2010/03/19

2010.3.18 神戸感染症フォーラムで話してきました。

タイトルは「深在性カンジダ症の制御にむけて~最善を尽くすとは何か~」
カンジダ症は大学院生時代にとり組んだ、私にとって原点ともいえる感慨深いテーマです。このテーマで話しするのはすこし久しぶりだったので軽く緊張しました。

難しいのは、カンジダ症をはじめとする真菌感染症は細菌感染症に対する診療をうまく行えていないとうまく対処できないということです。これはいつも強調していることですが、真菌感染症の中で深在性カンジダ症は非特異的な危険因子をもつ患者群に発症するのでその意識が不足すると(そういうことが多いので)診断・治療が遅れがちです。そういう意味で真菌感染症の診療は細菌感染症診療の応用編みたいなところがあると思います。

最善を尽くすとは、というサブタイトルの意味したかったところはダイレクトにはあまり説明できなかったかもしれません。
経過が思わしくないとき、予後の悪い病態に対峙するとき医師は往々にして自分の診断能を棚に上げて薬剤のせい、耐性菌のせい、患者の"免疫能"のせいにしがちですが、実際はそういうときこそ診断を追求することが最優先の命題であるということがその意味するところのひとつです。

もう一つは、そのような意識の不足を補うためには診療医に対してストレートに教育・啓蒙することにとどまらず、それにプラスして、それをサポートするような体制をつくるという方策が有効だろうということ。これは自分の立場あるいは自分達の病院での成果からとくに強くそう思うのかもしれません。そして感染症診療一般に言えることですが、様々な不足のある現実を理解すれば、それをいろいろな立場の医療者が限られた自分の範疇の中であっても少しずつ補っていくことはできるだろう、そしてその総和として「病院」として感染症診療のレベルを上げていく、それを目指すべきだろうと。スポーツでもなんでもそうでしょうけど、ここぞというときに力を発揮できるかは、普段普通にできるはずの普通のことの確実性を高く保てているかに依存すると思うからです。
そういう意味で、カンジダの話をしながらも実はカンジダとは必ずしも関係のないこのようなメッセージを背景に流したくて、それがサブタイトルの問いかけるところ、というわけでした。

なつかしのポートアイラインドで、始まるまでは気持ちも高ぶっていたのですが、よく言うとそれゆえに、内実は単にこのところの寝不足がたたって、話が終わった後はねむねむでうとうとでした。いけませんね。