2010/03/12

2010.3.11 院内感染対策講習会(大阪、住友病院)にて話してきました。

タイトルは「院内感染予防策と抗菌薬適正使用の結びつき〜不都合な真実を見る目〜」

内容は、いつも通りです。って書いてしまうとこれから先もずっとそうなってしまいますが。それでも話をした後に残る思いは毎回少しずつ違います。

今回終了後に思ったこと。
講演中にも口にしましたが、楽天の野村前監督の言葉に「(勝ちに不思議の勝ちあり、)負けに不思議の負けなし」というのがあるそうです。これは医療安全の院内講演会に来られた外部講師の方が引用されていた言葉で、とても印象深く残っていますし、感染症やっていてもいつも思うことと同じだなと感じ入りました。どうしてかわからないまま勝つことはある、しかし、いつもどうして勝っているかわからないと余計にどうして負けるかもわからないままだろうと思います。

感染症診療においていうとこれはまさに「診断」のことでしょう。診断Aへの治療が診断Bへの治療を内包することはよくありますから、診断が間違っていたのに治ったということもまたよくあることです。例えば腎機能正常の成人にセフェム1g1日2回で治っている症例などはそういうこと。そのような場合、どうして勝っているのかわからずに勝っているにすぎないにもかかわらず、それで正しいと思ってしまうのが人情なのでしょう。なぜうまくいったのかわかっていないからうまくいかなかった場合にどうしてかがわからない。だからセフェム1g1日2回の何が悪い?っていうような感覚になってしまう。セフェム1g1日2回で治る患者はもっと違う治療(内服抗菌薬、もしかしたら抗菌薬なし[こちらがむしろありがち])でも治るんでしょうね。そう思うから私はこういう用量・用法に対する違和感を持ち続けたいですし、多くの人に持っていてほしいなと思います。

あれは野村前監督の言葉じゃなくって江戸時代の剣術家松浦静山の言葉だよ、っていう突っ込みに対しては「そいつ自身が他の誰かの言葉をパクってないってなぜ言える」と返したいです。突っ込めるのは以前から松浦静山をよく知ってた人だけであって、こういうのは有名にしたもん勝ちですよね。