2011/05/30

2011.5月の終わり。

5.21は関東医真菌懇話会(東京)にて、播種性トリコスポロン症の臨床疫学の話。
トリコ研のこれまでの成果について紹介しました。私のカンジダ症での経験から発案し、実現に至った研究会です。内容もさることながら、こんな形の研究もある、とくに数の少ないものでは不可欠だということを伝えることができていたら、と思います。

本日5.29には京都薬科大学へ「臨床で問題となっている耐性菌感染症の診療と対策」を話してきました。
意外にもこんな抗菌薬が効くとか、とりあえずこうすべきとか、最近こんな論文があるとか、そういう話はまったくせず、ひたすら現場で感じている問題意識について、それを共有できるようにと考えながら多角的に説明しました。
感染症(に限らず)治療の基本はとにかく診断である、菌と抗菌薬の組み合わせだけ考えていても治療は決して立ち行かないし、そのような考え方が今の耐性菌の状況をもたらしてしまった、という、またまた少し重めの話でした。
終わった後、世話役の先生が「たしかにこれまで感染症の治療といえば菌と薬の組み合わせしか考えていませんでした」とおっしゃっていました。この認識を改めて行かないと今後新薬がなかなか現れない中で耐性菌に立ち向かうのは難しく、その意味で発想の転換が必要なのだろうと思います。とりあえず、薬で、、、で何とかなった(あるいはそのように見えた)時代は過ぎたのだと思います。

有名な先生を聞いてても菌と抗菌薬と論文を見ているだけなのではないかと思うことがありますな。うんちくを語ることができてもそれで期待感をもたせることはできても残念ながら現場の問題の解決にはつながらない。抗菌薬は使えば使うほど効果の得られる患者が増えていく薬ではありませんから。
同じことばかり角度を変えて話している私ですが、目にとまりやすい耳当たりのいいことよりも、伝達したいことを繰り返ししっかりと伝達し続けたいと思っています。とにかくそのような機会がもらえただけでなく聴いてくれた方からの声が聞こえてくると、うれしくなってまた頑張る気も出てくるものです。

2011/05/04

2011.5月の予定。

学会シーズン一段落で5月はあまり予定がないはず、、、と思いながらスケジュール表を確認してみました。

5.14は第12回レジ感(メルパルク京都)。今回はコメンテータのみです。今回は以下の2例で、私もまだ診断名は知りません。
症例23:発熱と全身の痛みを訴えインフルエンザ治療を受けた80歳代女性
症例24 GISTでグリベック+プレドニン内服治療中に意識障害で救急搬送された60代女性
タイトルだけでも鑑別診断がいくつも挙がります。挙げられなかった、どんな鑑別診断が残っているのか、診療の経過でどのように期待を裏切ってくれるのか、毎回ながらたのしみです。
前回、私ともう一人のナビゲータが自ら症例プレゼンをやることになったため本来症例プレゼンターに進呈するはずの粗品の行き先がなくなってしまい、フロアの参加者から世話人が任意に選んだベストディスカッサントに進呈しました。しばらくこの方式でやってみて少しでも盛り上がればと思っています。

翌5.15は大学病院主催の研修医向け入局説明会です。数年前まで参加していましたが、まったくレスポンスがないので中断していました。アクセスは公開しているのでやる気のある人は連絡してくるだろうという甘い考えからです。今年も期待薄ですが、何もやらずに来ないよりやって来ない方があきらめもつくか、ということでまた数年頑張ってみようかと思います。

5.21第32回関東医真菌懇話会のシンポジウム「新興・再興真菌症の現状と対策」にて、播種性トリコスポロン症の臨床疫学を話します。研究会をつくって(私は外野ですが)検討を進めているところで、ようやく臨床像が見えてきたところです。だから対策もなにもわからないことだらけなのですが、そんな中でどこまで考察できるか、というテーマを自分に課してプレゼン準備をしようと思います。

5.23は人間健康学科にて「感染症の診断と治療」5.25は京都医療科学大学(園部)で「職業感染対策の理論と実践」講義をします。カリキュラムの講義は教科書的な内容をあますところなくわかりやすく説明する、というつもりで臨むと絶対無理ですね。どこを理解させればあとはテキストを読むだけで頭に入っていくか、あるいはどこから先は丸暗記するしかないのかがわかるか、ということを目標にして話すつもりです。テーマ全体を木とすると、講義によってこの木の幹と太い枝はこんなんです、と呈示できればと思っています。

5.29には京都薬科大学の卒後教育講座にて「臨床で問題となっている耐性菌感染症の診療と対策」を。2月の集中医療学会で話した内容を修正して構成するつもりです。
培養検査で陰性という結果を得たくて治療をしているわけではないですね。でも培養陰性という結果はその患者の真実がどうであれ担当医にとっては安心できる結果であるのでしょう。それはわかるのですが、誰のためなんのための医療かと考えれば話は変わってきます。医療に関連した感染症を起こしやすい(すなわち環境適合性が高く、抗菌薬抵抗性な菌、緑膿菌が典型)菌であるほど、採取しやすい検体において培養陰性とはなりがたく、それを陰性化したくてたまらずにいると、抗菌薬をとっかえひっかえして挙げ句の果てには局所投与したりして、そのようなことを続けているうちにまた耐性株に交替し、さらにややこしい菌に交替し、それがまた耐性菌感染を起こしやすくしている。このことを頭で理解できない人はいないはずなのに、起こさなければ培養陰性化するしないに関わらずやっててよかったと思い込んでやれやれ、それが真の感染症を起こしてしまうと(ここまで努力してきたんだから)もうやむなし手立てなし、で終わってしまうのが人間の性です。この悪循環をどう断ち切るか、発想を切り替える必要があるという話をしたいのですが、どう組み立てたらいいだろうかと正直まだ頭を悩ませています。

連休で1週少ないこと考えると意外になかなかハードな感じ。また寝不足の日々が増えそうです。とほほ。