2011/10/29

2011.11.5は抗菌薬適正使用UPDATE (京都)です。

私の出番はないのですが、指導した研修医がトピックスでしゃべりますので行ってきます。

ローテイトしてきた研修医に、研修期間中にひとつテーマを決めて検討してもらう、ということを以前からずっとやっています。貴重な研修期間ですから何か形の残るものを、ということが目的のひとつ。勉強したい、知識を得たい、という気持ちでローテイトを選択してくれるのはとてもありがたいですが、この「勉強」というのは知識の取得ではなく、問題(テーマ)を明らかにして現実のなかでその解答を探る、というトレーニングだと思っています。なので、いつもテーマの設定に一番時間をかけています。研修医の感じた診療における漠然とした疑問が出発点ですが、それをいかに具体的な臨床的設問の形にするか、研修医に問い続けながら研いでいっています。お互いになかなかの負担なのですが、テーマが明確であればあるほどできあがったものの中に真実が見えてくる。どんなテーマでどんな結果であってもその感覚が新鮮ですし、その一連を研修医にも感じてもらいたいと思っています。


2011.9.17-21 51st ICAAC シカゴに行ってきました.

前の9.16はICD Expert Forumで仙台へ。
そしてその晩に成田まで行って、翌日、昨年行き損ねたICAACへ出発しました。3回目のシカゴです。
米国学会というものへの新鮮味はだいぶ薄れてきて、いい意味で少し冷めた目で学会を眺めるようになってきています。自分が演題を出していないからというところも多分にあって、そこはかなり反省ですが。新薬、耐性菌に対する話題もパターン化してきているような気がします。どのような話題も今後の課題としては診断と治療薬選択をどこまで最適化できるか、抗菌薬のスペクトラムと投与期間はどこまで絞れるか、というポイントに集約されるということがますます明らかになってきているように感じました。

現地でのとある企画でDr. Kettという最近Lancet Infectious Diseasesに意味深な研究結果を報告された、ICU医の先生と座談会をする機会に恵まれました。このような研究はその結果自体も面白いですが、なによりそれを確かめようという着想がすばらしいと感服します。このKett先生、この結果の意味するところを尋ねたところ「結局はベストプラクティスということだ」とさらりと言っていたのが印象的でした。たしかに。画一的な"ベスト"なんてあるわけないですから。

シカゴは行っている間天気が悪く、学会会場以外ほとんどどこにも出かけませんでしたが、最後の晩だけすこしマシになったので、John Hancock Observatoryへ行きました。これも3回目。
いいものは何度みるのもいいものです。

2年ぶりの海外でしたが、今回は機内で少しでも快適に過ごせるようにとあらかじめ買っておいた腰とお尻用の低反発クッション、足載せ用のエアクッションを持ち込みました。この手のものはもっと高いのをもっとあれこれ買ってもよかったかなと思いました。なにせ、座席クラスが変わると数十万違うわけですしね。このグッズ達と、読みたくて読めないままでいた本のおかげで往復とも割と短く感じたと思います。

ところが…帰国したら関東は台風もろに直撃。結局足止めくらって一泊過ごす羽目になり、それまで休んでた分翌日は絶対休めないし、でも新幹線は超満員だし…さんざんでした。もんじゃ焼き初体験できましたけど。


2011/10/23

2011.10.20 とある大阪の病院の院内講習会で話してきました

順番は飛びますが、最近のものも記憶が新たなうちに。

夏のセミナーを受講していただいた、市立枚方市民病院の先生から院内講習会での講師依頼を受け、そのセミナーでの「どこから何する?感染症~診断のマストと基本的な考え方~」を話してきました。

診断・治療の不足という穴は身近なところにたくさん開いていて、それは埋めることができるということ、診断・治療の不足は予防の不足につながり、予防の不足が診断・治療の不足を生じやすくしてしまう、といういつものテーマです。依頼を受けたとき、とくに医師に聞かせたいとのことでしたので、症例呈示を追加し、診療の現場に近い話になるよう心がけました。

聞いていただいた事務系の方から「病気や菌、薬の名前はもちろんわかりませんが、先生の言いたいことは事務の私にもよくわかりました。」とのお言葉をもらいました。こんなこと言われると嬉しくなるものです。

終了後の食事会には研修医がたくさん参加してくれました。私の、診断・判定の軸を多く持とうというメッセージに対し、「総合的な判断って結局"主観"ってことじゃないですか?」とおずおずと尋ねてきた研修医がいました。医師として咀嚼していなかければならない医療というもののもつ不確実性と、それ対していつまでも抱いていかなければならない不安というものが凝縮された、いい質問だなと思いました。彼が現場で慌ただしくもまれながら、身につけねばならない知識の多さに圧倒されながらも、(意識しているかはわかりませんが)医療というものに正面からぶつかっているということの現れなのでしょう。

食事量が3/10という客観的指標は、"3割くらい食べた"と患者本人あるいは下膳する看護師が記録用紙に記入した、という事実しか示しません。でもそのような曖昧な指標ならない方がいいかというとそんなことはないわけです。客観性とは医療が永遠に追求し続けるべきものですが、永遠に到達もできないもの、少なくとも到達できないのだろうと思い続けるべきものではないかと思います。

こういうの何か隠喩がなかったかなと考えているのですが思い出せません。シュレーディンガーの猫…マックスウェルの悪魔…単に不確定性原理かな?何か(全然?)違う気もしますが確かめても味気ないのでこのままに。頭の片隅においていればいつかどこかでこれだ!と視界がぱあっと明るくなるような時がくることでしょうし。

2011/10/22

2011.9.10 IUMS Sapporo 2011のシンポジウムで発表してきました.

2011.9.10は札幌へIUMS 2011で、日本医真菌学会と感染症学会とのジョイントシンポジウム "Epidemiology"にて、"Changing Epidemiology of Nosocomial Yeast Fungemia" というタイトルで発表してきました。Epidemiologyというか、ecologyというかは見方次第でしょうけど。

Non-albicans Candidaが増加しているという事象はとっくに既成事実となり、今やnon-albicansの中でこれまでと違う菌種が増加し、non-albicansというだけでなくnon-Candida yeastさえもが増加する、という変化・流れを冷静に認識し、捉え直してこれからの医療に臨んでいこう、というのがメッセージでした。オーストラリアのDr. MeyerのCryptococcus gattiiのglobalなレベルでのmolecular typingの話や、アスペルギルス症の大家であるDr. Stevensの発症要因についての切り口の新しい話、いずれも敬服に値する高いレベルの講演でした。スライドの見やすさ・キレイさでは自分の方が勝っていたと思いますが、内容的には彼らと比べると明らかに見劣りしており、大いに反省し、少しヘコんでしまいました。

英語は苦手ではないのですが得意でもありません。伝えたいことははっきり持っているのでかろうじて口をついて出てくることは出てくる、といった具合です。日本開催なので苦笑いで許容してもらったような感じでもしかして米国だったら浮きまくってたのかもしれません。
それでも英語を必死で勉強しようって気になかなかならんのですよね。一度手痛い目に遭わないとイカンのでしょうか。今回がまさにそれだったのにそう思ってないだけかもしれませんけどね。

実はこの前日9.9は福岡でのICD Expert forumにてACTIONs BUNDLEの話をしてきたところでした。講演後、北九州から深夜便で羽田に飛び、10日の早朝に札幌に飛ぶというむちゃくちゃなスケジュールですっかりバテてしまいました。予定の確認が甘かったのが原因なのですが、もうこんなのはこりごりですな。


2011/10/21

2011.9.3 医工連携人材育成セミナーで講義をしました.


前回からもうずいぶん日が空いてしまいましたが、ぼちぼちと更新しようかというところです。

すでに何年目でしょうか。毎年1回、医工連携人材育成セミナー(これ自体は3回目ですが)で「大学病院における臨床検査の現状と将来展望」というタイトルで医療や機器関係の社会人を対象に講義をしています。検査部に属していながら、というか属しているからむしろ、というべきか、なかなか難儀なテーマです。検査というものは診断と治療を進めるための道具ですので疾患概念や治療法が変われば検査もそれに合わせて変わっていくというたぐいのものであり、検査だけが進歩するということは通常ありません。理屈では、先端技術を駆使すれば新しい検査法が生まれるわけですが、それを活かす医療の場がなければその方法は宙に浮いているだけのものとなるでしょう。

ただ堅く言えることは、情報管理という側面での進歩幅は大きいだろうということです。かつて紙の報告書を紙カルテに貼り付けていた検査結果は完全にデジタル化しています。デジタル化した情報はユビキタス化するという必然の中で、どのように検査結果を管理する(あるいはしない)状態に向かうのか、向かうべきなのか、ということについては考えさせられるところが大きいです。実際講義終了後の質問もこのポイントを突かれました。ただ、これは検査に限ったことではなく診療情報のすべてに当てはまることなので、個人的な将来予想を語ることはできてもそれ以上には話しにくいというのが正直なところです。だれかこういうことを真剣に考えている人達はいるのか?という素朴な疑問がわいてきます。

とまあ、このようなことを考える機会、というが私にとってのこの仕事なんですね。