2010/10/21

2010.10.17 ICD講習会で話をしてきました。

第54回日本医真菌学会で「真菌症を中心とした院内感染制御の実際」というテーマでICD講習会が開催され、1番目の演者として話す機会をいただきました。

タイトルは「抗真菌薬の適正使用〜病院感染症への診療支援から考える」です。

適正使用というのは好きな言葉ではないと随分前にも書きましたが、それでも今でも結構しつこくタイトルに入れています。リクエストされるからという側面もありますが、最近はそれだけじゃないです。しゃべりだすとこで適正ってなんなんだろう…って違和感を持ったり、逆にイントロであえて触れたりすることで本当に主張したいことを自分の中で再確認してペースがつかめてくるような気がするからです。

今回もまた診断の重要性が最も主張したいポイントでした。
真菌感染症の診療は細菌感染症という土台の上に初めて成り立つものだと思います。つまり、細菌感染症の診療がうまくできていないと真菌感染症は容易に見逃したり治療不足に陥ったりします。真菌症は入院患者の中でも重症化しやすいリスク因子をもつ患者で発症するので診療の善し悪しが予後に与える影響が宿主因子に紛れてわかりにくいものです。治療も一筋縄ではいかないことがしばしばです。だからこそ私達ができることは下した診断と治療を"守る"ことだと思います。これらをはっきりさせておけばうまくいっているのかおかしいのかは気づきやすくなるのに、あいまいな診断であいまいな治療をすると、うまくいってもいかかなくても何が理由なのかわからないからです。治療が不足してしまう最大要因が診断のあいまいさです。確定診断がなかなかつかないから、というのは現実ではありますが言い訳にはなりません。臨床診断だろうが暫定診断だろうが自分の下した診断をその根拠とともに明確にしておくことが十分な治療を行うという"覚悟"につながります。一例一例の治療の成否にはたしかに宿主因子の影響の大きい真菌感染症ですが、だからこそそこがしっかりしていなければ自分の行っている診療の妥当性、不足のある可能性に気づくことはできないでしょう。

気脈の通じ合う先生と話をしていると必ずといっていいほど「結局は"診断"につきる」というところに話しが向かいます。薬の使い方がわからない、という相談を受けることがよくありますが、使い方は診断で決まるものだと説明すると不満そうな反応がされることが多くて、残念な気持ちになります。いかに診断をおろそかに薬を選んでいるかの反映なのでしょうね。

研修医には「ごくごく単純な感染症をしっかりと診断しベタに治療する」という経験を積むことが大事だとよく言って指導しています。この基本問題が解けないと応用問題である複雑な細菌感染症も真菌感染症も解けないだろうと思っています。

来月は感染症中日本(京都)と化療西日本(大分)で2つICD講習会やります。ひとつは今回とほぼ同じ内容の真菌症の話ともうひとつは人工呼吸器関連肺炎サーベイランスの話です。