseasesといっても稀な感染症を意識するだけでなく、というよりむしろ、しのびよる脅威に対して現実を冷静に認識し、いかに準備・対応をすべきかに迫りたいと思っており、取り上げた4つの感染症に関するディスカッションから普遍的なポイントが導かれればと考えておる次第です。

2010/10/02

2010.9.29 外勤先の病院の院内トピック研修で多剤耐性菌の話をしました。

4月から週1日、隔週で行っている大阪の済生会野江病院。7月末に院内感染対策講習会で講演していますが、今回は多剤耐性アシネトバクターのアウトブレイク報道を受けた院内でのトピックス研修という形で講義しました。

実は先日の会議でこの日に行うこと了解しておきながらプレゼンが完成しておらず直前までばたばたと準備に追われました。
多剤耐性アシネトバクター、ニューデリー型メタロβラクタマーゼ産生腸内細菌、と立て続けに話題になっていますが、こういう報道を受けたとき、それをいいチャンスにして院内感染予防策や診療適正化を進めるきっかけや駆動力にすることが大事だろうと思います。当院では検出されてないから気にしなくても…ということではなく、今のこのMRSA・緑膿菌の状況であるならもしこの耐性菌が院内に入っていたらどんなことになるのかというイマジネーションをかき立て、感染予防策はどのような耐性菌であっても同じく有効に働くものなのだ、だから今でもいつでも必要なのだということを感じてもらえるように構成しました。今回はスライド枚数をセーブし余裕をもって臨めたのでなんとかうまく話せたのでは、と自負しています。

帰りの京阪は混み合う時間になってしまいました。ほんでまた最近の私鉄は、途中の○○でナントカ急行に乗り換えろ、みたいなのが多くなっててうっとうしい。途中で乗り換えってアナウンスを意識しておかないといけないだけでもメンドくさいですから。公共交通機関での通学・通勤をひたすら避けて生きてきたのでこういうのにいつまでも弱いままです。